🫶
1905文字
Public
 

恋の戦法

AR3CP企画内のワンドロ
5月お題:嘘つき

びよどん後軸 ※ロウ不在
ロウの魅力は自分だけが知ってればいいの!みたいな一種の独占力が垣間見えるリンウェル
だって仮にモテる魔法があったとしてもロウにだけは教えないみたいですからね、彼女……

「ねぇねぇ、最近市場に売りに来てる行商人にかっこいい人が居るの知ってる?」
「知ってる!あの赤髪のお兄さんだよね!」
「えー!私はまだ見た事ない!」

昼下がりのアウテリーナ宮殿内。
宮殿内の所々に設置されたベンチで年頃の女の子達が四人、キャッキャッとおしゃべりに花を咲かせている。その中にはリンウェルの姿も窺える。
旅を終えて、メナンシアへと拠点を移してから仲良くなった同年代のお友達。図書の間で初めて顔を合わせて以降、共通の趣味を通じて交流が深くなっていた図書仲間の一員だ。
普段は共通の趣味である本や歴史物の話題が専らだが、本日の話題は所謂”恋バナ”というもの。リンウェル達だって年頃の女の子。そういった話題にだって興味があるし、自然と盛り上がりを見せていくのは当然の事で。
どんどん盛り上がっていく恋バナに相槌を打ちながらも程よい程度で自らも話題に入っていく。尽きる事無く弾んでいく恋バナは最近話題になっているイケメン行商人の話から段々と逸れていくと今度は各々が最近気になっている人について話始めた。

「あの子はどう?リンウェルがよく一緒に居る狼の装飾付けてる男の子」
「あ~!あの子ね!元気で人懐っこそうな笑顔が可愛いよね!」

突然飛び出してきた見知った人物像に驚きで一瞬リンウェルの思考はショートしかけてしまった。自分がよく一緒に居て狼の装飾を付けている人物なんて一人しか思い当たらない。けど、どうして彼が今この話題の中に……

「私、一度だけあの子に護衛を依頼した事あったんだけど、凄く良い人だな~って感じた。明るくて元気だし、おかげで道中も楽しく過ごせた。それに護衛としての腕も申し分ない」

そう思わない?と問いかけられてリンウェルはコクリと頷く。
ロウは紅の鴉の一員として色んな依頼を請け負っていて、本人曰く主にズーグル討伐が中心となっているようだが最近は護衛依頼もちょくちょく増えてきたとも言っていた。

(そうか……私みたいにロウに護衛を頼む人もいるんだもんね)

リンウェルの場合は正式に護衛を依頼しているというより、ロウ本人に直接お願いをして付き添ってもらっていると言った方が正しいのかもしれない。言うなればロウの好意で成り立っているボランティアのようなもの。勝手に自分だけがと思っていたけど、正式な依頼となればロウの好意うんぬん関係なく、ロウが自分の時と同じような形で護衛を請け負う事はなんの問題もないはず。……なのに、胸の奥底がキュッと苦しくなるのは何故なんだろう?

「ねぇねぇ、どんな感じなの?」

興味深々な視線が一斉にリンウェルの方へと集まる。どうやら現時点で友人達のロウへの印象は好感触といったところだろうか。きっと次に出るリンウェルの答え次第では更に友人達がロウへと向ける好感があがってしまうだろう。
ロウは良い人だ。優しくて面白くて。たまにデリカシーがなかったり鈍感なところもあるけど、不器用ながらに私の事を気に掛けてくれて、どんな時でも私を一番に優先しようとしてくれる。

「ロウは……
「うんうん」
「ロ、ロウは駄目と思う!」
「へ?」
「あいつ全然デリカシーないし、すぐ調子も乗るし!!前衛だからって突っ走るくせに防御力がないからすぐ怪我もするお馬鹿だし。年上の女の人にはだらしなく鼻の下伸ばしまくったり……全然良い所ないんだから!」

一気に捲し上げたせいで息が上がり、頬がほんのりと上気する。
リンウェルの勢いに呆気に取られていた友人達は数秒の間、ぽかん……とした表情を浮かべた後、ドッと笑い声を上げる。

「ちょっと、リンウェル~!!流石にそれは言い過ぎじゃない!?」
「ボロクソ言ってたよ!!」
「ロウくん……だっけ?流石に可哀想になってきた」

あはは!と笑いながら友人達は可笑しそうにお腹を抱えている。友人達のロウへの興味を逸らしたいが一心で流石に言い過ぎた気もするがどうやらそれは功を成したらしい。
親しい間柄であるリンウェルが言うんだから、と謎の説得力があったのかロウについてこれ以上追及される事もなく、話題は次の人物へと移り変わり、再び話に花を咲かせ始めていく。
リンウェルは気付かれないようにふぅ……と一息零し、高ぶった心を落ち着かせる。
気付けば次いで出ていた本心とは違う言葉の数々。良い所が全然ないだなんて全くの嘘だ。ロウの良い所なんて数えきれない程知っている。でもきっとそれを知られてしまったらーー。

(……ロウは駄目、だもん)

彼の魅力に気付くのは私だけでいい。だって恋のライバルは一人でも少ない方が良いでしょ?