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たかせ
2026-05-11 22:26:49
2701文字
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ロウリン小話
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憧れ
アライズ3CP WEBオンリー「愛してキミにRolling LOVE」 ワンドロライ5月のお題を拝借しました
2時間かかった上にリンウェルはほとんど出てきません すみません
ED後どこかの時間軸 会話はロウとテュオハリム 内容はロウリンです
「きれい」
ごく小さな声で零れたその言葉を聞き取れたのは、たぶんロウだけだったのだろう。
視線を向ければすでに少女の興味は移り変わったのか、「さ、行くよ」といつも通りの声で告げて彼女は歩き出してしまった。
ロウは彼女が見ていたものに視線を引かれつつ、「おう」とこちらもいつも通りの返事を返して後を追う。
思わず零れたのだろうその小さな呟きは、その後もロウの耳に残っていた。
*****
久しぶりの視察からの帰路、テュオハリムは馴染みの後ろ姿を見つけてふと足を止めた。肩に狼を乗せた少年は遠目からでもよく目立つ。
カラグリアに拠点を置きつつも各地に出向いているらしい彼の姿は、会う予定がなくともこうしてたまに見かけることがあった。一も二もなくそちらへと歩みを進めたテュオハリムは、熱心に露店を覗き込んでいる彼の後ろに歩み寄った。
「久しいな、ロウ」
「うわ!?」
背後から声を掛けられて、びくりと少年
——
ロウが肩を揺らす。
慌てて振り返ったロウは驚いたようにテュオハリムを見上げて、それからほっとしたように息をついた。
「すまない、驚かすつもりはなかったのだが」
「いや、大丈夫だって。久しぶりだな大将」
頭を垂れたテュオハリムに軽く笑って答えるロウ。にかりと笑う顔は旅の頃から変わらず人懐こい。
「けど珍しいな、こんなとこにいるなんて。散歩か?」
「何、視察の帰りだ。街に出向くのはメナンシアに居た頃からの習慣なのでね」
「そういやそうだったな。相変わらず忙しいこって。働きすぎなんじゃねえの?」
「忠告痛み入る。
——
そういう君はここで何を?」
ロウの隣に並びつつ、テュオハリムも素直に疑問を口にする。というのも、ロウが覗き込んでいた露店が着飾ることを目的とした装飾品を扱う店だったからだ。
「ああ、この店のオーナーの護衛でここまで来たんだけどさ。ちょっとまけてくれるって言うから」
「ほう。君がこういったものに興味があったとは」
「いや、無いんだけどよ」
そう答えつつ、ロウはうぅむと渋面になる。その視線がちらりと露店の商品に向いた。
「
――
ふむ」
(興味がないのにすぐ背後にある気配に気づかないほど熱心に眺めていた、ということか)
思考を巡らせながらテュオハリムは顎に手を当ててロウを見下ろした。するとその視線にむず痒くなったのかロウが口を開く。
「あー、だから、その、あいつに土産の一つでも買ってってやろうかなって思ってさ」
そうして彼が歯切れ悪そうに答えた内容は、おおよそテュオハリムの推測通りだった。
「リンウェルにかね」
「
……
おう。何か前にさ、あいつこういうキラキラしたの、ちょっと気にしてたんだよ」
「なるほどな」
きっと何気ないことだったのだろう。それを覚えているということがどういうことか
――
これ以上は野暮だろうとテュオハリムは無言で頷く。
「なあ、大将ならわかるだろ?こういうのってどういうのがいいんだ?」
「その訊き方では判断基準に迷うが
……
君はどれが良いと思ったのかね?」
随分ぼんやりとしたロウの質問に、テュオハリムはしばし付き合うことを決めて尋ね返した。ロウはええ?と頭を掻きつつ、しばらく商品と睨み合う。
「あー
……
あれとか?何かビカビカしてっしさ。すごそうじゃねえ?」
「確かに華やかだな」
そう言ってロウが指さしたのは金の台座にいくつもの宝石がちりばめられたブローチ。華やかな光を放つその一品は露店の屋根の下でもひときわ輝いて見えた。
「ではあれをリンウェルが身につけた姿を想像してみるといい」
「え?!想像?」
ぎょっとしたように振り向いたロウは口をへの字にして唸った。その表情に反して微かに染まった頬には気づかないふりをして、テュオハリムは大きく頷く。
「そうだ。できそうかね?」
「
……
わかったよ」
ロウははあ、と息をひとつついて、より一層眉根を寄せたまま目を閉じて顔を上げた。
閉ざされた視界の向こうにゆるやかな風を感じること数秒。
目を開けたロウは率直な感想を口にした。
「
……
ビカビカしすぎかも」
「かもしれんな」
「
――
そうだよな。あいつに使ってもらうんだもんな」
ふむ、と何やら掴んだのか、ロウはもう一度商品に視線を落とした。その横顔から覗く先ほどとは違った眼差しにテュオハリムは目を細めてその姿を見守ることにした。
「
――
じゃあ、これかな」
たっぷり10分は考えた末にロウは一つの品を手に取った。
普段考えることが苦手と自ら主張している彼からすればかなりの時間をかけたといえるだろう。
「お、兄ちゃん決まったか?」
ロウの声に奥で作業をしていた店主が顔をのぞかせる。ロウは片手を上げて合図をして、にかりと笑った。
「おう、これにする」
「まいど!」
決めた後の行動の速いこと。ロウは迷うことなく品物を店主に手渡してさっさと支払いを済ませてしまった。きれいな包み紙も勧められていたが、こっ恥ずかしいと突っぱねたらしい。
そこはこれからの課題なのだろう。
露店を出ると、屋根にさえぎられていた日差しが一気に照りつけてきた。
その眩しさに二人して思わず目を細めながら歩き出す。
「ありがとな大将。助かったぜ」
「私は大して役立ってはいないと思うが」
「いやいや、さすが経験豊富な大人っつーかさ」
「
……
その言い方はいささか誤解を生みそうだな」
「何にせよ大将のおかげだ」
微妙な顔をしたテュオハリムの背中をロウがばしりと叩く。容赦のない力加減は相変わらずだ。
「君が選んだものだ。自信をもって渡すといい」
「あー
……
それが一番の難関だよなあ」
何つって渡すかな。
大事にしまいこんだポーチに視線を落として、悩まし気にため息をつくロウ。肩を落としたその姿を見下ろしながらテュオハリムは元より考えていたことを提案した。
「では腹を満たしながらの作戦会議といこうかね?」
「へ?」
「何、君に付き合っていたら小腹が空いてね。今度は私に付き合ってくれるとありがたい」
「お、いいな!俺も久しぶりに頭使って腹減ったぜ!」
ぱっと表情を明るくして頷くロウにテュオハリムは馴染みの店への道を指し示す。
未だ歩幅の差はあれど、気の置けない友人として二人は肩を並べてペレギオンの街を歩き始めた。
少女の口から思わず零れた憧れの欠片が形となってその手に届くまで、あと少し。
*****
「そう言えば君が最初に選んだブローチだが
……
あの宝石の数だ、50万はくだらなかっただろうな」
「え!?ご、50万!?」
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