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最果て(棚樫オーハ)
2026-05-11 21:54:48
3404文字
Public
類司派生
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オレの好きな人を知って欲しい
ラブラブ陰ギャル。
陰ギャルやっぱ最高ですね。本当大好き。
概要欄なのに陰ギャルへのラブしか書けない。
陰ギャルがラブラブだと世界が平和になります。
珍しく凄く可愛く書けて気に入ってるので支部にも投稿しました。
オレはたぶん、ずっと前から神代類が好きだった。最初は顔だ、とにかくあの整ったミステリアスな顔が好みだった。
始まりはそれだけだった。
あれは神山男子高校入学式の日だった。
式が終わってぞろぞろと移動し、まだ見慣れない教室へと入る。
む
……
まずい。机、分かんなくなった。“おな中”出身の友人がいないオレは、教室の後方でキョロキョロ。それとなく覚えのある席を確認しようかと机の通路に入るけれど、かえって分からなくなってしまった。
朝はどうしたんだっけ
……
そうだ、黒板に席順が貼ってあったんだ。それが今はなくなってしまった。カバンは後ろのロッカーだし、横に何か掛けていたわけでもないし。オレの席を導き出すためのヒントが全く無い状態だ。
こうなると全員座るまで待つしかない。ここでキョロキョロし続けるのも格好悪いしな
……
そう思って机の通路を抜けようと歩いていると、突然立ち上がったクラスメイトにぶつかってしまった。
「わっ
……
⁉」
ぐらりと体勢が崩れた。
「あ、ごめん!」
クラスメイトのその声を聞きながら、オレは近くに座っていた誰かの上に着席。気が付くと誰かの腿の上、大きな腕に抱えられていた。
すまん、そう言おうと顔を上げる。そこで目に入った、長めの前髪の奥にある切れ長の瞳
……
。
ぽっ──急激に頬が熱を持った。
なんだこれ
……
。心臓がドキンドキンと煩くて、ふわふわして気持ち良くて。早くどかなきゃって思うのに、目に入る綺麗な顔と、腰を支える腕の熱さで動けない。
名前、そうだ、こいつ誰だっけ。たぶん“神代類”だ。格好良い名前だったから覚えてたんだ。でもその時覚えたのは名前と髪色だけ、顔をまともに見たのはたった今だ。
「大丈夫?」
神代の一言で、ようやく状況に気付いた。
「あ、ごめん、ごめんな! 突然上乗っちゃって」
「ううん。怪我が無くて良かったよ」
何こいつ
……
声、エロい
……
っつーか
……
。耳元で囁かれているような気分になって、腰の辺りがざわつき出した。
そうだ、どかなきゃ。
……
どかなきゃって思うのに動き出せない。ん?
……
前髪、分けるか上げればもっと顔よく見えんのにな
……
。
頭ん中がめちゃくちゃになってきた。
オレは上に乗ったまま、手で神代の前髪をかき上げた。わ、やっぱすげーイケメン。
神代は切れ長の目を見開いて、頬をピンクに染めた。ん? 可愛いな
……
こんな顔もすんだ。
「あ、あの
……
」
「神代、ビジュ良すぎ。前髪上げないの?」
「え、僕の名前
……
」
「名前格好良いから覚えてた。
オレ天馬司、よろしくな。類って呼んで良い?」
「え、あ
……
う、うん」
わたわたしていて、どれの返事なんだかはよく分からない。でも類って呼んでいいみたいだ。
類の落ち着かない様子を見て、ほんの少しだけ冷静になれた気がする。お礼を言ってから、ようやく地面に足を付いた。
「類、本当ありがとうな。オレのことも司って呼んでくれ」
「
……
司、くん
……
でいいかな」
「ん。百点満点だ!」
やっばい──嬉しい、かも知れん。類が『司くん』って呼ぶとくすぐったくて、オレが『司』って名前で良かったなんて思ってしまう。
類も類で、顔をピンクに染めたままだ。髪に隠れて分かりにくいけど、唇も緊張したようにぎゅっと閉じてる。嫌だったか
……
? 恥ずかしいのか?
「そ、そういえば天ま──司くん」
「ん?」
去ろうとするオレを類が引き止める。
「席
……
分からなくなってしまったのかな」
「あ──そうだ、そうなんだよ! よく分かったな」
振り返って屈み、類に顔を寄せた。
凄いな
……
もしかして類はエスパーなのかも知れない。先程オレを受け止めたのも、その能力が関係してるのではないか?
オレはむむっと金色の瞳を覗き込む。ぼんやり光っているようで綺麗だ、それしか分からなかった。
「司くんの席はあそこだよ。僕の斜め左、二つ前の
……
」
「ん?
……
あ、そうだったかも知れん!
凄いな、類! お前やっぱエスパーだろ!」
「エスパー
……
? では無いけれど。たまたまだよ」
そう言って、口元だけで微笑む。
なんだか寂しそうな笑みだ。笑っているはずなのに。
その顔が、ずっと、ずーっと、離れなかった。
・・・
「オレさ、あの時本気で類の事エスパーだと思ったんだ」
「フフフ、司くんらしいね」
人の少ない屋上、類と並んで食べる
お弁当
ランチ
。二年生二学期になった今では、この光景もいつも通りだ。
入学式の後からは、オレたちは話もほとんどしなかった。オレはオレで話せるクラスメイトが増えていったし、類は類で、孤独に慣れてしまっていたから。
でもそれだけじゃない。席だっていつも遠かったし、行事で一緒の班になる事も無かった。元々タイプの違うオレたちだ。強い切っ掛けが無ければ繋がりなんてすぐに消えてしまうのに、いたずらな神様がオレたちをわざと引き離しているかのように、関わりが無くなってしまったのだ。
ま、その後色々あって、今では隣に並ぶ仲に──本当はもう少し深い仲に──なってるから、そういう意味では神様もなかなか粋なことをしてくれる。
「でも何であの時、オレの席が分かったんだ?
まあ類は頭もいいし、記憶力もいいだろうけど」
聞いてから紙パックのお茶をじゅーっと吸う。
類は困ったように微笑んでから、パンを一口。もぐもぐ咀嚼した後、参ったとでも言うように小さな息を吐いた。
「
……
見てたから」
「見てた?」
「初めて教室に入った時から、ずっと見てたんだよ」
じゅー
……
お茶が少なくなってきた。
『ずっと、見てた』
その言葉が残り少ないお茶と一緒に身体に流れ込んで、全身を巡った後、ようやく脳みそにしみ込んだ。
「な
……
⁉ それって、つまり
……
オレのこと
……
」
「一目惚れ、と言うのに近いかな。斜め後ろから見てもキラキラしていて、目が離せなかったんだ」
「ひ、とめ、ぼ
……
れ
……
?」
思わず紙パックを握りしめる。無いと思っていたお茶の残りがぴゅっと飛び出て頬を濡らした。
なぜだろう、なぜか、悔しい。
オレが類を好きな気持ちよりも、類がオレを好きな気持ちの方が大きいと言われた気がした。類にそんなつもりは無いのかもしれないけど
……
とにかく、なんだか悔しかった。
「司くん、お茶が
……
」
「お、オレも、一目惚れだからなっ‼」
つい食い気味になってしまった。長い前髪から覗く瞳がきょとんと丸くなる。ふふん、可愛い顔をしているではないか!
「初めて類の顔を見た時から、オレは類が好きなんだ。なにせ類は格好良いのだからなっ‼」
類に類の自慢をしてどうするのか。そう思っても止められない。類が世界一格好良くて、類が世界一優しいって事を、類にも知ってもらいたいのだから。
類はふふっと笑った。あの頃と違って寂しそうな笑顔じゃない。心の底から嬉しそうに──それに、なんだかとても愛おしそうに──笑う顔だった。
「うん
……
ありがとう。司くんも格好良いよ」
「なんだその諭すような言い方は
……
おい、撫でるな」
「ええ? やめてしまっていいのかい?」
「
……
や、やっぱり、撫でても
……
いい
……
」
「フフフ、嬉しいなあ」
類がオレの髪を撫でる。オレはお茶のパックを潰したまま動けない。
やがて撫でていた手が頬に下がってきて、流れるように上を向かされた。
……
唇が触れた。
その直後、視界に入るのは薄く微笑む格好良い顔。前髪の奥はビジュの暴力だ。浴びたらひとたまりもなく身体の奥が弾けてしまう。
「類
……
」
名前を呼ぶと、類はかすかに首を傾げた。
「
……
もいっかい」
「うん」
首を伸ばして瞼を閉じる。もう一度、唇に柔らかい感触が当たった。
なあ、類。オレをずっと見ていてくれてありがとう。あの時転びそうになったオレを、支えてくれてありがとう。話さなかった期間もあったけど、もう一度出会ってくれてありがとう。オレをずっと好きでいてくれて、ありがとう
……
。
数度重ねたキスの後、ようやく唇が離れた。
「類、大好きだ」
呟いて笑い掛けると、類も前髪の奥で笑っていた。
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