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氷酒
2026-05-11 08:37:05
1318文字
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『幕間 夜の先』
まりみや組。スーサイデッドメアリンクの後日談。
桐と枸櫞、スーサイデッドメアリンクの匂わせあります。
「美夜、もういい時間だし部屋戻れよ」
「んー、あとちょっとー」
もう何度目かの、同じやりとりを繰り返す。
いい加減往生際が悪いなぁ、なんて笑みが溢れた。
ああ、俺が知ってるいつもの美夜だ。
『夜の後』
「みーや」
時刻はとっくに12時を過ぎている。読みかけの本が、テレビが、などと理由をつけて居続けている美夜に、俺は今日何度目かとなる名前を呼んだ。
「だからもう少し
……
」
呼んだ時の声色で察したのだろう。美夜は少しだけだるそうに、これまた何度目かの同じ言葉を返す。間延びした声色はまる駄々をこねる子供のようだ。
だから、敢えて俺の方も同じ言い方で、なんでも無いように意識して返した。
「俺、もう眠いんだけど」
「あー
……
だったら、」
「ってことで先に寝るわ」
「え」
もごもごと何か続けようとする美夜をあえて無視して、俺はベッドへと向かった。
安アパートのワンルームだ。生活スペースと寝る場所など分けておらず、止める間もなく俺はベッドに寝転がる。
ちらりと視線を遣れば、美夜は目に見えて困ったような、狼狽えているような顔をして頬をかいていた。
「じゃあ
……
」
「美夜、おいで」
寝転がったまま、もう一度名前を呼び、手招きをする。なに、と無防備に近づいてきた美夜を、俺はそのまま強引に引き寄せた。
「う、わっ! 真倫、なにすんだよ」
「今日はこのまま寝ろ」
「いや布団
……
」
「一緒のベッドでいいだろ。昔みたいにさ」
むかし、と俺の腕の中で美夜は俺の言葉を繰り返してから、そのまま大人しくなった。どうやら観念したらしい。
「そもそもお前、部屋に戻る気なかっただろ」
「んまぁ
……
やっぱりバレてた?」
「見え見えだよ、本やら映画やらやたら持ち込んできてたし」
もぞもぞと寝やすい体勢を整える美夜を好きにさせて、俺は美夜ごと布団を被る。1人分のベットに男2人が寝るのはいささか狭さを感じるが、その分距離が近ければ問題ないだろう。
ぽんぽんと、昔してやったように一定のリズムで美夜の背中を叩く。あやすようなその動作に、彼の身体からゆっくりと力が抜けていくのを感じた。
そのまま目を閉じる。
瞼の裏越しに室内灯の明るさが残るが気にならない。腕の中に感じる温かな気配と温もりに、こちらも漸く、深く息を吐いた。
とくり、とくり。密接した肌越しに美夜の脈拍を感じる。腕にかかる吐息が少しくすぐったい。
生きてる。
そう言葉が浮かぶと同時に、胸の辺りにやっと血が通った気がした。目頭が熱くなって、誤魔化すようにきつく抱きしめる。ふたたび美夜がもごもごとするが、構わなかった。
「
……
なぁ、電気」
「いいよ、このままで」
「さすがに良くないって」
「暗い方が怖い」
何も見えない空間の中。
次に目を開けて、光が差し込んだ先で、目の前のお前が消えてしまうのが怖いから。
ただ、お前がいることを確かめて寝て。
起きた時にもまた、確かめたい。
そうしてやっと、この世界の意味を知れるから
……
なんて。
まどろむ思考の中、そんな想いを抱く自分に苦笑しながら、俺はゆっくりと意識を手放した。
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