ortensia
2026-05-08 00:59:18
1136文字
Public 傭リ
 

現パロ?モデル傭×芸術家リ。


 もうずっと長いこと、たった一人の芸術家のために、モデルをしている。元々は美術芸術とは掠りもしないことをやっていたが、一度少し大きめに足の怪我をやった時に、他にやることがなくて引き受けた。座っているだけだった。
 ただその時の、座っているだけの自分を熱心に見詰め、長い時間を過ごした相手と、まだ一緒にいる。それだけだった。
 怪我が治ると、芸術家からは、色々と無茶な要求をされるようになった。先ず、元の仕事をやめること。それは、芸術家のためにモデルの仕事をしろということだった。それから色々服を着替えさせられたり、全部脱げとも言われた。その頃にはもう、逆立ちしろとか、銃を構えろとか、食事を前に食べずにポーズだけしろとか、木に登れとか、降りろとか、馬に乗れとか、鰐を撫でろとか、虎と戦えとか、真冬の川に入れとか色々やらされ続け、裸になれと言われてぎょっとしたのは最初だけだった。
「でもおまえは全部断らなかった。」
……仕事だからな。」
「何を言っているんですか。仕事は断れてこそ立派な大人ですよ?わたしは自分がやる気のない仕事はガンガン断ります。」
「おまえは断り過ぎでは……。」
 嫌がらせか、何かそういう遊びかとも思っても、芸術家はこちらに要求したポーズをきちんと見て描いている。それで何枚も作品を生み出し、実際に生計を立てているのだから、己がやらされていることは、正真正銘に仕事なのだと分かる。いつも疑わしいが。
 自分の仕事が、きちんと成果となっているのだ。それがこの芸術家の作品として現れているのが、嬉しかった。何より、この芸術家の作品が好きだった。
「だからわたし、モデルが嫌がることはさせませんよ。」
「そうなのか?本当に?」
「失礼な、当然でしょう?」
 この芸術家は自分の作品にプライドを持っている。それなのに自分の要求通りに動かないモデルなんて、意味があるとは思えない。
……なぜ。」
 そんなモデル、さっさと手放してしまうのでは。
「おまえをずっとモデルにして描いていきたいからですよ。」
 芸術家はそう告げた。この男はおれにモデルをさせていたんじゃない、モデルとしておれを描いていたんだ。
 それもそうだ。良く考えたら、自分はモデルとして要求されることに、なんでも器用に応えられるタチじゃない。今迄された指示だって、きっとこなせていないし、なんならこちらが出来ることをたださせていただけに過ぎない。
 ただ座っているだけ。長い付き合いの筈なのに、最初に要求されたことから、ずっと何も変わっちゃいなかった。
……筋トレしっかりやるか。」
「そうですよ?死ぬまでその体型を維持してください?」
 死ぬまで描く気か。なら、死ぬまで一緒だな。


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いつもリアクション絵文字等ありがとうございます。