lilie_y0527
2026-05-06 16:54:09
1050文字
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自然と仲良く


見渡す限りの花々が風に揺れ、甘い香りが満ちている。
ルークとグローグーは、まるでここが故郷であるかのように、迷いなく草の上に身を投げ出した。グローグーは見たこともない色の蝶を追いかけて、きゃっきゃと喉を鳴らしている。
​だが、一人だけ、その平和な情景に馴染めない男がいた。
​「おい、ルーク。こんな無防備な場所で」
​ディン・ジャリンは、ベスカーのアーマーをきしませながら、落ち着きなく周囲を警戒していた。足元に広がる柔らかい草の感触も、色鮮やかな花びらも、戦士である彼にとっては隠れようのない無防備で不安定な場所にしか見えない。
​「リラックスして、ディン。ここに敵はいない。……ただ、風と光があるだけだ」
​ルークが寝転んだまま、楽しそうに笑って手を伸ばした。その指先が、ディンのグローブを掴み、ぐい、と下へ引く。
​「……っ」
​不意を突かれたディンは、重いアーマーと共に、草の絨毯の上へと倒れ込んだ。
背中に当たる地面は意外なほど柔らかく、花々の香りがヘルメットを越えて、わずかに鼻をくすぐる。
​「見て。空が青くて、本当に綺麗だよ」
​隣で寝そべるルークが、眩しそうに目を細めて天を仰いだ。
ディンも同じように、空を見上げる。だが、バイザー越しに見える世界は、デジタルに補正された色調でしかなく、ルークが感動している「青」がどれほど美しいものなのか、彼には正確には分からなかった。
​けれど――

​ふと、右側の感覚が熱を帯びていることに気づいた。
ベスカーのアーマー、そしてフライトスーツ。その強固な装備を貫いて、隣に並んで横たわっているルークの体温が、じわりとディンの肌にまで伝わってくる。
​太陽の熱ではない。それは、ドロイドのような機械でもない、生身の人間が持つ、穏やかで力強い生命の熱だった。
​ーなぜ、あいつの温かさだけが分かる……
​ディンは困惑し、ヘルメットの中で小さく息を吐いた。
ソワソワとした落ち着かなさは、いつの間にか、心臓の奥が小さく跳ねるような、別の種類の鼓動へと変わっていた。

​空の色は分からない。敵が来るかもしれないという不安も、完全には消えない。
けれど、腕一本の距離にいるルークから伝わるこの温もりがあるだけで、ディンのなかにある戦士としての鋭い神経が、ふっと、ほどけるように緩んでいく。
​「ああ。……そうだな、ルーク」
​ディンは、そっと目を閉じた。
ルークが「青い」と言った空を、その温もりをガイドにして、心のなかで描きながら。