幸希(ユキ)
2026-05-06 16:17:51
11342文字
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こぼれ落ちた

記憶喪失ネタです。2度と書きません辛すぎる。
ダメージ酷いからさっくり書くつもりだったのに、何でこんな長くなった。お陰でダメージ倍増してむっちゃんから離れられない。


1ヶ月だろうか。まだ2週間かもしれない。何日経ったかも分からなかった。

「こんちゃん……なんて?」
「申し訳ありません、審神者様……。手を尽くしましたが……。」

修復不可。そうこんのすけから告げられた。

「あるじさま!」

バランスを崩して倒れそうになったのをごこちゃんが支えてくれたが、足に力が入らない。

「ちょっとこんのすけ、どういう事!?」
「途中までは修復はうまくいっていたのです。しかしバグの範囲が想定以上に広く、繋げなければいけない肝心な部分が大破してしまっていたり、補正を試すと記憶とズレが生じてしまい
「じゃあ
「陸奥守様の、審神者様に関する記憶は、戻りません。」



『主!』
『こっち向いとうせ』
『可愛いにゃあ』
『わしの可愛いおまさん』
『また一緒に土佐へ行きたいのう』
『離さん。離せん。こがに愛しい人を手離せる訳ないがよ』


『愛しちゅうよ、ゆき』


「嘘、つき。」
「あるじさま。」
「離せる訳ないって……言ったのに。」

絶望。そう言い表すにはあまりに空虚で、呆気なくて。実感が持てない。持ちたくない。

ねぇ、本当に無理なわけ?」
「ねぇこんのすけ、他に方法はないの?これじゃあ主が!」

加州と安定がこんのすけに詰め寄る。

「わたくしも戻せるのであればそうして差し上げたかったです!しかしどうやっても戻らないのですよ……。審神者様に、“必ず”などと宣っておいて、なのにこの始末。お詫びしたくてもしきれません!」

消えていく。こぼれ落ちていく。何よりも大事にしたかったものが、無くなってしまった。

「わしの嫁さんって、もう、聞けない?」
「まーだそがな世迷言を吐いちょったがか。」
「陸奥守!」

いつからそこにいたのだろうか。軽蔑と失望の目でこちらを見る琥珀色。

「わしは刀で、おまんは人。おまんはわしの嫁やない。人とは、生きられん。どういてそれが叶うと思うた。」
……。」
「しかも誓約使うてまで。そがにわしに惚れちょったか?残念じゃったのう、あてが外れて。」
「おい陸奥守!」

加州が止めようとするが、なおも言葉は続く。

「そればあしの事で折れるらあて、どこまでたっすいが。それで将?ハッ、笑わせなや。」
「陸奥守言い過ぎだよ!」
「誓約。あれはどうにか解けんかやっておくき、おまんは人としての生を全うしぃや。もうせいぜい夢は見ん事じゃ。」
「まって」
「関係しゆうのは石切丸じゃったな。話をしに行かんと。神罰は記憶がない事を考慮してもらえんかのう。」
「まってよ
「どういてこがな娘っ子程度と契ろうなぞ思ったんかの。過去にしがみついて真似事ばかりで、魅力に思えるもんが見当たらん。」

足の感覚がない。息が、できない。

「ちょっと陸奥守!そんな言い方ないだろ!」
「なんじゃ加州、おまんそいたぁに惚れゆうかえ?やったらおまんが嫁にすればえいろう。ほんで代わりに誓約を履行すればえい。」
「陸奥守てめぇ!!」
「やめなよ清光!!」

陸奥守に殴りかかろうとする加州。それを止める安定。嘲笑うように佇む陸奥守。やめて。おねがいやめて。

「陸奥守
「おん?」

頬が冷たい。視界が暗くなる。

……好き。愛してるの。」
「わしはおまんなぞ愛しちょらん。」

限界だった。何の感情も見いだせない冷たい目を最後に、視界がブラックアウトした。