おれが生きてる間は一緒にいてほしいと望んだし、それを言った。すると暫し黙ったあいつは、珍しく何か迷ったようにした後、少しズレた答えを返した。
「おまえに死なれたら困ります。」
「そうなのか?」
割と滅茶苦茶な扱いを受けていると思う。実際刃物で体を切り付けられているし、ここのベッドが新品なのは、血溜まりで駄目にしたからだ。それでも医者の世話にはなっていないし、おれに傷を付けたこの男の手で酒で酔わされて麻痺させられて、裁縫道具で傷口を縫われた。その間こいつはずっと楽しそうだった。もっと深くまで傷を抉れれば、この男はもっと楽しめるのだろう。おれは死ぬが。
この男がそうしないのは、てっきり死体を処理するはめになるからだと思っていた。おれが生きてる以上、こいつを法の下に晒すこともなければ逆に庇うのだが、その当のおれが死んでしまえばそういうわけにはいかないだろう。それに、こんな可笑しなことを許すのは、おれくらいしかいないに違いない。
しかしおれを死なない程度に痛め付けているのは、こいつの意思らしい。本人曰く。本当かよ。
「それはおまえが好きなおれに対して、おまえもおれを好きってこと?」
こちらも少し物騒な話で始めてしまったが、そんな内容の話題ではないはずなのである。
「おまえをずっと甚振っていたい。」
だからおれが死んだら困るって。
分かったような分からんような。
「あのさ、おれがおまえ好きなんは、困らねえの?」
「……おまえに死なれたら、困ります。」
「じゃあ、まあ。」
おれが生きてる間は、おまえは一生おれに困ることはねえよ。
おれに傷を負わせてそのまま殺すつもりなら、それはそれで死因がおまえになっても構わない、そういうつもりで言ったんだがな。
死んだら困ると言われちまった。手当てとも言い難い縫い物だが、おまえにそうされるなら呻いてでも耐えよう。今まで通り、こんなことする関係はおれだけだ。おまえがおれの傷を縫い留めているように、おれもおまえを、おれにそう出来ているような気になる。だから悪くない気分だ。
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