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りな³
2026-05-06 00:03:03
3835文字
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セクピスパロぎゆさね ②
続きです。
主に実弥視点。
(実弥→義勇→実弥→義勇→実弥の順)
男は鼻から大きく息を吸い込んだ後、考える素振りをしてから俺の近くに腰を降ろした。
真正面の男の顔をまじまじと眺める。宇髄とはまた違う面の良さだ。しかし無表情過ぎて感情が読み取れない。
「名前は」
落ち着いた低い声。声まで良いらしい。
「不死川だァ」
「下の名前は」
「下の名前知ったって意味ねぇだろ」
「それでも知りたい」
「
…
実弥」
「字はどう書く」
面倒くさいが向けられる眼差しの強さに引き下がってくれなさそうだと悟る。仕方なくリュックサックの中からペンとルーズリーフを取り出し書いて見せると、冨岡がかすかに口元を緩めた。一応表情筋は生きているようだ。
「良い名だ。俺は」
「あんたの名前は知ってるぜェ。冨岡の坊ちゃんだろ」
「坊ちゃんじゃない。義勇だ」
「へいへい」
「何故お前のような男がこの話を受けた」
傷だらけの体格の良い男が腹を貸すのが変だって言いてぇのか。
こちらを見下すような響きに少しイラッとした。
「あ?お前に関係ねェ」
「そうか」
語気を強めて言ったが特に気にする様子はなく、それ以上理由を聞いてくることは無かった。
その後、互いについて話をした。
同じ歳で大学生。専攻は経済。冨岡には姉が1人いて、好きなものは鮭大根。
冨岡の声は心地が良い。色々聞かれ、意味がないと一応反抗するものの「知りたい」と言われてしまうと何故か律儀に答えてしまった。それに、その声を紡ぐ顔から目が離せなかった。
俺の視線に気付いたように冨岡がこちらへ目を移す。バチッと目が合うと、冨岡は直ぐに顔を反らし立ち上がった。
「少し夜風にあたってくる」
顔を背けたまま部屋を出ていった。
普通に会話をしていたはずだが何かが気に障ったのだろうか。やっぱりよく分からない奴。上手くやっていける気がしない。
◆
「はぁ」
部屋を出て戸を締め、縁側に座りながら戸に目をやる。正確には戸の向こう側に。
今までの相手には何の興味も無かった。
「抱くことはない」と最初から伝えていたし、相手の発するフェロモンにも甘ったるく鬱陶しい以外の何も感じなかった。
部屋に漂う花の香りとその香りを放つ白銀の髪の男
―
不死川の姿を捉えた刹那、言うことができなかった。いや違う。言いたくなかった。
もっと不死川の事が知りたい。
不死川と会話を交わす度に朧気な欲が膨れていく。不死川の瞳を見た瞬間、押し倒したいという欲が明確に形を持った。
軽蔑していた斑類の者達のような貞操観念の低い考えを自分がしていることに動揺し、嫌悪し、咄嗟に部屋から飛び出していた。
「まいったな」
困っているのにその声はどこか浮ついていた。
◇
冨岡との生活が始まった。
期間は明確に決まっていないが最長で半年程だと宇髄から説明は受けている。
日中は大学に通い、夜は子作り。
昨晩はあの後戻ってきた冨岡が「寝よう」と言ってきた。てっきりするのかと思いきや「おやすみ」と布団に入りこちらに背を向け寝てしまった。
俺が期待してたみたいで腹立たしかったので、舌打ちしてから冨岡に背を向けて布団に潜った。
こいつと半年も寝食を共にしなければならない。
目の前でご飯粒を顔にくっつけて飯を食う冨岡を見ながら心の中で大きく溜息をついた。
つーか取りてェ!食ってて気になんねェのか!?見ててイライラするがぐっと我慢した。
食事の後、着替えをしていると既に黒のシャツに着替えた冨岡から声をかけられる。
「大学か」
「ああ」
「俺もだ。一緒に行こう」
「何で一緒に行かなきゃいけねぇんだよ」
「駄目か」
無表情のくせにどことなく落ち込んでいるように見える。まあどうせ駅かどちらからの最寄りの駅までだろう。
「チッ!仕方ねぇな。もたもたしてたら先行くからな」
「もう準備できてる。行くぞ」
「指図すんな」
くそっ。また断れなかった。
2人で朝の満員電車に揺られ大学に向かう。
「って同じ大学かよォ!」
「言ってなかったか?」
「言われてねぇわ!俺が昨日大学名言った時に言えよ!」
「すまない」
大学の正門の近くで騒いでいると向こうから図体のでかい男が手を挙げてこちらに歩いてくる
「おっ、不死川!」
「宇髄!」
「それと冨岡」
「おはよう」
「てめぇ冨岡のこと知ってたんかァ」
「当ったり前だろぉ!お前によく知らねェ奴紹介するかよ」
「そーかよ」
肩を組まれながらそう言われ、友達からの気遣いに嬉しさが込み上げるが、素直に顔に浮かべるのは気恥ずかしくて、ぎこちなく顔を逸した。
横にいた冨岡と目が合う。どことなく不機嫌さを滲ませた表情をしているような気がして声をかけてしまった。
「どうしたァ?」
「いや」
感情の読めない顔に戻っていた。気の所為か。
◆
授業へ向かう不死川の後ろ姿を見送っていると宇髄から肩を叩かれた。
「キレんなって!」
「別にキレてない」
宇髄が不死川に肩を組んだ瞬間、俺の中に渦巻いたのは「それは俺のものだ」という感情だ。
こんな感情を会って1日の相手に向けるなんて正気じゃない。自分自身に憤った。
「お前今日1限なかったろ」
宇髄からそう言われ、やましいことなどしていないのに心臓が跳ねた。
「授業が無いと大学に来てはいけないなんて決まりはないだろう」
「そうだけどよぉ。ふ〜ん」
「なんだ」
「まっ、上手くいってるなら何よりだわ」
背中に強い衝撃を受ける。痛い。宇髄を睨みつけた。
◇
毎日同じ部屋で寝て食事をする。時間が合うときは一緒に大学に行く。
すると自然と会話が増えていった。
冨岡の言葉に苛つくことが幾度となくあった。
最初は我慢していたが、限界がきて「どういう意味だ。俺を見下しているのか」と聞き返すと、焦った様子で「違うんだ。そういう意味じゃない」と弁解し始めた。
俺を見下している訳でなく冨岡自身を卑下している内容だった。言葉選びが下手すぎるだろ。思わず吹き出し笑ってしまった。
「ど、どうしたんだ。俺はまた変なことを言ってしまったか」
恥ずかしそうに頬を染めて言う冨岡が可愛く見えた。
そのうち待ち合わせて一緒に帰り、昼飯も待ち合わせて食べるようになったり、休日に買い物に行ったり出かけるようにもなった。
互いの今までの話もした。
冨岡は姉が1人いたが両親と共に事故で亡くなったこと。俺は魂元を偽っていることは隠したままではあるが父親のことと家計のこと。
ブリーリングの目的が金だと知って不快に思うんじゃないかと思ったが、冨岡にそんな様子はなく、逆に「困ったことがあったら頼ってくれたら嬉しい」と言ってきた。つくづく優しい奴だと思う。
冨岡は目に見えてどんどん表情が豊かになっていった。本人に伝えると「不死川のおかげだ」と返ってきて、照れ臭くて冨岡の鼻を摘んでやった。
4ヶ月程経った頃だ。
隣に並んで寝ているときになんで冨岡は俺を抱かないのだろうと考えるようになった。
抱いて欲しいと思い始めている自分に気が動転する。懐蟲の影響なのか。冨岡が好きなのか。分からない。混乱して冷たい態度を取ってしまったが、冨岡は急に変わった俺の様子に心配そうにしながらも、いつも通りに接してくれた。
冨岡から優しい眼差しを向けられるとむず痒い気持ちになる。
冨岡の笑顔を見ると嬉しくなる。
触れられると体温と心拍数が上がる。
周りから鈍いと言われていた俺でも流石に自覚した。
俺、多分冨岡が好きだ。
恋愛対象として意識してほしくて、自分から手を握ったり電車の中で眠いふりをして肩にもたれかかったりした。サッカーの試合を観た時に喜ぶ流れでハグもした。
小学生かよって宇髄に笑われそうだが、俺ができる限りのアプローチはしたつもりだ。
だけど冨岡が俺を抱くことはなかった。
冨岡が俺に求めているのは友人としてなのだろう。ブリーリング相手でもなくもちろん恋人でもない。
割り切って友人としての役割を全うすることにした。それならこの期間が終わっても関係が終わるわけじゃない。どうせ恋人になれないんだ。だったら今後も会える方がいい。
ブリーリングのことは頭の片隅に追いやった。
もうすぐ半年だ。
冨岡とはかなり仲良くなれた気がする。
冨岡も、宇髄から「お前らめちゃくちゃ仲良くなったな!」って言われた時に「まあな」って何故かドヤ顔をしていたから俺と仲良いと思ってくれてるんだと思う。
その日の夜もいつものように部屋の中で布団の上に座って他愛もない話をしていた。
こいつの話は結構面白かったりする。ケラケラと笑っていると布団の上に置いていた手に冨岡の手が添えられた。
突然のことに驚いて固まっていると、顔が近づいてきてキスをされる。
深くなっていく。今まで一度もキスなんてしたことない。こんなに気持ちがいいもんなのか。
押し倒され真上を見上げる。そこには真っ赤に染めた冨岡の顔があった。
「不死川」
次の言葉を期待してる自分がいる。心臓が飛び出そうなほどバクバクと音を立てた。
「抱きたい」
願っていた。だから嬉しいはずなのに心が冷えていく。
俺の本来の役割をまざまざとまざまざと突きつけられた。
そうだ。俺はこいつの子供を産むために金で買われてるんだった。友人ですらない。胸の奥が軋んだ。
「いいぜ」
花の香りが強くなった。
冨岡の嬉しそうな顔に泣きそうになる。
隠すために噛み付くようにキスをした。
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