イマナミ
2026-05-05 22:12:21
7308文字
Public 👹 暖かな陽射しの中で
 

暖かな陽射しの中で 第7話 嘘

ぎゆしの小説 👹滅二次創作 生存if

「胡蝶、ちゃんと寝てるか?」
診察室で冨岡さんが私の顔をじっと見ていう。

「ええ」

「冨岡さんは問題なさそうですね。採血の結果次第ですが今のところの血液検査は順調です」

じっとらみられると心が落ち着かなくて困る。
しかも本当に私はここ数日寝てないのだ。

「おまえ、目の下のくますごいな

「女性にそういうことを言えてしまうのはどうかと思います」

二ヶ月に一度の健診も今年は今日で終わり。
冨岡さんとは、こちらが距離を必死でおいてる。

問題あるやつがいるのか?」
ああ今の冨岡さんはすぐ疑問に思ったら口にするのよね
疲れてると色んなことをうっかりしてしまう。

「冨岡さんのそういうところ、嫌いです」
「これ以上嫌われるのか
困ったなって顔をしてる。
本当素直になられて不思議な気持ち

「守秘義務がありますので、言えません」

「今日は
「無理です」
あまりにも誘われすぎて反射的にこたえてしまった。

「まだ何も言ってないのに
はあっとため息をつく。

「はいはい、帰ってくださいね」
とりあえず冨岡さんを診察室から追い出そうとする。

ガラッ
扉をあけるとがらんとした待合室

「「え」」

誰もいない。みんな帰ってる
いないのは元柱の人達だけじゃない。

「もう少し自然に気を利かせてほしい
冨岡さんが思わず呟く。

「嘘、アオイ、カナヲ?」

しーん

「とりあえず、冨岡さん帰ってください」
「甘露寺か?薬効いてないのは

「え」

「甘露寺は特殊体質だから」

守秘義務です」
なんてこと。勘のいい人。

「意外と嘘つけないな
「守秘義務です」
こういう時は声色を一切変えてはいけない。

「栗花落のことはどうなった?」
ほっ、話題が変わってる。

「炭治郎くんがご挨拶にきましたよ。結婚は少し先になりそうですけど、真剣にお付き合いしてるみたいですね」
「そうか、結婚かいいな

「冨岡さんは冨岡さん次第じゃないですか?
今ならご結婚しようと思えばいつでも

しまった。結婚の話題を広げたらいけないのを忘れてた。

「惚れた女には距離をおこうとされてる」
なんというこたえにくいことを言うのかしら。

「あきらめも肝心ってことですよ」
素知らぬふりをして言葉を返す。

「わかってる。でも、好きな気持ちが止められないんだ」

私に言ったわけじゃない。と自分にいいきかす。

「胡蝶、俺は

「わ私は採血した血液を珠世さんのとこに届けてきますね」
「俺も行く」
「一人で大丈夫です」
「いや、もともとそういう予定なんだ」

は?

「さっき、今日は今から愈史郎に会いに行くって言おうとしたのに胡蝶が勘違いしたんだろ?」
「え
何それ、すごく恥ずかしい。

「じゃあこの血液任せます。愈史郎さんにお願いします」
「そんなに一緒が嫌なのか
冨岡さんの顔が青ざめてる。

「でも、私、すぐ研究したいので仕方なく一緒に行きます」
「仕方なく
冨岡さんは空を見つめ呟いた。

「甘露寺は、どんな感じなのか?」
「何も言いません」
「元気そうだけどな

「甘露寺はまだ20だ。俺らは21で痣がでてる。胡蝶は治す気でいるんだから、なんとかなるんだろう?」

「私は何も言いませんよ」

「甘露寺と俺らの代謝は全く違うよな」

「ちゃんと計算してますよ。いやですね、冨岡さんが考えつくことを私が考えないわけないじゃないですか?」
そりゃそうだな」
「全く

「甘露寺が飲んでない可能性は?」

「は?わざわざ死に急ぎます?」

「宇髄が前に言ってたから女が薬を飲んだら子を成したらいけないと」

「今日話しましたけど、いつもの甘露寺さんでしたよ。」

「もし、伊黒の薬が効かなくて、25で亡くなるかもって思ったら?」

「私を信じてくださいよ」
亡くなるなんて簡単に言わないで欲しい。

「いや、俺は胡蝶を信じてるけど。甘露寺が伊黒が死ぬかもと思ったら早く伊黒の子がほしくなったりしないだろうか。おまえが甘露寺ならどう考える?」

……さあ?わたしは子どもを持つことを考えたこともないですし、私は甘露寺さんじゃないし

「え

「私は他人を邪推しないだけです。
冨岡さんなら、薬飲んでないから今すぐあなたとの子どもが欲しいと迫られたらどうします?」

今からでも薬を飲めって頼むな。とにかく生きてて欲しいから

「じゃあ、大丈夫じゃないですか?」

胡蝶。俺らが想像するのが一番無意味なんじゃ

「どちらも恋人、いませんしね」
にこっと明るい声でちゃかすように言って、微笑んでみる。

「明るく言うな」
呆れた声で冨岡さんが言う。



土曜日なので二人は珠世と愈史郎が暮らしてる家にいく。
「珠世さん、愈史郎さん、先にこの今日採取した皆さんの血液を先にみておいてください。私は行くとこができました」
「俺も行く」
冨岡さんが私の腕を引っ張る。

「冨岡さんは愈史郎さんと今から過ごすのでは?」

「おまえはもし甘露寺が薬を飲んでないとわかったら、暴走しそうだから、俺も行く」

愈史郎さんの顔が歪む。
「飲んでないのか?だからあの結果なのか?体質だと思わせといて、甘露寺のやつ」

「甘露寺さんの血液を先に見てください。結果が分かり次第、私の鴉をおいていくので、よろしくお願いします」

はあ、っと愈史郎さんはため息をつく。
「冨岡、俺は明日でいい、胡蝶をよろしく」

珠世さんもこっちをみて、冨岡さんのほうをみる。

「冨岡さん、しのぶさんをお願いしますね」
「嫌です。冨岡さん、ついてこないでください」
強く冨岡さんに言う。
いや行く」
「女同士で話します。邪魔です」
「医者として一方的に怒って話しそうだから」
愈史郎さんも珠世さんもうんうんとうなづいてる。

私は甘露寺さんにはとてつもなく優しいんですけど、酷いなと思う。

冨岡さんと揉めながら甘露寺さんの家に向かう。

「冨岡さんが、こんなしつこいなんて心外です」
「おまえ、怒ってるから」
こちとら真剣にどんだけ研究を頑張ってるか知ってるのかしら。
「落ち着いて話します。約束します」

「あー、やっぱり、冨岡さんとしのぶちゃん」

明るくて可愛い蜜璃さんの声が背後から聞こえた。
二人で思わず振り返る。

「甘露寺さん」

「今、買い物してから帰ってきたの。伊黒さんは不死川とお食事にいってるわ」

「二人でくるなんて、もしかして、結婚することになったお知らせとか?」

「違います」
何故みんなは私と冨岡さんをくっつけたがるのかしら。

「仲良しに戻ったのね。嬉しいわ」
「私が甘露寺さんとお話ししたいと言ったら、冨岡さんも着いてきちゃったんです」

「そうなの?どうぞ家に来て」

蜜璃さんは嬉しそうに紅茶を淹れてくれた。
「美味しい、珠世さんに教えたいですね」
いい香り

「ふふ、喜んでくれて嬉しいわ。今、茶葉に夢中なの。淹れ方にもコツがあるし、楽しいのよ。
後でお土産に渡すね」
「ありがとうございます」

チラッと横の冨岡さんをみる。
無表情で飲んでる。
「冨岡さんは緑茶のほうが似合いますね」
「紅茶は、愈史郎のとこで飲むから美味いと思うようになった」
「そうなんですね、もう少し表情なんとかなりません?」
ツンツンと冨岡さんの頬をつく。
「つくな。笑えば笑うなと言ったり、ややこしいな、胡蝶は」
私が冨岡さんの笑顔には慣れないと言ったから?本当変わってる。

「適度に表情は必要ですよ、冨岡さん」
「善処する」

「相変わらず、仲良しで嬉しいわ」
にこにこしながら私達のやりとりをみてる。

「唐突にすみません。蜜璃さん、薬飲んでますよね?」

「え」

蜜璃さんの顔色が変わる。
「今日の結果もみました。蜜璃さんの状態が芳しくなくて、ずっと私たちは悩んでます」

悩んでるという言葉をきいて、蜜璃さんは困ったなという顔をした。

「あ、その、飲んでないの」
小さな声で蜜璃が話した。

「なんで?」
私の声が低く響く。

「すみません」蜜璃さんは萎縮してる。

「胡蝶声が怖い落ち着いて」
冨岡さんが小声で指摘する。

私は大きく息を吸う。
1、2、3と心の中で数えてから落ち着いた声を心がけて話す。
何故、飲んでないのか教えてくれませんか?」
極力優しく響くように声をだした。

蜜璃さんは気まずそうにしてる。

赤ちゃんがいつか欲しいからです。伊黒さんが、もしなくなったらと思うとその前にでも。でも、まだその行動にはうつしてないです。私は五人くらい子どもがほしいけど、さすがにその夢はあきらめるから

「私たちは今のあなたの結果をみて薬を調合してます。勝手なことは困ります。
それに今の薬でも飲んでさえいれば99%痣の影響では死ぬことはないです。伊黒さんは亡くなりません」

「胡蝶落ち着け」
ついイライラしてしまう私に冨岡さんが言う。

「ごめんなさい。本当にそれだけです」

「なんでですか?確かに今はお子さんを作ってはだめですと言ってますけど、そのうちにもっといい薬を作ろうと思ってます」

蜜璃さんは下を向いてる。

「でも
ちらっと冨岡をみる

「あの冨岡さんは外してくれませんか?」
ゆっくりと蜜璃は言った。

「わかった。でていく。胡蝶は甘露寺をせめるなよ」
冨岡さんは蜜璃さんの家から出て行った。


「あのね
蜜璃さんはもじもじしてる。

「前にしのぶちゃんとお茶したとき、「しのぶちゃんは子を成せないかも」って言ってたから、その同じ藤の花だから飲んだら子どもができなくなったら困るなと思って


目の前が暗くなる
私の一言が?蜜璃さんを追い詰めたの?
そんなことを言った覚えすらない。

「私、うっかりいいましたっけ
でも、私が子を成せないかもしれないのは、私の飲んでた毒です。
蜜璃さんが飲んでるのは、どちらかというと人間に戻す薬に近いんです。全く問題ありません」

「しのぶちゃん

「今の薬は飲まなくなってしまう期間が長いと次飲むとき効きにくいんです。だから、お願い、早めに飲んでください。進行が進むほうが苦しんだりする可能性があります。
私の迂闊な一言で惑わせてすみませんでした」

「そんな、私が勝手に勘違いして本当に聞けばよかったのに、ごめんなさい」

「いえ、ちゃんと説明なくて不安でしたね。こちらこそ、ごめんなさい」

「しのぶちゃんその、冨岡さんに身体のことを言っても受け止めてくれるとおもうけど」
「冨岡さんは私の人生には関係ないです」
「そんな」
「私は一人で生きていきます」
「でも、好きなんでしょう?一緒にいるときすごく楽しそうにしてるし」
「好きですよ、でも、私は研究と蝶屋敷がありますから、欲張る気もないです」
「冨岡さんの気持ちは?」
こたえません」
「どうして」
「私は私で精一杯だから

「薬、飲むね。ごめんね、心配させて」

「帰りますね。冨岡さんをお待たせしてますから」

蜜璃さんの家を慌ててでる。

私と蜜璃さんは何もかも正反対な気がする。

家をでたところで冨岡さんがいた。
「胡蝶甘露寺は薬飲んでくれるようになったか?」
「ええ
「よかったな」
「はい
でも、気持ちは複雑だ。

「冨岡さん帰っててよかったのに」
キツイ声色で、ついついあたってしまう。

「一緒にいられる機会は大事だから」
ニッコリと私の声色にも臆せず冨岡さんが言う。
「そんなに一緒にいたがるなんて……私ってそんなに可愛くて魅力的ですかね」
「ああ、可愛いし、魅力的だな」
優しくこっちを向いて言う。

それ肯定されると困るやつです」

「うん、でも、本当に可愛いから」

二人でかあっと頬が赤くなる。
今の冨岡さんは絶対モテるわよね
複雑な気持ち。

「えっとなんか、お腹空きましたね、食べて帰りますか?」
「ああ」


「親父、もう一杯」

「5杯目ですか?鍋焼きうどんを。もう前みたいに動いてませんし、太りますよ」

骨格はそんなにがっちりしてないものと診察の時の冨岡さんを思い出す。

「それなりに鍛えてる」

「ああ、なるほど。さっき診ましたけど確かにあまりお変わりなかったですね」

「胡蝶に診察でみられるしそれなら鍛えるだろ?」

(私に見られるから?)
「素直なのはいいんですけど、時々すごいこと言ってますよ」
「そうか?」

「胡蝶はなんだか落ち込んでるな

「よくわかりますね。
私のせいでした。
私の一言で蜜璃さんを勘違いさせてしまいました。
でも、ちゃんとわかってもらえたようでよかったです。本当に言葉に気をつけないといけませんね。」

「言葉がキツイからな」
揶揄うように私に言う。

「すみません」
「いいんだ。本当は優しいことをみんな知ってる」

「そんなことないですよ、私は冨岡さんには意地悪な気持ちで意地悪な言葉を選ぶときもありますし」

なんで?」
「わかりません」
できれば俺にも優しくして欲しい」

「それは、冨岡さん次第です」
「俺は優しくしてるはずだが

そうね、本当にとても優しい

「はい、鍋焼き」
うどんが運ばれてきた。気まずい空気が調和される。

「美味いな」
「5杯目でもそれだけ美味しそうに食べるんですね」
二人で並んで食べるのはいつ以来だろう。

お店の人が冨岡さんに近づいてきた。
「お二人、今なら2階空いてるよ」

「大丈夫だ、必要ない」
スンとした顔で冨岡さんがこたえる。

「2階??何があるんですか?将棋?」

「いや、胡蝶は知らなくていい」
「冨岡さんが知ってて私が知らないとか嫌なんですけど」


冨岡さんがじっと私の顔を見る。
「なんです?」
「知りたいなら俺と行くか?2階」
少し照れた感じで冨岡さんが言った。

「わかりませんが、それはいいです」

冨岡さんは再びスンとした顔になった。

「警戒心が強いことはいいことだな」

(警戒心
「ああ、そういうとこなんですね、わかりました。
軽蔑します」

「軽蔑って。俺は誰でもいいわけじゃない」
「そもそも私とそんなことできるんですか?」
「できる」

(へ??)

お互いぼっと顔が赤くなる。

「ちょっとやめてくださいよ。
そんな目でみないでくださいよ。なんか一瞬、想像してしまいました」
思わず自分の身体を押さえる。

「そっちが聞いたからこたえただけだ」
冨岡さんは拗ねてる。

「冨岡さんといえば、ドジっ子の幼な子でしたのに」
「そんな時期に知り合ってないと思うが

「いつの間にか助平な殿方になられて
「おまえな
頬を染めて呆れた顔をしてる。

本当、表情豊かになって、別人みたいね。
少し寂しいなとも思う。

私は、結構昔の冨岡さんも好きだったのよ。

星空の下二人で歩く。
初めてのことでもないのに。
任務じゃないってだけで変に緊張する。

「蝶屋敷まで送る」
不器用な言い方ではなくて、爽やかに言う姿になんとも複雑になる。

「もう遅いですから、泊まって行きます?
部屋なら入院の部屋がたくさんあいてますよ」

「いや、流石に帰る。
それより次の休みに一緒に出かけないか?」

「無理ですね」
研究もあるし、買い出しもある。
冨岡さんは私のじっと顔をみる

「こんなに近いのに、遠いな。星のほうが近いかもな」 

そういって冨岡さんは空に向かって左手を伸ばす。

横に並んで歩いてるのに、何をいってるのだろう。

冨岡さんが前を向いて、視線だけ左にむけて、じっと私の顔をみてる。
私は目線に気付かないふりをして前をみる。

下を向き、ふーっと軽くため息をついて、また私の方に顔を向けた。

深い青い瞳がこっちをみてる。
ドクンとなる心臓。

いつか言われると逃げてきた言葉。

きっと今、言われる。

どうしよう。

心臓の音が響く。

「胡蝶
いきなり冨岡さんが歩みを止めた。

「な、何です?」

どうしよう

ドクンと高鳴る

冨岡さんの指が私の耳のあたりに触れ、顎をもちあげた。

思わず目を見開くと、長い睫毛が降りてきて


くちびるが重った


もし好きだと言われたら

『仲間として好きですけど、それ以上ではないです』とこたえようと決めていた
 
でも
まさかこんなことするなんて思いもよらなかった

なんなら冨岡さんならしないと思ってた

重なる唇を逃げることもなく受け入れてしまった時点でもう遅い

目をつぶり

手を冨岡さんの首にまわす

あたたかい

くちびるが離れ

冨岡さんが「好きだ」と囁いた。

「不意打ちすぎます。口付けをするなんて、聞いてからしてください」
顔から火が出そう。

「でも、聞いたら嫌がるから
「そんなだからって」

「何を言ってもおまえには嫌だと言われる」
言いますけど」

「おまえは嘘つきだから」
「嘘なんてついてないです」

「胡蝶が好きだ」
「あなたの気の迷いです」

「よし、わかった、もう一度しよう」
「ちょっと、何がわかったんですか?馬鹿じゃないですか?」


「接吻しても嫌がらないこと」



再び重ねられた唇はさっきよりお互いに熱をおびてる

ずるい

口を塞がれたら嘘はつけない

胸の奥が苦しい

何度も何度も重なる唇に

何度か自分からもその甘さを求めた。

溶けていく

私の嘘も全部溶かしていくような気がした。




第七話 嘘