ろころころ
2026-05-05 21:07:51
1485文字
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女神だった少女





天界から降り立つのは、あの憎き神の使い魔。真っ白な翼を翔かせる彼らの姿形は、何処と無く歪で、神聖というよりも怪物に近かった。

「あ、れは──────」

何よりも先に、悍ましいと思った。
そしてじわじわと、心の奥底から押し上げられるような憎悪が、頭の中を埋めつくした。

"あれ"が何かを、エレミアは知っていた。
"あれ"はこの世界に存在してはならぬものだと、エレミアは知っていた。


***********


秩序の騎士団──────通称、秩序騎士。

彼らはこのレグルス大陸において唯一、"武力行使"が許されている。唯一の力によって大陸の治安を維持し、それを脅かす者には力を持って制裁を下す。この騎士団は、この大陸における警察と司法の両方の役割を持っているのだ。

そうなれば、外部勢力から他身を守るのもエレミア達の仕事だった。早急にあの忌々しい神の使いを対処し、エレミアが見渡すことの出来る大陸を守り抜かねばならない。


「─────ベルは何処ですか?」
「まだ来てないよ」

ふぁと欠伸をひとつ、頬杖を付きながら眠たげな眼を擦った生年が淡々と応じる。

「君はせっかち過ぎる。何をそう急ぐ必要があるっていうのさ」
「奴らが使徒がこの世界にも勢力を拡大させました。あの忌々しい神の小癪なやり口を、私は身をもって理解しています」
「宗教禁止令でも出したら?」
「それで解決するのなら、国の統治に苦戦する王はいないでしょうね」

それなら、とロアは口を開いた。

「君がもう一度、神になるしかない」
どうやって?」
「僕が知るわけないでしょ。君は一度神になったんだから、君が知ってるはずなんだよ」

わからない。エレミアにはわからなかった。
神になった少女は、一体どのようにして神の力を手に入れたのか。
エレミアには、かの少女よりも力があり、経験もある。

あと何が足りないというのか?
その問いに答えられる者は、この世界の何処にもいない。


**********

それから、ベルは約束の時間を30分過ぎても姿を表さなかった。真面目な彼が遅刻どころか約束を忘れるなど、何かがおかしい。そう感じたエレミアがベルの部屋を尋ねた時には、彼は既に、悪夢に魘されていた。

青白い肌に浮かぶ脂汗、過呼吸にも近いひゅうひゅうとした音はエレミアの心臓を跳ねさせた。

エレミアは直ちに医療班を呼び出し、駆けつけたラティに彼の容態を確認させた。
しかし、彼女の口からは出た結論は実に呑気なものだった。

「うーん?寝てますね。悪い夢に魘されてるだけじゃないですかぁ?」
「いくら悪夢を見たからと言って、ここまでは
「そうは言っても身体に特に異変はないんですよねぇ。でも、揺さぶっても起きないっていうのはちょっと心配かなぁ?」

結局、医療班が代わり番で彼の様子を見ながら夜を明かすことになったのだ。

「隊長はもう寝てください」

看護師にそう言われ、胸の内に一抹の不安を抱えたまま、エレミアは自室に戻った。

その日の夜は、一睡も出来なかった。




*********


──────使徒が、親子を襲った。

そんな知らせが入ったのは、エレミアが眠れぬ夜を過ごしたその日の内であった。

……君、寝てないだろ」

そんなロアの小言を聞き流し、エレミアは剣を手に目撃の場所を目指した。理由がどうであれ、きっかけが何であれ

──────あの忌々しき神の手は払い除けねばならない。