もしフリンズさんが図書委員だったら?の話

※学パロです

 今日のカウンター当番はフリンズ先輩だ!ラッキー‼︎

 最近の昼休みは、お弁当を急いで食べてから図書室の蔵書本を片手に図書室に駆け込むことを日課にしている。運が良い日だと、憧れのフリンズ先輩に会えるからだ。
 一目惚れしてしまった美人な先輩のことを少しでも知りたいと思い、色々作戦を考えたのだが……学年が違うためあまり接点がない。しかし、先輩が図書委員だと知ってからは、ほぼ毎日図書室へ通って、今まであまり興味のなかった読書に時間を割くようになった。カウンター当番表とか見れたら苦労しないんだけどね……そんなツテは今の所ない。

 まだ昼休み開始からすぐの時間帯なので、図書室にいる人はまばらだ。私はフリンズ先輩の座るカウンター席が見える席を確保した。今日の先輩も、いつもの眼鏡をかけて綺麗な長い髪を一つに結んでいる。
 私の方は今読みかけの……あまり今まで読まなかったジャンルの本を苦労して読み進めている。先週図書室の壁で見つけた『図書委員会からのお知らせ』の掲示物に、フリンズ先輩のオススメ本が載っていたからだ。
 元々漫画やファンタジー小説しか読んでこなかった私には、『生物学入門書』は……難しすぎて、こんな邪な目的がなければ投げ出していただろう。それでも私は「オススメの本読みました!」と、いつか彼に報告するために、彼のオススメを少しずつ読んでいるのだった。――正直、読み進めてはいるけれど、頭で理解できてなさそう。とはいえ、この本もあと少しで終わりだ。

「すみませーん」
……はい」
 
 カウンターにいる先輩に、女生徒が声をかけている。先輩は特に業務がない場合はカウンター前に座りながら読書をしている時間が多い(私調べ)。読みかけの本を閉じて、声をかけられた生徒の対応をするみたいだ。
 そんな様子を横目で伺いながら、私は思わず耳も傾けてしまう。

「先輩のオススメの本とかって、何かありますかー?」
 ――あ、それ系の質問はヤバいぞ?

「それでしたら、いま僕が読んでいた『空想の動植物図鑑』は如何ですか? どれも奇抜で面白いんです。たとえば、このページのグリフォンの羽根の描写が綺麗で……
 ――ほら、ね。

 表紙や本の中身を見せられた女生徒の顔が一瞬引き攣った。これも私調べなのだが、先輩の読む本は……だいたい変わっている。と言うか、すごい量の本を読んでいるらしく、どの本にも履歴にフリンズ先輩の名前があるらしいのだが、その中でもオススメされる本が……特殊なのだ
「あの、ちょっと……これは……
 そうだよね、今日先輩が読んでる本……表紙の絵が怖いもんね。
……そうですか。ではそちらに置いている学年の指定図書でもどうぞ?」
 やっぱりそうなるよね。うんうん。

 私は勝手に、その女生徒に同情した。フリンズ先輩、笑顔のはずなのに目が笑ってないんだもん。眼鏡してても絶対零度の微笑みだって分かるよ……。あれは怖いよね。
 顔を引き攣らせたまま退散する女生徒を、今度は目で追って眺めた。こんな光景を見るのは三度目である。以前も、オススメの本を聞いた女子生徒が似たような対応と結果になっていたのを見た。……先輩、人気あるんだけど、これなんだよなぁ。そんなちょっと変わったところも含めて私は好きなので、今のところ問題ない。

 ――さて、と。
 ようやく読み終えた手強かった本の、最後のページを閉じる。その本と学生証を手にフリンズ先輩のいるカウンター持って行く。返却対応をお願いするためだ。返却する本と学生証を重ねて、先輩の前へ差し出す。

「先輩、この本……難しかったですが読み終えました。他にオススメありますか? どんな本でも私は読みます!」
……こちらを? ――珍しい方ですね、ふふっ」

 少し頬を緩ませて笑う先輩が、なんと美人なことか。頑張って読んだ甲斐があると言うものだ。さてさて、次はどんな本になるのだろうか。
「普段は、どのような本を読むのです?」
……え?! えっと……正直なところ、漫画やファンタジー小説が多くて……えへへ」
 バレている……無理してこの本を読んだことが……、まぁ仕方ないか。それを誤魔化すために、自身の後頭部を掻きながら苦笑いをするしかなかった。

……それでは、今日の放課後また図書室へ来る予定はありますか? 何か読みやすいオススメの本を探しておきますよ」
「へ?! ……そんな、良いのですか?」
「勿論です。僕は図書委員ですからね」
 
 そう言ってニコリと笑う先輩。それは、図書委員の仕事の範疇を超えているのでは……とは思ったものの、先輩に放課後も会えるのが確約されるのであれば、喜ぶ他はない。
「はい、ぜひ! よろしくお願いします‼︎」
「えぇ。では放課後お待ちしてますね。――はい、こちらの本の返却を確認しましたので、学生証はお返ししますね」
「はい、ありがとうございました!」
 
 スッとカウンターに差し出された学生証を受け取り、スキップでもしそうな歩き方でその場から離れようと後ろを振り返った。しかしその時、フリンズ先輩は歩き出そうとした私の手首を摘み、軽く引き寄せられ、名前を呼ばれる。
 ……な、何ごと?!

「ところで、僕のカウンター当番日……知りたいですか?」
「え、あ……あの、はい! 知りたいです‼︎」
「ふふ、とても元気なお返事です。――貴女が、毎日図書室に通っているので、そうではないかと」
 ……何が目的で図書室に通っているのかなんて、とっくに先輩にはバレバレだったようだ。



『本と同じぐらい、僕を熱心に見ていましたよね?』