西尾六朗
2026-05-05 10:58:19
673文字
Public 名刺メーカーログ
 

それはオレンジのPeriod

巌ぐだ♀+デュマ。fakeイベ、デュマの台詞「俺も動くとするか」の後、モンクリの影を使役して戦闘してるところを見たデュマの妄想。

 アレクサンドル・デュマ・ペールがその特長的な形をした眉を持ち上げたのは、何ともわだかまる憂い――例えるならば、一味足りないスープに顔を顰めた瞬間、テーブルの端にスパイスボトルを見つけたかのような、そんな心境変化からだった。
 今目の前で流れて消えた一部始終が、ひとつまみの香辛料を与えてくれる。
 突然現れた敵性体を撃退したマスター、藤丸立香の立ち回り。レイシフト適正のあるサーヴァント以外の力を借りた、一次的な【影】の行使による見事な戦闘だ。特に、トップハットを被った【影】の繰り出す炎の刃の容赦のなさは一種痛快なほどだった。その【影】は去り際に、言葉もなくほんの一瞬、マスターの頬を指で掠めた。まるで大切なものにするかのように。触れては壊してしまうからと、指の背で、触れる触れぬの境界を掠めて過ぎてゆく動きでもって。
 その【影】の正体を、デュマは知っている。
 剣呑な気配は最初にして最後の席と変わっていない。あの【影】は間違いなく彼である。
 そして、本人そのものでなくとも、【影】が普段の在り方をそのままに一次的な顕現をしているのであれば――普段から彼はああなのだろう。
 そして、マスターはいつだって、同じように――ああして目を細めているのだろう。
 だとしたら、ああ。思い正さねばならない。黄色のエプロンを結び直し、デュマは笑った。鼻から抜けた息は、呆れと揶揄と安堵の温度だった。

(伯爵よう。難儀な生き方の方は訂正しねえが)
(届けに来なかったってのは、言い直すぜ。マスターそのものが、あんたのオチそのものなんだろうさ)