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まう
2026-05-04 11:23:53
1612文字
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蘭葬
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優先順位
蘭たん変葬ネタバレ
簾に彼女ができたときの話
(ポイピクに載せていたものの再掲)
「進路希望、明日までだって。灰はもう出した?」
先に帰宅していた灰に声をかけながら、リュックを下ろす。灰は自分のスペースでゲームをしているようだった。俺達の部屋はそれなりに広いけれど、一つの部屋を半分にして二人で使っている。部屋が足りない訳ではなく、母さんがそうしたかったらしい。兄弟だし、双子だから、一緒の部屋がいいよね、という理由。灰も俺も特に不満はないから何も言っていない。「子ども部屋」として割り振られたときからずっとここで寝起きしている。
灰がほんのちょっとだけ息を吐く。
「
……
まだ」
「だと思った。どうするか決めてる?」
「
……
」
「まだ二年になったばかりだし、そんなに深刻に考えなくていいと思うけどな。とりあえず『高校進学』って書いておけばいいんじゃない?」
「そうだけど
……
」
「全部真面目に考えちゃうところ、いいところでもあるけどあんまりやりすぎるとしんどいよ?」
「自分でもわかってるよ
……
。別にこれに書いたことを絶対実行しなきゃいけない訳じゃないって
……
。でも、なんか、一度文字にすると『こうします』って決定事項みたいに感じちゃうっていうか
……
」
「うーん」
俺は思わず苦笑する。灰の表情は至って真面目で、本当に真剣に困っているのがわかるから余計に。そういうところがしんどさに拍車をかけているんだけれど、灰はどうしても重く重く考えてしまいがち。年齢を重ねるにつれて顕著になっているなと思う。そんな灰を眺めながら、俺は口を開く。
「あ、それと、彼女できた」
「え」
「彼女」
「え、あ、へえ
……
」
目に見えて灰がうろたえている。「おめでとう」とか何か言いたいんだろうけど、それよりも純粋な驚きの方が大きいんだと思う。視線が左右に揺れて、そわそわとシャツを引っ張っている。
「二藤簾」は、男女それなりに友達も多いし、彼女だってできて当たり前。だから、まぁこのくらいの時期でいいかなというタイミングで彼女を作った。俺から告白しても別に良かったけど、ちょうどその子が声をかけてきたのでOKした。灰は多分知らない子。というより、同学年だったとしても灰が知っている人の方が少ないから名前を言ったところでわからないだろう。
何も言わずに待ってみるけれど、灰は結局どうしたらいいか分からないみたいで唇を噛んだ。言葉を飲み込むときにやるその癖、やめたらいいのに。
「灰くん、簾くん、そろそろご飯にするよ」
母さんの声が聞こえる。俺は階下に向かって「わかった」とだけ返答した。ちらりと灰を見ると、まだ視線を落としたままだった。
ねえ、今、どう感じている?
***
放課後、午後から降り始めた雨が強まっている。ここまで強いと傘があってもびしょ濡れだなぁなんて思っていると、下駄箱で彼女に「一緒に帰りませんか」と声をかけられた。いいよと返したところで、向こうの廊下に灰がいることに気づく。目が合って、「あ」と思う。
「ごめん、今日これから用事あったんだった。また今度でもいい?」
「あっ
……
うん、はい、じゃあ、また今度」
彼女が小走りで去って行く。廊下にいる灰が少しだけほっとした表情になったことを、俺は見逃さない。
「どうしたの、灰」
「え
……
と、帰ろうと思ったら、傘、なくて。簾がいるなぁと思ったんだけど
……
彼女の子、と、喋ってたじゃん
……
?」
「ああ、本当にちょっと喋ってただけだよ。俺傘あるし、一緒帰ろうよ」
灰の不安そうだった顔があからさまに和らいだ。置きっぱなしにしていた傘を広げる。傘に当たった雨粒がぱたぱたと音を立てる。
俺は、灰に気づかれないくらいに傘を傾けて歩き始めた。
---
中学生だと、まだ簾がはっきり「自分」と「求められる二藤簾」を意識できてなかったかもしれないかなぁ、と思ったり。ちょっとずつちょっとずつ塩梅を探っていっていたりね。
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