山茶花
2026-05-03 20:14:13
2533文字
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きみの体温【DS003】

触れていたい話/デュシル/掌編(2400字)

※デュース×シルバーです。
 
 なんだか最近、シルバー先輩の様子がヘンだ。
 といっても、特に何かこれといって目立つおかしさがあるわけじゃない。
 ただ、単に。その……
 ……やたらと、距離が近くなった、だけ、だ。

 ええっと、順を追って説明するぞ。なんていうか、さ。
 そう、いつからかっていうと、たぶん、あの頃だと思う。
 僕がディアソムニアのシルバー先輩の部屋に泊まりに行かせてもらって、それでその、まあ言葉にできないほどいろいろなことがあって……、で、そのあとに、シルバー先輩がベッドで寝る僕の傍にすってすり寄ってきて。
 それで、僕が抱きしめ返したら、嬉しそうにほほ笑んで、で、そのまま、すうって寝ちまって。

 その後、からだ。その後から、シルバー先輩は、前よりも僕に近づいてくるようになった。
 いや前から何かとこう、距離の近い人じゃあったんだけどな?
 それよりもさらに近くなったっていうか、なんていうか、さ。
 ええっと、なんて言えばいいのかな。なんつーか……
 僕が、シルバー先輩の部屋に遊びに行かせてもらって、それで、シルバー先輩を待ってる間にスマホとか見てくつろいでたりすると、シルバー先輩が部屋に帰ってきて、何見てるんだ、って。僕の肩に頭こてんって乗せて覗き込む、みたいな。
 それとか、僕が中庭のベンチでテキスト読んで勉強しようとしてると、隣に来て、同じように身体ぎゅっと寄せて、それでやっぱり肩に頭乗せるような感じですごく近くに来て、「どこが分からないんだ?」って聞いてきたり。
 あとは……そうだな、ええっと。ええと……

 ……なんか、今ちょっとうまく思い出せないが、とどのつまり、まあ。そんな感じで。
 シルバー先輩が、僕によく近寄ってくるっていうか、よく身体や頬をくっつけてくるようになった……、ってことなんだ。
 べ、別に悪いとは思ってないぞ!? ドキドキするとはいえ、まあ、困っては……ないし。それにその、えっと。……嬉しい、ってか、可愛い、し……
 いや先輩相手に失礼かもしれないんだけどな!? 普段からそんなこと思ってるのは!!
 でも、その。シルバー先輩が、僕にぴとってくっついてくるの見てると、なんていうか。
 あ、くっつきたいのかなー、人肌恋しいのかなー、なんて思って。
 他に人がいなくて、ふたりきりのときなんかは、ほら。僕からも、ぎゅってしてみてもいいかなあ、なんて気分になったり。

 だから、その。つまり、だな。……いや、惚気じゃなくって!! や、でも、惚気かもしれないな、うん。
 なんていうか、結論。……くっつき虫になったシルバー先輩が、可愛いってことで。
 ま、まあでも! 人目につくようなとこまでそれなのは良くない、よな!? 良くないと思う! 僕は!!
 なので、今日もこてんとくっついてくるシルバー先輩に、あえて尋ねてみた。
「シ、シルバー先輩。最近、その。よく、……僕にくっついてます、よね……?」と。
 そしたら、シルバー先輩は、頭を上げて。
「すまない、嫌だったか」
 って言うから、僕は慌ててそれを否定して。
「い、いやいや! 嫌とかそういうわけじゃないんですけど! むしろこういうふたりきりのときとかは、甘えてくれてるのかなって思って、可愛いし嬉しいんですけど!!」
……そうか。嫌でないのなら、良かった。だが、……何か、あるのか?」
「え、えっと。外とかでも、同じような感じだと、その。ダチとかに冷やかされたりしちまわないかなあ、って……
 僕は別にまあもう冷やかされ済みなんでいいんですけど、でもシルバー先輩の悪評に繋がったりしたら、と僕が言うと。
 シルバー先輩は、そっと僕の頬を指先で撫でた。
……俺は、冷やかされたり、人に見られたとしても、いっこうにかまわない。むしろ……
「む、むしろ?」
……そうすることで、お前は俺のものなのだと、喧伝していたい」
「ほぁ……っ!!」
 い、意外と独占欲強いんだな、シルバー先輩。
「だから、その。お前が、嫌でないというのなら、受け入れてくれると、嬉しい……のだが」
 もちろん、お前がからかわれたり冷やかされるのが本当に嫌だというなら、俺も控える、とシルバー先輩は言って。
……あの。シルバー先輩は、どうして、僕にくっついてくれるようになったんですか? 結論出す前に、理由先に聞いときたいです」
「それは……
 シルバー先輩は、目を伏せる。そして、僕の胸にぽふりと頭を預けて、そっと抱き着いてきた。
……お前のこの腕に、初めて、こうして抱かれた日。とても、暖かくて、心地良くて……安心した。だから、つまり……、俺は、その、」
 お前の人肌というか、体温が好きで。たくさん包まれていたいのだと思う、とシルバー先輩は言った。
「このぬくもりが、俺にとって、安心できる場所のひとつで……。できるだけ、傍にいたいと思う」
「えっと、つまり、それって……
……恋人であるお前に、甘えたい、という意味……なのかも、しれない」
「はぅあ……っ!!」
 あまりにも可愛いおねだりに。僕は、心臓が撃ち抜かれたような心地になった。
 か、可愛い。可愛すぎるだろ。照れてはにかんだ顔が、可愛い上にすごく美人だ。本当にこの人が僕の恋人でいいのか疑っちまうくらいに!!
「わ、分かりましたっ!! ……そこまで言われて断るほど、僕も情けなくありませんっ!! 僕の腕で良ければ、いくらでも包まれてくださいっ!!」
「本当か。嬉しい、デュース」
 そう言って、またシルバー先輩は僕の腕のなかへぽふりと抱き着き、すりすりと首元に頭をすり寄せた。
……可愛い……
 僕が思わずそう呟いて頭をぽんぽんと撫でると、シルバー先輩は僕を見上げて、口を尖らせる。
……お前だけ、だからな。そう言われて、許すのも。……こんな姿を、見せるのも」
 そう言ってシルバー先輩は僕に、もっとぎゅってしてくれ、と頼んできて。僕は、甘えん坊な恋人可愛すぎるだろ、と思いながら、その背中や髪を撫で、甘えたな背中をぎゅっと抱きしめるのだった。

*おしまい