望月 鏡翠
2026-05-02 01:19:42
964文字
Public 日課
 

#2063 にやり5

#毎日最低800文字のSSを書く/@tmysmst


 相棒が割ったたまごは、道具を使ったようにぱっきりと綺麗に割れていました。それもそのはず、内側からたまごをこつこつと叩いて割った相棒は、道具の形をしていたからです。
 僕の相棒。
 どことなく猫に似ていました。そして、少しだけ眠たそうに見える瞼をしていました。さっきまでたまごの中で眠っていたからかもしれません。
 いろんなものくっついています。
 でも、全部がどこかで見たことがある形をしてもいました。
「キッチンで見ました」
「此処、ガレージ也」
 几帳面なお父さんの相棒が、難しい言葉で訂正をしました。
 もちろんここはキッチンではありません。でも僕はその体についているものをガレージではなくキッチンで見たのです。小さなナイフと握りやすい滑らかですべすべの取手。缶に噛み付く爪みたいなところと、コルクをぐりぐりするねじまきの部分。
「殻は自分で割れるのさ、僕って優秀だからさ」
「はじめまして、僕の相棒。ぼくはにやり とろ。君は色々なことができそうな形をしていますね」
 相棒は鼻が高そうでした。実際に高い鼻を僕に見せてくれました。
「知ってるよ。名前は今聞いたけど、間違いなく君って僕の相棒。とろって呼ぶよ〜。僕のことはなんて呼ぶの」
 名前。それってとっても大切です。
 僕は相棒がどうやって名前をつけられるのか知りませんでした。自分で名乗るのかなって思っていました。
 でももしかすると自分で考えなければいけないのかもしれません。僕はまだ、サワガニの名前だって決めていないんです。
 だって一生の名前になってしまう。責任重大すぎます。
 呼びやすくて覚えやすくて、そしてなにより大事にできる名前がいいと思います。
 見た目は猫みたいですけど、ミケやタマにしたらそれってペットみたいで何か違う気がします。
 まずはたくさん調べないといけません。たくさんの道具がくっついた相棒の種族だとか、それがなんていう名前の道具なのか。
 僕の相棒は、動物なのか道具なのか、自然の一部なのかなんてお父さんとお母さんは相談していたのですけど、二人の予想は二人とも半分当たって半分外れていました。
 道具の形をした猫です。
 名前を決める前に、僕は彼もしくは彼女を、部屋に案内することにしました。
 これからは、二人の部屋です。