鳥居鉄工所
2026-05-02 00:08:03
2419文字
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「天涯客」第68章を読んだ感想

解語の花にはなれなくても、あなたの花嫁にはなれたんだよということなのかな
本文内容ネタバレぱんぱかぱんな感想こねこね

「天涯客」(Priest著)を読んでいる。

ぐぐるさんが機械翻訳したものを、原文と対照しつつ一語一文ずつ自家翻訳版を作っている。このお話はブロマンスドラマ化している中華BLで。主人公カップルはもちろん男性同士なんだけど、その脇CPに男女がいてこれが可愛いんだよな。
主人公のひとりの侍女であり、めちゃくちゃにかわゆす美少女かつめちゃくちゃにつよつよな顧湘ちゃんと、正統門派掌門の関門弟子(最後にとった弟子の意味)にして彼女にベタぼれな曹蔚寧くん。小説の展開はちょっとフレームアウトして見えていない間に夫婦になってしまってるという急展開だったが、それもまたかわゆしなので没問題。

そんなこんなで読み進めての第六十八章で、顧湘ちゃん周りでトンデモ発言が出てひっくり返った弊所です。

「當不成解語花,也當不成紅顏知己」(解語の花にもなれないし、紅顔の知己にだってなれない)

は?どゆこと?
この原語をぐぐるさんは「相談相手にもなれないし、ソウルメイトにもなれない」と訳しやがりましたよ、チガウソウジャナイ。
「解語の花」とは人の言葉を理解する花という意味で単純に美人の形容表現であり、「紅顔の知己」とは男性から見た恋愛感情の絡まない女性の親友を指す言葉です。
この言葉の出る前段で、顧湘は自分が谷主に庇護されてのびのび育った世間知らずであり、アタマ悪くて難しいことわかっていなくて、と、コンプレックスを吐露している。アタマが悪いから、谷主であり兄であり時に父である溫客行の言っていることが理解できない、ついて歩いてお道化て和ませるのが精一杯で、一緒の道を行けなかった、とも言っているわけで。
ここはそんな自分を語っているけど、それを読んでいる弊所には、ずっと理解者がいなくて孤独だった溫客行にはすでに、同じ言語で語りあい同じ道を進むことの出来る知己だか伴侶だか何だかかんだかな周子舒さんがいらっしゃるということをもう知ってるもんね~と後方腕組み読者ヅラで思ってしまう訳ですよ。
そして物凄く衝撃を受ける。
なれなかったと嘆く気持ちの裏には、なりたかったんだという叫びが存在している、と。
そして『解語の花』はここでは単なる美人の形容詞ではなくなっていると気づかされる。『紅顔の知己』と並べて言及されていることからも、この言葉の意味を考えなくてはいけなくて、その源流は、唐代皇帝の玄宗が愛妃である楊貴妃の聡明さと美しさを、庭の蓮の花に例えて褒めちぎった故事なわけで、寵愛されるにふさわしい美女という言葉じゃないかと類推できるわけですよ。
この姑娘、溫客行に寵愛されたかったの?
でも、彼は彼女を選ばなかった。その理由はまぁ、そもそもこれBLなんでぇというのもあるだろうけれど、それでも長年付き従ってきた超絶美少女という、男女恋愛モノにおいての圧倒的関係性が、アドバンテージになっていなかった、ふたりが同じ道を行けないのは知的レベルの差だったのです、という解答がこのシークエンスにおいて明示されてしまっている。しかも顧湘は、それがわからないほどのお莫迦ではないのがまた辛い。文字は読めないけれど空気は読める敏い子なので、そこんとこをきちんと理解している、そしてもはや諦めているということが、恐ろしいまでの冷静さで語られている。

知的レベルというと「天涯客」を読んでいてすぐにわかるのは、登場キャラクター同士の会話レベルに明確に違いがあるなということ。
溫客行と周子舒の会話には古典典籍だの漢詩からの引用がもりもり入って来ていて、嫌味の応酬ですらレベルが高い。自家翻訳していて、ぐぬぬとなりつつ、このふたり、一体何を言っているのかそれはどこからきた言葉なのかと転がりつつ読み解いていました。(弊所が中華古典の造詣深くないと言うだけなのかもしれないけど)
でもって、会話の端々での互いの言葉への理解力がすごいんですよ。打てば響きまくっている。
翻訳しながら弊所はずっとこいつらの言ってる内容よくわからんと思ってきていました。ひょっとしてこの気持ちは、顧湘がずっと思ってきたことなんだろうかと考えてしまうと、もうだめだP大老師恐ろしい子

そしてそんな顧湘ちゃんは、曹蔚寧くんと夫婦になるんだけど、この青年も大概ひどい子で、古典をそらんじるのに、そのいずれもが付け焼刃的とんちんかんの連発過ぎてわけわかんないんですよ。彼の謳い上げているモノのトンデモ具合は主役ふたり(と、弟子の張成嶺少年もある程度わかっているっぽい)と、これを読む読者だけがそうと知れるくらいで、顧湘はそこんとこを解っていない。曹にぃさんは文学にも精通しているのよ!と賞賛までしちゃっている。
知的レベルが違うと溫客行をあきらめた少女は、自分が理解できるレベルの曹蔚寧くんとくっつくのでしたって本筋と違うところに恐ろしい地獄の窯の蓋が大開きしてるぞおおお
溫客行とは同じ道を行けないと嘆いたあとに、夫婦二人が馬の轡並べて騎行するという表現がサラッとカットインして来るのがもはや鳥肌ものである。

でもそんなとんちんかんな曹蔚寧くんだが、彼は清々しいくらいに彼女を愛しているし大事にしている。あたしってば、がさつだし、育ちも悪いしとぐずぐず試し行動を仕掛ける彼女に、じゃあ君は僕を攫っておくれよ、レッツ駆け落ちとか言っちゃうくらいに愛している。ここでポイント加算されるのは、「僕が君を」ではなく、何をするにも「君と僕」と言ってのけるくらいに顧湘ファーストな台詞回しである。ついでに彼の脳内で展開される、ラブラブ新婚さん妄想が微笑ましいくらいの多幸感に満ちておる。二人はいつまでも比翼連理で~とも言っちゃうんだよ。何と言う一途さだろう。
ドラマ見てたから、結末は何となく予感はしているけど、今はまだこの可愛い新婚さんにほのぼのしていたいところだよ。