明星は暁に白銀の月と巡り会う

⚠︎本誌2026年5月号までの内容(ネタバレ?)を含みます。
⚠︎習作です。高度な幻覚です。夢幻です。
5時、4時視点の心境を想像していました。

(※6時は本編でもサッと終わってしまったので入っていません、ごめんなさい🙇💦)

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タイトルに「金」と「銀」を入れたかったのですが、いい単語が思い浮かばずこんな感じになりました。
「白銀」は「しろがね」とも読むそうです。シラナカッタ。

 永い悪夢が、終わりを告げた。
 これから夜に向かうはずの時間なのに、終わりのない悪夢の夜が終わり、唐突に朝を迎えたようだった。
 未来から過去に介入していた、オレたちの身体が消えようとしている。終わったんだ。――夢の残滓のような、復讐だけが生きる道だった亡霊にすぎないオレたちは、いつか来るかもしれないと祈り続けた『その時』を迎えていた。同時に、「これで弟は助かる」と確信した。
 もう『オレ』は『オレ』を騙さなくていい。弟を見殺しにしなくてもいい。他の人間だって、たくさん傷つけなくてもいいんだ。繰り返すうちに、幾重にも重なり続けた憎しみも悲しみも苦しみも虚しさも、全部ここで途絶える。
 本当はきっとずっと待っていた。この瞬間を。100万分の1の未来を。
 それは多分先に死んでいったオレたちも、心のどこかで願っていたんじゃないか。巻戻士に復讐をして自分を殺すだけの永久機関には過去も未来もない。だけど、継ぎ目のない終わりと始まりの捻れた円環の中、どこかで、何かが、変わるかもしれない。無限をなぞる道の外で、あいつの強過ぎる信念は、実際に『何か』を変えてしまった。それが記憶にないあの少女なんだろう。
 あの日本当に助けたかった一人の弟のために、オレは何人の弟たちを見殺しにして、何人の巻戻士を殺して、何人のオレを殺したんだろう。そんなことをしても気晴らしになるわけでもないし、当たり前だが誰かが救われるわけでもない。どうせオレは復讐を遂げたあと死んでしまうのだから、それ以外の人生を閉ざされてしまっていたのだから、『何人』という数はあまりにも意味がなかった。
 それでも、罪過も後悔も記憶に残り続けている。だから、終わりのない、この生き地獄を繰り返し続けるしかなかった。
 もしかしたら、無駄と言って切り捨てた安い希望を、888年よりもっと前から願っていたかもしれない。消えてしまう前に目から零れた涙が、安堵の証拠だろう。

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 最期に「助けて」と縋った相手――浅葱色の髪をした巻戻士は、なぜかオレよりも泣いていて、クソだせぇはずなのに、なんだかとてもかっこよく見えた。
 何度でも何度でも諦めずに立ち上がる、オレもこんなかっこいいお兄ちゃんになりたかった。
 もう身体に力は入らない。きらきらと透けて、透明になる。何もかも諦めて自暴自棄になっちまった、かっこ悪いオレなんかこの世界に居なくていい。『クロックハンズになったキンスケが居た世界』は遂に終わる。散々足掻いたけど、最初からこれで良かったんだ。これでやっと、ギンを助けられる。

 ――今度はギンを守れるかっこいいお兄ちゃんになれよ。どっかの世界のオレ。

 暗闇の中、遠くで花火のような音がした。
 ああそうだ、今日はギンの誕生日だった。オレは結局、「おめでとう」って言ってやれなかった。「おめでとう」も「ごめん」も「ありがとう」も、もう声が届くことはない。もうすぐこの意識も消える。
 ――ギン、誕生日おめでとう。
 ――おまえが自由で幸せに生きてくれたら、やっぱりオレは嬉しいよ。

 間もなく意識は無限の静寂に溶けて、永い悪夢は幕を閉じた。