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おもち
2026-05-01 05:03:09
2017文字
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子犬みたいな恋人③〜留守番二日目編〜
②の続き。引き続き重症王です。
二日目の朝。
オレは目覚めた瞬間、天井を見上げたまま思った。
……
相棒がいない。
その事実に、心がズドンと更に重くなり絶望感に打ちひしがれる。
昨日はまだ良かった。なぜなら「見送った直後」だったからだ。だから、勢いで誤魔化せた。
…
だが今日は違う。
朝起きてもいない。
隣にもいない。
リビングにもいない。
「おはよう」と笑う声もない。
「
…………
無理だぜ」
再確認するように呟いて、相棒の枕へ顔を埋めた。
オレは普段は床に布団を敷いて寝ている。
昨日は少しでも相棒の温もりを感じたくて、ベッドで寝かせてもらった。
だが、匂いは少しばかり残っているものの、本物の温もりを熟知してしまっているオレには、到底満足できるものではなかった。
二日目にして、もはや限界だった。
今日は例のM &Wの取材があるため、準備をして外に出なければならない。
海馬の顔を見た瞬間殴ってしまいそうだが、オレたちの将来の為に堪えなければならないことが、非常に耐え難い。
「おーい、生きてっかー?」
聞き覚えのある声と同時に、どんどん、と遠慮なく扉が叩かれる。
返事をする気力もなく黙っていると、勝手に開いた。
「うわ、まだ寝てんのかよ!」
「寝てないぜ
……
」
「死にかけの声じゃねーか」
城之内君だった。
今日も相棒に頼まれて様子を見に来たらしい。
昨日、もはや玄関の扉を開けるのも億劫なので、鍵を渡したのだ。
セキュリティガバガバすぎんだろ
…
と怒られたが、城之内君だから渡したのだ、そこは流石にオレもわかっている。
これがもし海馬にだったら何がなんでも渡す訳がない。
「ほら、朝飯。一緒に食おうぜ」
「いらないぜ
…
」
「遊戯に言うぞ」
「
………
」
すごすごと布団から這い出し、ベッドから降りる。
我ながら情けないほど従順だった。
*
***
テーブルに並べられたパンとコーヒーを前に座るものの、どうにも食欲が湧かない。
城之内君はそんなオレを見て、露骨に呆れた顔をした。
「お前さあ
……
たったの二泊三日だろ?えーと
…
実質一日だけか?顔見ない日があるの」
「ほぼ三日だぜ。朝、日中、夜のどこかで相棒がいない日があるなら、それはもう一日会えていないのと同じだ」
「細けえよ」
オレだって好きでこうなっている訳じゃない。
相棒がいないと、何もかも味気ないだけだ。それはもう、噛みすぎたガムのように。
その時、机の上の携帯が震えた。
画面に表示された名前を見た瞬間、オレは椅子を蹴って立ち上がっていた。
「相棒!!」
「うわっ、びっくりしたっっっ」
驚かせんなよ〜
…
と胸を押さえながら言う城之内君は置いといて、直ぐ様通話ボタンを押し、震える手で耳に当てる。
『もしもし? もう一人のボク?』
「相棒
……
!」
たったそれだけで、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
声だ。
相棒の声だ。
昨日からずっと足りなかったものが、一気に満たされていく。
満たされなくて苦しんでいた体が、急激に回復していくのを感じる。
部屋中に相棒の声を響かせたくて、すかさず大音量のスピーカーにする。
一瞬城之内君が顔をしかめたが、見ないフリをした。
『ふふ、大袈裟だなあ。元気にしてた?』
「してないぜ」
『即答なんだ
……
』
「全然してない。寂しい。今すぐ帰って来てくれ」
『まだ二日目だよ!?明日帰るよ?』
「知ってる」
『知ってて言ってるんだ
……
』
電話越しに困ったような笑い声が聞こえる。
あぁ、本物の相棒だ。
それすら愛おしい。
「相棒は平気なのか?」
少し黙ったあと、相棒は小さく答えた。
『
……
平気じゃないよ』
「!」
『昨日の夜、君がいなくて寝付き悪かったし
……
朝も変だったし
……
』
「相棒
……
」
『でも、もう少しで帰るから。我慢して』
「
……
頑張るぜ」
しぶしぶとそういうと、相棒はまたくすっと笑った。
『うん。いい子』
「
…………
」
『もう一人のボク?』
「今、ちょっと無理だぜ。ニヤけちまう」
『えっ』
「いい子って言われた」
『そ、そこ!?』
相棒が驚いた声をあげたのと、同時に。
オレたちの会話を横で聴きながら肩を震わせていた城之内君が、ついに腹を抱えて笑い始めた。
「お前ら電話越しでもバカップルだな!!」
『!?え!?城之内君いるの!?』
「最初からいたぜ」
『え、ぇ
……
やだもう恥ずかしい
……
!』
顔を真っ赤にしているであろう相棒を思い浮かべ、オレはようやく少し笑えた。
……
後一日。
後一日待てば、それだけで、帰ってくる。
「相棒」
『なあに?』
「帰ってきたら、離さないぜ」
ぐっと相棒が息を呑む音が聞こえた。
少しの沈黙の後。
『
……
ボクも、離れたくないかも』
城之内君が「うわぁ
……
」と天を仰いだ。
******
次回、やっと帰ってきます。
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