おもち
2026-05-01 02:25:14
1592文字
Public
 

子犬みたいな恋人②〜留守番編〜

①の続き。重症王です



バタン、と玄関の扉が閉まった。

やけに大きく響いたその音を最後に、先程まで賑やかだった家の中は、しんと静まり返る。

さっきまで相棒がいた場所。
さっきまで相棒の声がしていた場所。
さっきまで相棒の匂いがした場所。

…………

……無理だぜ。

たった数秒でそう結論付けたオレは、ふらふらとした足取りで寝室へ向かった。

扉を開けるなり、普段相棒が寝るベッドへ倒れ込み、枕を力強くぎゅうっと抱き締める。
ふわりと残っていた相棒の匂いに、先程まで苦しかった呼吸が少しだけ楽になった。

「相棒……

調整の付かない仕事なんだから仕方ないと、自分でも分かっている。
将来相棒を養うつもりでいるから(※遊戯はそんなことは知らない)、不自由しないよう、今のうちから土台を作っておくことが大事だ。
これはオレと相棒の幸せな将来を繋ぐ、極めて重要な布石なんだ。

だが、それとこれとは話が別だった。

寂しいものは寂しい。
相棒がいないものはいない。

……三日も、長すぎるぜ……

枕へ顔を埋めながら呻いていると、不意に玄関のチャイムが鳴り響いた。
家主は居ないし、結局のところオレは居候の身。
居留守を決め込もうと暫く無視していたが、どうやらオレがいることを知っているかのようだ。
何度も鳴らされるチャイムの音に不快感を覚え、よろよろと起き上がり、確認もせず玄関の扉を開けた。

「うわっ、あぶね!ってやっぱいるじゃねーか!」
……城之内君か」
「何だよその死んだ声」

相棒に頼まれて様子を見に来たらしい城之内君は、オレを見るなり盛大に顔をしかめた。

「お前……まさか遊戯が出てった瞬間からそんなグロッキーな顔になってんのか?」
「違う」
「じゃあ違わねーな」
…………

図星だったので黙るしかない。
城之内君は呆れたようにため息を吐くと、持ってきたコンビニ袋をずいっと差し出してきた。

「ほら。昼飯。遊戯から、お前絶対食わねーから見張ってくれって言われた」
「相棒が……?」
「おう」

遊戯から。
その一言だけで少し元気が出たオレは、我ながら単純だと思う。

「あとこれ」

城之内君が差し出してきた携帯の画面には、相棒からのメッセージが映っていた。

『これもう1人のボクに見せてくれる?↓
ちゃんとご飯食べてね。着いたらまた連絡するから』

…………
「何で泣きそうなんだよ」
「泣いてないぜ」
「声震えてんぞ」

オレは携帯を受け取り、その短い文章を何度も読み返した。

たった一行。
なのに、さっきまで空っぽだった胸の中が少しずつ満たされていく。

「相棒……優しいぜ……
「重症だなお前

城之内君の言葉は無視して、オレはすぐに自分の携帯を取り出し返信を打ち込む。

『城之内くんに送ったメッセージ見た。
相棒もちゃんと食えよ。無理するなよ。あと早く帰って来てくれ』
「最後本音出てるぞ」
「ほっといてくれ」

送信した直後、ふうと一息つくとブブっと直ぐに携帯が震えた。
そして返ってきた文面を見た瞬間、オレは固まった。

『まだ家出て十分しか経ってないよ笑
でもボクももう会いたいかも 笑』

…………
「うわ、遊戯も大概だな

携帯を覗き込んでる城之内くんの言葉は耳に入らない。
ただ一文だけが、オレの脳内をこだましている。

ボクも会いたい。
会いたい。
会いたい

「城之内君」
「何だよ」
「帰ってくれ」
「何でだよ!!」

相棒が会いたいらしいから会いに行かなきゃいけない、と言うと、マジでやめとけと城之内君に釘を刺された。


――この状態で、後ほぼ三日。
果たして自分は耐えられるのか、面倒を任されてしまった城之内は、一種の不安を覚えた。



***


城之内君本当すまん。
もう少し続きます。