笹月/ササヅキ
2026-04-29 18:51:39
894文字
Public 笹月球体報告書
 

機械仕掛けの自動人形の話

ティムとジェフが何故生まれたかの話。
別に暗くはないが特別楽しい内容でもない。

何処かにある世界の中で、とある計画が秘密裏に進められていました。
それは、自分の意思を持って独立して動く特別な機械仕掛けの人形の制作でした。
幾多の失敗の上に、ようやくそれらしい形になった試作品がひとつ。
ジェフと名付けられたその自動人形は、説明の理解が早く命令を忠実にこなし、それはそれは「知性」に満ち溢れていました。
しかし、彼には致命的な欠点がありました。
判断力こそは素晴らしいが感情への理解が乏しく、すなわち彼には「心」がありませんでした。

ある時、彼は自身を犠牲にして人形の作り手である主人を守ったことがありました。
その影響で彼の体は大きく壊れてしまいましたが、彼が身を挺してくれたお蔭で主人は無傷でした。
しかし主人はこのことに深く心を痛め、悲しみました。
そして二度とそのような行為をしないことと、そして自身の体を大切にするようにと彼に命じました。
彼はその命令に了承こそはしましたが、本当の意味は理解していないでしょう。
このことを忘れることがないようにと、主人は彼の損傷した片耳はあえて直さずにそのまま残すことにしました。

それから幾らかの月日が過ぎて、新たな試作品が出来上がりました。
ティムと名付けられた今回の人形は、前回の彼とは打って変わってとても感情表現が豊かでした。
その時々で表情がくるくると変化する姿は、本当に人形なのかと疑いたくなるほどでした。
しかし、そんな少年にもまた欠点がありました。
今回のは逆に、感情があってもそれらを理解するための「知性」がなかったのです。

少年は目についたもの興味のあるもの全てに、あれは何だこれは何かと主人に問いかけました。
そんな少年の相手をし続けることに気が滅入ってしまった作り手の主人は考えます。
前回の彼に、自分の代わりに今回の少年の面倒を見るよう命じることにしました。
彼はそのことに了承し、それから二人は共に行動するようになりました。

この計画の最終的な目的は、自我と意志がある完璧な生きた自動人形を生み出すこと。
そして、かつてに亡くなった娘の姿を機械人形として再現することなのでした⋯⋯。