しゃどやま
2026-04-29 18:46:14
14975文字
Public
 

【特集】菓子盆選手権でございます!【オールキャラ】

オモコロの選手権企画をモチーフにしたオールキャラ小説ですが、知らなくてもぜんぜん読めます。
菓子盆はあれよ、お婆ちゃんちにある木のくりぬいたようなお椀です。エリーゼとか入ってるやつ。

 仮面ライダーの皆様へ
 
 休憩室で食べるのにふさわしい菓子盆のコンテストを行います。
 別紙にレギュレーションを記載いたしました。
 作成に使用した菓子代はこちらで負担いたします。
 奮ってご参加ください。参加賞もございます。

 藍上レオン


 仮面カフェ・カムフラージュの地下にある広間。レオンは集まった仮面ライダーたちを見回した。遅刻者もいるが、全員やる気を顔に漲らせている。
「本日お集まりいただいたのはほかでもありません、私のご主人様であるノア様に、休憩室で食べていただく菓子盆を一新したいのです」
 レオンは大げさとも言える振る舞いでノアを示す。テーブルの前に座ったノアは少し萎縮しながら、軽く頭を下げた。
「ちょっと気分転換がしたいなって言っただけで、ここまで大掛かりにしなくてもいいんだけど……
「いいえ! 休憩時間は大切なリフレッシュタイム! 心に憂いがあってはなりません! だからこそ私が考えたかったのですが……菓子盆スランプになってしまいまして」
 ルーイがはあ、と呆れた声をあげる。
「何だそりゃ」
「菓子盆イップスになってしまいまして」
「言い方の問題じゃなくない?」
 Qが首をかしげる。
「思うように菓子盆が作れないのです! ここは皆様の自由な発想の菓子盆を見せていただいて、良い刺激を得たいと思いました」
「そういうことなら、力になりたいけど……おれと才悟とか、家で菓子盆使わないぜ?」
 陽真が手を挙げて質問する。レオンはうんうんと頷いた。
「もちろん、普段使わない方がいらっしゃるとは思います。しかし、だからこそ斬新なアプローチができると思っております」
 レオンは手袋をした指先を三本立てる。
「レギュレーションは事前にお伝えした通りの三つでございます。菓子盆を使う。不衛生なもの、有害なものは乗せない。激辛や激苦などイタズラをしない」
「Q対策がされてるね」
 静流がへらりと笑い、Qは頬をふくらませる。レオンは仕切り直すように声を張り上げた。
「さあ! 我こそはと言う方から発表してください!」
「最初は俺だ!」
 狂介が名乗りを上げる。周囲がざわついた。
「あのマッドガイが……菓子盆を……?」
 慈玄が思わずつぶやく。それ程までにあの無骨な住処と菓子盆のイメージは遠かった。準備するためのテーブルで、背を向けてガサガサと狂介が菓子盆を構築する。勢いよくノアに振り返った。
「俺が持ってきた菓子盆はこれだァ!」

 ひとくちカルパス(一箱)
 ビッグカルパス(一本)

「肉がいいだろ! このデッケーカルパス見ろよ!」
 山盛りにされた一口サイズのカルパスと、そのてっぺんに突き立った巨大なカルパス。狂介がノアの前に勢いよく置いたその皿に、一同は「ああ……」と安堵の声を漏らす。
「これは……なんとも、荒鬼様らしいといいますか……
 レオンが恐る恐る巨大なカルパスを引き抜く。カルパスの山には、カルパス以外のものは入っていなかった。包装もそのままで、工夫は特に見受けられない。
「肉が最強だって言ってたら兄貴にそれはお菓子じゃないんじゃないかって言われてよ。駄菓子屋行ったら肉があったからそれにしたぜ。味が濃くて旨い!」
 ニコニコと満面の笑顔で鼻をこする。ノアは小さなカルパスを手に取り、包装を剥いて口に運ぶ。
「あ。美味しいね。飲み物が欲しくなる感じ」
「だろ? 優勝は貰ったなァ!」
 ノアの言葉に狂介はふんぞり返る。呆れて為士が眉間に手を当てた。
「くすくす……犬の餌じゃないんだから。ボクが正解を見せてあげる!」
 Qが言いながら、紙袋を抱えてノアの前に出る。狂介が「なんだァ?」と眉を持ち上げた。
「Q様はよく虹色カフェなど様々な場所でオヤツを求めているイメージがありますね! これは期待できそうです」
 レオンがうきうきとノアに目線を送る。ノアも頷いた。Qは紙袋から色とりどりのグミを取り出し、菓子盆を飾り付けていく。完成した遊園地のような盆を、ノアの前に置いた。
「さ、これがボクの菓子盆! 限定品もあるんだから感謝してよ?」

 惑星グミ(火星・土星)
 レインボーロンググミ
 ベアちゃんグミ
 サプライズグミ

 菓子盆の中には、ところ狭しとグミが配置されている。レインボーロンググミが菓子盆全体をリボンのようにまとめていた。惑星グミは柔らかすぎるからかパッケージのまま、真ん中にちょこんと置いてある。ベアちゃんグミは惑星グミを囲むように並んでいた。中身がわからないサプライズグミは、ギャンブルが楽しめるようにか複数コロコロと転がしてあった。
「すごく可愛いね。色んな味があって楽しそう」
 ノアがそう言いながら指を伸ばすと、Qは慌てて止める。
「あっ、すぐ崩さないでよ! 撮影してから食べてね!」
「そういうものなんだ……
 撮影するノアの横でレオンはうーんと首を捻る。Qの菓子盆は狂介の菓子盆とは違うが、偏りがすごい。
「グミだけというのは考えものですね……甘いものと塩味のもの、そのメリハリで思わず手が進んでしまう、というのが菓子盆の美だと思いますので。もう少し塩味のスナックなども必要かと思います」
「つまんなーい。お約束から外れたいからボクたちを呼んだんじゃないの?」
 う、とレオンは言葉に詰まる。Qは狂介に向かって声をかけた。
「ねえ、菓子盆見せたし遊びに行かない? 他の人のやつに興味ないし。今ならもっと美味しいカルパス紹介してあげるよ。ボクに勝ったらね」
「あ? 前そう言ってすげえ辛いやつ食わせたろ!」
「今度はどうかなー?」
 けらけらと笑いながらQが駆けていく。狂介はちらりと松之助の方を見て、Qを追っていった。

 松之助は頬を掻く。困惑した様子でビニール袋を下げていた。
「えーっと、俺も自信ないから早めに出していいか? 甘いものは苦手でさ」
「どうぞ、よろしくお願いいたします」
 頷いた松之助は、小さな菓子盆にかがみ込んで菓子を配置する。丁寧に頑張っている姿は微笑ましいものだった。完成した盆を、おずおずとノアの前に差し出す。
「こんな感じ、なんだけど……

海苔煎餅
豆おかき
サラダせんべい
ミニ歌舞伎揚げ

 茶色い。第一印象は煎餅だけだったが、丁寧に並べられた菓子盆には安定感があった。かつ、海苔煎餅のいかにも塩味の強そうな香ばしい茶色と、サラダせんべいの軽そうな焼色は違った味わいを想像させ、味のメリハリを感じさせる。大きな煎餅から小さな歌舞伎揚げまで、サイズのバリエーションもいい。レオンは顎に手を添えて覗き込む。
「色々オススメの煎餅は入れてみた。この豆おかき、ベテランの婆ちゃんが焼いているんだ。あと、歌舞伎揚げは甘じょっぱいからいいんじゃないかな」
「プレゼンもすばらしい。これは十分に水準以上ですね」
「ほんとだ、豆おかきがおいしいです。サクサクでお茶にあいそう」
 ノアは頬をふくらませる。松之助も嬉しげに頷いた。

「だが、茶色いばかりで美が足りないな……
 物憂げな声が、平和な空間を引き裂く。為士がツカツカと歩み寄ってきた。大きなトランクを持っている。断りをいれる間もなく、それを「組み立て」始める。ノアとレオンは目を丸くし、松之助は「あちゃー……」と肩を落とした。
「見るがいい! 菓子を楽しむ俺をテーマにした菓子盆を!」

三段アフタヌーンティースタンド
手描きマカロン
プチケーキ
サンドイッチ
ジュレ

 菓子盆の上に、絶妙なバランスでアフタヌーンティースタンドが屹立している。はまった三枚の皿には、為士の顔が描かれたマカロン、黒いクリームと赤いゼリーのケーキ、レースのようなワックスペーパーで包まれたサンドイッチ、小さなカップに入ったベリーのジュレが乗っている。マカロンに描かれた顔はどれも新作で、表情が違った。

「さあ! 俺の美と背徳を、お前たちはどう評価する!」

「破門です」
「食べにくいかな……

 破門だった。為士は大げさに崩れ落ちた。とはいえ得るものはあったらしく、すぐ立ち上がる。アフタヌーンティースタンドを回収し、会場の片隅のテーブルでティータイムをはじめた。スタッフに紅茶を要求している。
……Bクラスの流れが来ているようなので、僕もいいですか?」
 雨竜が小さく手を挙げる。レオンはもちろんと頷いて、テーブルへ促した。雨竜はあらかじめ完成形をイメージしていたのか、手早く菓子盆に並べてノアの前に披露する。

若鮎
旬彩 てまり(おかき詰め合わせ)
抹茶こんぺいとう

 小さな菓子盆に、魚を模した焼き菓子が並んでいる。カステラのような生地で鮎を作った若鮎は伝統的な菓子だ。有名メーカーの個包装のおかきを、こんぺいとうと合盛りしている。こぶりなものが手前に配置され、手を伸ばしやすい。
「若鮎とおかきは伝統ある菓子処のものです。おもてなしにふさわしい贈答品を用意しました。あと……抹茶こんぺいとうは、以前いただいてとても美味しかったので、ぜひ食べていただきたいです」
「自分の美味しかったものを共有する、それもまた菓子盆の美ですね。手が汚れないよう個包装のものが多いのも、高塔雨竜様らしいです。少し上品すぎる気もしますが……
「こんぺいとう凄く美味しいよ。風味がいいね」
 ノアは抹茶こんぺいとうを楽しむ。雨竜は嬉しげに微笑むと、表情を引き締めて頭を下げた。

 雨竜が安心した様子で戴天の元へ戻っていくのを見た陽真は、手を大きく振ってアピールする。リュックサックからビニール袋を取り出した。
「はいはーい! おれも作ってきたよ!」
「伊織様、どうぞ」
 ふんふんと鼻歌混じりに、陽真は菓子盆に菓子を詰め込んでいく。
「じゃーん!」
 角度にこだわる試行錯誤のあと、上機嫌にノアの前へ差し出した。

 チョコレートパイ
 板チョコクッキー
 バウムクーヘン
 コンソメポテチ

 チョコレートでコーティングされたパイが、菓子盆の奥に並べられている。トランプのように並べられた板チョコクッキーは、帆船の図を美しく見せつけていた。バウムクーヘンは虹のように半分に切られたもので、コンソメのポテトチップとクッキーの間を仕切っている。並びは美しいが、ボリュームの大きい菓子盆だ。レオンは難しそうに眉をひそめる。
「これは中々ヘビー級ですね」
「こだわりがあってさ。実はこれ、牛乳に合うんだよ」
「牛乳?」
 ノアがオウム返しに問いかける。陽真は嬉しげに頷くと、バウムクーヘンを指さした。
「バウムクーヘンで喉が詰まった時に冷たい牛乳を飲むとさらに美味しいんだ! チョコパイもクッキーも、牛乳と相性抜群!」
 ビッと親指を立てて爽やかに笑う。レオンは若者の食欲に慄きながら頷いた。
「な、なるほど……
「コンソメって合うかな? 美味しいけど」
 ノアが不思議そうに言いながらポテトチップを口に運ぶ。
「え? 牛乳と一緒に食べるとシチューみたいな味になって美味しいぜ?」
「へえ、今度やってみるよ」
 陽真はノアの返事に笑顔を見せる。ジャスティスライドのもとに戻ると、才悟とハイタッチをした。

 続いて、才悟が前に出る。ノアを直立不動で見つめた。
「オレの菓子盆も見て欲しい」
「うん。よろしく」
 才悟は頷くと、菓子盆の前に立つ。ポケットから、小さな箱を取り出した。手のひらサイズの、プラスチックでできた三つの箱。才悟はそれをざらざらと無造作に菓子盆に流し込むと、精密動作の指先で並び替え始める。
「できた」
 才悟はノアの前に菓子盆を押し出す。菓子盆の中には、何重にも描かれた美しい円があった。

ラムネ(ブドウ糖)
ラムネ(ミント)
ラムネ(グレープ)

 ノアは困惑する。白い錠剤が並んでいるようにしか見えない。三種類の箱があったのは見えたが、区別はできない。
……えーっと?」
「菓子を選び、美しい盛り付けをするといいと、伊織陽真に教わった」
「それで……ラムネを並べたと」
 レオンが頭に指先を当てる。間違ってはいない。定義と、経験の問題だ。どんな菓子盆がワクワクするか、ということを積み重ねる必要がある。ノアはひとまず食べてみようと指先を伸ばした。
「うん……どれがミント?」
「一番小さい粒がミントだ」
「わかんないや……
 ノアはひとまず小さいと思った粒を口に運ぶ。グレープ味だった。

 不思議そうな顔をして戻った才悟を、ドンマイと陽真がハイタッチで迎える。慈玄が照れくさそうに咳払いをして、テーブルに近寄った。無言で背中を見せ、手に持っていたエコバッグからざっと盛り付ける。品数は少なめだったらしい。
「深水は張り切りすぎて遅刻だ。俺の菓子盆は……これだ」
 不慣れな様子で、ぐい、とノアの前に押し付けるように差し出した。

堅焼き煎餅
一口えびせん
いちごチョコプレッツェル

 ひび割れるほど焼いてある堅焼き煎餅と、食べだしたらとまらないタイプのえびせんが置いてある。食べすぎないようにか、えびせんの量は控えめで、入っていた袋には厳重に輪ゴムがかけてあった。スティックタイプのプレッツェルは、いちごのチョコレートがかけられている。パステルピンクが盆に華やかさを添えていた。
「無骨ながら大小のバランスはいいですね。このいちごチョコは……?」
 レオンが意外そうにいちごチョコプレッツェルを指さす。慈玄はふいと顔を背け、ぶっきらぼうに言った。ピアスのついた耳が赤く染まっている。
……甘いものがあったほうがいいだろ」
「慈玄は最近、妹のこと思い出してさ! こういうの好きだったかなーとか考えちゃうんだってさ」
「うるせぇ、いいだろうが!」
「いい話だなーっていってんの」
 陽真が声をあげて慈玄の話を補足する。陽真の輝く目からはからかうという気持ちは感じられず、慈玄はやり場無く唇を噛む。ノアは微笑み、いちごプレッツェルを手に取った。
「思い出と思いやりなんだね。美味しいよ」
 噛むとミルクの甘さといちごの酸味が感じられる。
……おう」
 慈玄は頷いた。

 駆がうんうんと頷きながら前に出る。フラリオも後ろについてきた。
「いい話じゃねえか。菓子なんて子どもの大好きなもんだしな」
「もんだしな! オレも好きだけど!」
「次は俺でいいかい?」
「どうぞ、久城様」
 あんがとよ、と言いながら菓子盆に菓子を並べ始める。フラリオは横から覗き込んで口を出していた。試行錯誤した結果、賑やかな菓子盆が完成する。
「じゃ、俺の作ってきた菓子盆はこれだ!」

 餅祭り(一口あられ)
 ココアシガー
 うまうま棒
 棒ゼリー
 ポテトスライス
 チョコスティック

 品数が多い。どれも賑やかなパッケージに入っていて、子供向けの駄菓子だと察せられる。タバコの形をしたココアラムネや、ねじねじとしたデザインのゼリーなど、遊び心のあるものが多い。下町の空気がそのまま感じられる、楽しげな菓子盆だった。さりげなく塩味と甘さのバランスも考えられている。
「食いやすい一口サイズのやつとかで準備したぜ。予算は向こう持ちだしな!」
「駄菓子を中心としていていいですね。あまり機会がないので嬉しいです」
「ふむ……チョコ系とスナック系も王道ですが……見たことのないメーカーですね」
 ノアは嬉しげに手を合わせて、どれから手をつけようか悩む。うまうま棒に手が伸びた。しかしレオンは疑うように目を細めている。駆は肩をすくめた。
「なんだよ、怪しいメーカーじゃないぜ?」
「怪しいメーカーじゃないぜ! このチョコレートだってちゃんと馴染みのパチ屋のだからな!」
「こら、フラリオ!」
「久城様?」
 レオンがじっとりとした視線を向ける。駆は手を振って取り繕った後、開き直って胸を張った。
……バレちゃあしょうがねえ! ゲームも出来てお菓子も美味しい! ウィン・ウィンの関係ってわけよ」
 ノアはうまうま棒を飲み下して、へぇ、と驚きの声をあげる。
「パチンコってチョコレート貰えるんだ」
「ご主人様の教育によろしくありません!」
 レオンが叫び、駆は笑って誤魔化した。
 なお、後の調査によりうまうま棒も大袋を買って残りを私物化していたことが判明し、レオンに呆れられる。

 フラリオは拳を突き上げ、朗々と声をあげた。
「駆の無念はオレが晴らすぜ! 復讐するは我にあり、だ!」
「次の演目が古典らしくてよ」
 ああ、と周囲は納得の空気に変化する。フラリオのミーハーは今に始まったことではない。巾着袋に手を入れて菓子を取り出し、お菓子のパッケージをぱりぱりと開け始める。素早く盛り付けると、貴族のような仕草で差し出した。
「細工は流々、仕上げを御覧じろ!」

 ガジェモン びっくりエッグチョコ(ちびフィギュア入り) 五個

 チョコレートの卵が五個、寄り添うように菓子盆に置かれている。駆が手刀をフラリオの頭に軽く叩き込んだ。
「鳥の巣じゃねーか! いいかげんにしろ!」
「どうも、ありがとうございましたー!」
 フラリオは大げさにダメージを受けたあとに深々と頭を下げる。静かに見ていた戴天は眉をひそめた。
「無為徒食……漫才を見せに来たのですか?」
 レオンが戴天に頭を下げる。ノアはチョコレートの卵を割ると、中に入っていたカプセルを取り出す。カプセルの中には、トゲトゲした人形が入っていた。
「あ、中に人形が入ってるんだ。ドラゴンかな?」
「おっ! 大当たり!」
 フラリオは拍手をしてノアの幸運を称える。まったりとした空気だった。

 次は誰か、とレオンが周囲を見回す。目があった静流が、ビニール袋を軽く持ち上げた。
「じゃあ次はスラムデイズのお兄さんたちかな? 張り切っちゃうよー」
 言いながら準備を始める。並べながらも鼻歌で創作メロディを歌っていて、上機嫌さが伝わった。ビニール袋の中に複数の洒落た個包装の菓子が入っている。
「はい、どーぞ」
 静流はノアの前に菓子盆をとん、と置いた。

堅焼きスナック(ベーコン&ペッパー)
アーモンドとピスタチオ
ひとくちチーズ
チョコテリーヌ

 レオンがなるほど、と頷く。判断は難しいようで、角度を変えて何度も見つめる。堅焼きスナックはコンビニで売っている新製品で、ビールにぴったりと宣伝していた。アーモンドとピスタチオは酒屋で購入したもののようで、塩気にこだわりがあるようだ。ひとくちチーズはレーズンの入った上等そうなもの。チョコレートのテリーヌには、小さなピックが添えられていた。ウイスキーに合わせるのだろう、いい香りがしている。
「これはお酒のおつまみとお見受けしました」
 休憩時間に食べるというテーマからは反している。ノアはレオンの苦悶を気にせず、チョコレートテリーヌのピックをつまんでマジマジと見る。小さく一口を切り取った。
「このテリーヌ、新しくできたお店のところですよね! 気になってたんです」
「えへへ。こういうの気付いてくれるのサイコーだよ」
 静流がにっこりと笑う。ノアが嬉しそうに食べているのを見守っていた。

 静流がルーイのもとに戻ると、周囲の視線が自然とルーイに向かう。嫌そうに、量販店の派手な黄色のビニール袋を手に取った。
「俺かよ……だりー」
 渋々といった仕草で、テーブルにスナック菓子を広げ始める。割り箸を使ってざらざらと菓子盆にスナックを開けた。
「文句は言わせねーぞ」
 渡すと、むくれた表情でノアを睨みつける。レオンが心配そうに菓子盆を覗き込んだ。

 辛スナック
 ガジェモンウエハース(ゲームで使えるコード付き)
 ポテトチップ(海苔塩)
 じゃがり棒(期間限定バター醤油味)

 赤い辛スナックが幅を取っている。一口サイズで食べやすそうだが、唐辛子の粉が浮いているのは好みが別れそうだ。剥いてあるガジェモンウエハースはピーナッツ入りのチョコレートウエハースで、この盆における甘味を担っている。ポテトチップの海苔塩味の隣に割り箸が刺さっていた。マッチ棒ほどに短いスナックじゃがり棒は、蓋だけ開けられてカップごと菓子盆に入っている。
 レオンが「ふむ」と顎に指を添える。塩味は多いが、小粒の製品が多く手は出しやすそうだ。
「これは中々に偏った……しかしスナックは指先でつまみやすいという利点はありますね」
「手でいくなよ。箸使え」
「たった今利点がなくなりました」
 ノアはガジェモンウエハースを手に取り、かじる。ココア感のあるクリームとサクサクした軽い食感が広がった。
「ウエハースっておいしいね。意外といいかも」
「おー。余ってるから取りに来い」
 ルーイは気怠げに首を回す。ノアには意味がわからなかった。

 秘密のエレベーターが開いた。外に狂介と出ていたQが帰ってきた――のではなく、ランスに入れ替わっている。走って来たのか、額の汗を拭った。
「やれやれ……菓子盆選手権と聞いて、急いだんだけど。みんな、プレゼンにやる気が足りないよ。もっときちんと理念をアピールすべきだ」
 手には平たい、大きなバッグを持っている。トートバッグを横にしたような不思議な形状のバッグだった。ルーイの横を抜け、テーブルにバッグを置く。テキパキと準備をはじめた。
「菓子盆について調べたかい? 茶の間で、家族や来客と利用するものだ。日本では昔から囲炉裏や火鉢を囲んで、会話と温かさを楽しんだ。暖炉のようなものだね」
 レオンは頷く。ノアは不思議そうに首を傾げた。家族での団らんというものにあまり縁がない。時代劇の光景を想像する。
 ランスはトン、とボトルを置く。ノアに菓子盆を差し出した。
「この菓子盆を囲むときも、そんな温かさを思い出してほしい」

四種のチーズピザ(はちみつボトル付き)

「ちょうどアジトにストックがあって助かったよ」
「破門です」
 菓子盆の上に、ピザが乗っている。家庭で焼いたからなのか、こだわりがあるのか、生地はもっちりと厚めで、その分具材も多く盛られている。チーズは四種類あり、ゴルゴンゾーラも入っている本格派だ。熱々のピザでとろけたチーズが瑞々しく湯気を立てている。
 ノアは一切れを手に取る。少しだけはちみつをかけ、ハフハフと口に運んだ。
「モチモチ系で美味しい」
「喜んで貰えてよかったよ」
「破門ではありますが、ご主人様が喜ばれたならよかったです」
 ランスは得意げにスラムデイズの元へ戻っていく。ルーイは「何してんだお前」と呆れていた。

「じゃあ次僕ねー! それ!」
 颯が飛び跳ねるように手を挙げる。我慢していたらしく、小走りでテーブルに飛びついた。大きな紙袋から、大きな箱を取り出す。ざらざらと流し入れるように菓子盆を準備し、両手でノアに差し出した。
「はい! これが僕のオリジナル菓子盆ー!」

レインボーシリアル
ガム(グレープ)

 パステルカラーのシリアルが、菓子盆に敷き詰められている。一粒一粒が緑のクローバーやピンクのハートになっており、和風の菓子盆の中で賑やかな光景だ。ガムは丸く大きな一口大のもので、ノアも調査している時にスーパーで見かけたことがある、ガシャポンのような機械から出てくるガムだ。
 颯は笑顔でシリアルを指さして説明する。ウィズダムシンクスがその様子を見て近づいてきた。
「このシリアル、牛乳を注がなくてもおいしいんだよ。時間ない日はご飯にもなるし、一石二鳥! 今ハマってるんだ」
「栄養バランスはどうなっている? きちんと食事は摂らなければ働けないぞ」
「でたよ、宗雲の過保護が」
 浄が肩を竦めてからかう。レオンはシリアルを菓子として認めていいのか悩みながら、気を使うように言った。
「うーん……彩りはありますが、いかんせんシリアルばかりは飽きるかと……
「美味しいけど、こんなにはいいかな……
 ノアにまで言われた颯は電流を受けたかのように身体をすくませる。目を見開いて、驚いたように言った。
「確かに! 僕もそろそろ飽きるかも……
「今かよ」
 ルーイがぼそっと呟く。食べていないタイミングで飽きるのは奇妙な光景だった。

 皇紀が次に出したいのか、無言でテーブルに食材を広げ始める。アウトドアでも使うバックパックから、瓶詰めが取り出された。菓子盆に黙々と並べ、ノアへ振り返る。
……食え」

 蛇をカリカリにしたもの
 猪肉のジャーキー
 山ぶどう

 蛇をカリカリにしたものとしか言えないものが、菓子盆からはみ出していた。乾燥後、おそらくオーブンで焼かれた蛇は、味をつけられ胡麻が振りかけられている。隣は猪肉のジャーキーで、脂がしっかり感じられそうだ。同じ山で採られたのか、山ぶどうが枝ごと添えられている。

「皇紀様の腕は信頼しておりますが……彩りが無さすぎます! 熊の恩返しのようです!」
 レオンが涙を拭う。皇紀は気にしていない様子で、ノアに食べるよう視線で促した。ノアは蛇を一切れ手に取り、口に放り込む。カシュッと軽い食感のあと、旨味が広がった。
「蛇スナック美味しい! いつもありがとうございます」
 皇紀は満足そうに背を向けて、宗雲の方へ戻っていく。浄が呆れたように息を吐いた。
「なってないね、菓子は文明なんだからさ。野蛮だよ」
 浄の言葉に皇紀が苛立ちを顕にする。忌々しげに吐き捨てた。
……地獄に落ちろ」
「え? 皇紀オモコロ観てる?」
 静流が驚いて皇紀の顔を見る。平然としていて意図はわからなかった。浄がケーキ屋の箱と共に前に進み、ノアへウィンクをする。
「それじゃ、俺のフルコースを見てもらおうか」
「偶然? 気にしてるの俺だけ?」
 静流がルーイの腕を引っ張るが「知らねーよ」と返されて終わっていた。

 浄は丁寧に、こだわりぬいて配置する。箱を開けた瞬間から甘い香りが漂っていて、松之助は「うーん……」と腕を組んでいた。浄は気にせず、正面を向くように調節してノアに菓子盆を差し出す。
「さあ、これだ」

 カップケーキ
 ガトーショコラ
 半熟チーズケーキ
 ナポレオンパイ
 チョコレートといちごのラスク

「破門です」
「レオン、そこまでではないよ!」
 ノアがレオンの判断を止める。確かに、狂っている。たっぷりクリームの乗ったカップケーキと、粉糖のかかったガトーショコラ。半熟チーズケーキはとろりととろけそうな柔らかさだ。ナポレオンパイはいちごも艷やかで、パイ生地からはバターの香りが漂っている。チョコレートのかかったラスクといちごチョコレートのかかったラスクが、孔雀の羽のように余ったスペースを埋めていた。
「甘いものしかありませんし、手で食べられるものが少なすぎます!」
「はは、チーズケーキは塩味もするよ」
 浄はレオンの叫びを笑って受け流す。レオンは拳を握って怒りを顕にする。
「微々たるものです! ご主人様を不健康にしたくありません!」
「これぐらいは人生の楽しみさ。そうだろう?」
 浄はノアに話を振る。ノアはいちごチョコレートラスクをかじると頷いた。
「さすが美味しいお店を知ってるんですね」
 ノアの言葉に頷き、浄はゆったりと帰っていった。

 戴天がちらりと宗雲を見る。宗雲は腕を組んだまま動こうとしなかった。
「次は宗雲さんですか?」
 宗雲は小さく首を横に振る、
……いや。俺は最後に出させてもらおう」
「深謀遠慮 ……いいでしょう。奇策なく正面から叩きのめして差し上げます」
 戴天は仮面のような笑顔で前に出る。
「次は私の番でよろしいですね?」
「ええ、かしこまりました」
 レオンが怯むこと無く微笑み返し、テーブルへ促した。戴天は風呂敷包みから小さな箱を取り出す。懐紙を二つ折りにし、その上に菓子を並べた。
「どうぞ、お受け取りください」
 にっこりと微笑みながら、戴天はノアに菓子盆を差し出す。

 ソルティサブレ
 いちご大福
 懐紙
 
 美しい盆だった。塩味のサブレが三枚、手に取りやすいように斜めに置かれている。そして、小ぶりないちご大福がうっすらとあんといちごを透かしていた。黒文字が添えられ、手を汚さない配慮もされている。和菓子と洋菓子の組み合わせながら調和している。
 戴天は静かに、しかし堂々と解説を始める。
「ノアさんの好みを調査し、いちご大福がお好きと分かったので懇意にしている和菓子屋さんに作っていただきました。四季折々の香りを感じていただきたく。サブレは以前、差し入れた際に好評だったものを取り寄せました。大福は手を汚さないよう、こちらでどうぞ」
「はい」
 ノアは頷き、黒文字を手に取る。いちご大福を口に運んだ。もぐもぐと頬をふくらませる。しかしレオンは、腕を組み首を傾げた。
「うーん……大変美しいのですが、これは菓子盆でしょうか?」
「はい?」
「菓子盆というフチのついた皿を使う場合、あふれんばかりのお菓子に胸をときめかせる時間というものが定石です。このように余白が美しい配置をしてしまうと、寒々しいと申しますか、寂しいですね」
……なる、ほど」
 戴天は目を丸くしたまま、レオンの言葉に頷く。菓子盆というフィールドに馴染みのない戴天だった。ノアは元気づけるように声を明るくする。
「このいちご大福、美味しい! 単体で一番美味しいです!」
「ありがとうございます」
 戴天は控えめに微笑む。頭を下げると、雨竜の元へ戻っていった。

 宗雲は雨竜から少し離れた隣に居た。戴天に頷く。
「やはりその沼に陥ったな。最善はいつも決まった形ではない」
「宗雲さん……
 戴天は眉を片方持ち上げ、ぴくぴくと震わせた。
「もてなす気持ちがあれば、菓子盆を囲むノアの姿も想像できたはずだ。そこで求められているものも……
「御託は結構! 見せてごらんなさい!」
 得意げな宗雲に戴天が声を低くする。テーブルに行くよう指で示した。フン、と宗雲は鼻を鳴らす。
「いいだろう。お前の菓子盆の概念を新しくしてやる」
「ご主人様が審査員ですからね?」
 戴天に仕切られながら、レオンが小声で付け足した。
 宗雲は持ち手付きの紙袋から菓子を取り出す。集中し、手早く並べていった。華道を嗜むだけあって、紙ナプキンの角度ひとつにもこだわりがある。
「ノア。レオンさん。これが俺の菓子盆だ」

 ソルティサブレ
 バターポップコーン
 ドライフルーツ
 トリュフチョコレート
 紙ナプキン(赤)

 宗雲の提供した菓子盆は、「いいお家」で出るような上質な菓子盆だった。塩味のサブレが放射状に並ぶ。ポップコーンが手前を埋め、手に取りやすい形になっている。ドライフルーツはオレンジやリンゴで、敷かれた赤い紙ナプキンと同じく彩りを加えている。トリュフチョコレートは小さなカップに、二つに分けて入っていた。
「これは……宗雲さんらしくない、いささかコンセプトが曖昧なような」
「華やかな紙ナプキンが盆を引き締めていますね。素敵です」
 ノアと戴天が覗き込む。レオンはうんうんと頷いた。戴天は顔を上げ、宗雲を睨みつける。
「ソルティサブレは私と同じものですね? 情報を盗みだしたとは……卑怯千万」
「ノアに直接聞いた。それを卑怯とは言われないだろう」
 宗雲は腕を組む。二人とも相手の好きな菓子を調べるところから始まっていた。ノアはのほほんとレオンにサブレを差し出す。
「このサブレ本当に美味しいんだよ。レオンも食べてみてよ」
「いいのですか? ご主人様、ありがとうございます!」
 レオンが目を輝かせ、サブレを恐る恐る口に運ぶ。上品にかじると目を細めた。それを見た宗雲は笑い、戴天に手で示す。。
「そして……この菓子盆のチョコレートとサブレ、ドライフルーツは、二で割り切れる数にした。ノアの休憩は、きっとレオンさんが居るはずだからな」
 宗雲の言葉に、雨竜がぱっと顔を上げた。
「なるほど……確かに、僕も兄さんと一緒に休憩できたら嬉しいです」
……くっ、美しい配慮ですね……
 にこにこと笑む雨竜と、悔しげに口元を押さえる戴天。宗雲は腕を組み、得意げに笑った。
「食べ物を共有する楽しさをもこの盆に込めたというわけだ」
 決まった。陽真は拍手する。才悟がそれに続いて拍手をした。駆とフラリオも拍手をしているが、後のライダーは続かない。ライダー、照れ屋と負けず嫌いが多い。ウィズダムシンクスは誇らしげに頷いている。
 レオンは口元をハンカチーフで拭い、周囲を見回した。
「これはもう宗雲様の優勝でしょうか?」
 そう言った瞬間、エレベーターが降りてきた。人影が転がり出る。大きなトートバッグとエコバッグを持った紫苑が、息を切らして立っていた。
「ごめんなさーい! 遅れました!」
 焦りながらぱたぱたと近寄ってくる。レオンとノアの前で、大きく呼吸した。
「はあ、はあ……粗熱がとれるのを待ってて……時間がかかっちゃって」
「ということは、手作りでしょうか?」
 レオンが嬉しげに問う。呼吸を整えた紫苑は、まだ赤い頬で笑んだ。
「はい。僕の菓子盆は、手作りのビスケットを入れたものにしました」
 そう言うと、トートバッグから複数のタッパーを取り出す。浄がほっこりとその様子を見つめていた。レースペーパーを敷き、一つ一つ丁寧に並べていく。
「えっと……こんな感じかな?」
 ノアの前にブルーのランチョンマットを敷き、菓子盆を置く。

 手作りアイスボックスクッキー(プレーン・チョコ・紅茶)
 手作りパウンドケーキ(かぼちゃ)
 野菜チップス
 アーモンドチョコレート
 レースペーパー
 ランチョンマット(チェック)

 賑やかながら、落ち着いた色合いの素朴な盆だった。アイスボックスクッキーが手にとって欲しそうに並んでいる。昨晩作ったものか、かぼちゃのパウンドケーキはほくほくと美味しそうだ。ポテトチップではなく野菜の素揚げを買ってきているあたり、健康への思いやりも感じる。キャンディ包みにされたアーモンドチョコレートは手前に、控えめに置いてある。
「おお、これは中々ボリューミーな。素敵な盆ですね」
 レオンがにこにこと頷く。しかし紫苑は、まだ動きを止めない。カバンからプラスチックのマグカップを取り出した。
「それから……はい!」
 保温機能のある大きな水筒から、とぽとぽとお茶が注がれる。香ばしい湯気が立ち昇った。紫苑はノアに両手でカップを手渡す。
「ほうじ茶。たくさん食べて疲れたかもしれないから……まずはゆっくりお茶を飲んでね」
「なんというホスピタリティ……!」
 ノアはありがとうと受け取り、ほっこりとお茶を飲む。その穏やかな表情を見て、レオンが感動に震えた。お茶を飲み下した後、プレーンのクッキーを手に取った。さっぱりとした歯切れのいい味わいのクッキーだ。
「うん、クッキー美味しい! サクサクほろほろだね」
「よかった」
 紫苑はほっこりと微笑む。後ろを振り返ると、分厚い紙のコップを取り出し首を傾げた。
「みなさんもいかがですか? 手作りでよろしければ」
「ぜひ」
「浄。一度は遠慮しろ」
 誰よりも早く浄が手をあげる。宗雲の声を無視してツカツカと歩み寄る。チョコレートのクッキーをかじり、うっとりと目を閉じた。
「うん、愛を感じるね。いや、男からの愛は別に、アレなんだが」
 しらーっと颯が浄を冷たい目で見る。情けない大人の姿だった。
 慈玄はタッパーに残ったクッキーを覗き込む。そこには不格好にひび割れたり歪んだものが収められていた。見た目も納得のいくものだけが、菓子盆に並んでいる。
……深水は、この選手権を聞いて何度も試作していた。不味いはずがねえ」
「そうそう! かけた時間も気持ちだよな。紫苑は全力だったんだ」
 陽真も頷く。一つ手に取るとサクサクと食べ始めた。会場で和気あいあいと、お菓子の交換会が始まる。菓子盆を作るために購入し、余った菓子を勧めあっていた。
 レオンがしみじみと瞳を閉じる。お茶とのペアリングは、ノアの身体を気遣い、喜ばせるものだった。
「私は大切なものを見失っていたのかもしれません……ご主人様に喜んで貰いたいという、原初の心。変わったものでもなくていいんですね」
「じゃあ、優勝は……?」
 ノアがレオンを見上げる。レオンは眉をきりりと持ち上げ、頷いた。
「優勝は……私が優勝できるよう、今から菓子盆を準備して参ります!」
「おいおい主催が参戦するのかよ!」
「もうええわ!」
 ギャンビッツインが全てを漫才にし、ズコーッと全員がコケた。




 おしまい。