おもち
2026-04-29 04:07:37
2935文字
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最近相棒がおかしい

別体パラレル/同級生設定/王様が全然かっこよくないので苦手な方は注意



最近、相棒がおかしい。


いや、頭がおかしくなったという意味ではない。行動が、だ。
どれくらいおかしいかというと、オレの精神がそろそろ限界を迎えそうなくらいにはおかしい。

要するに最近の相棒はオレに、オレだけに冷たくて、オレが話し掛けてもどことなく余所余所しい。
今まで学校の休み時間には必ず自分の下に来て勉強を教えてくれと言っていたのも、屋上で一緒に二人だけで弁当を食べたりなんていう幸せなシチュエーションは此処最近はパッタリで、今では懐かしい思い出話と化している。

そういう訳でオレは一体どうすれば良いんだ、城之内君
「あー……うん、どうすれば良いんだろうな」

奢ったパフェを城之内君はちびちびと大切に食べている。
その横でオレは、注文したコーヒーを一口も飲まぬままサ店の机に突っ伏していた。
そんなオレに向かって、城之内君は「はは……」と乾いた笑いをする。

学校帰りに無理やり引っ張り出し、パフェまで奢って相棒のことを問いただしたのはいいが、城之内君自身は相棒が余所余所しいとは感じていないらしい。いつもと変わらない、とのことだった。

ならばただの思い過ごしかと思った。
だが、城之内君たちから見ても、相棒がオレを避けているのは明らからしく、やはり思い違いではないようだった。

「何か遊戯の気に障る様なことしたとか覚えてねーの?」
「全くだが、何か余程のことをしたんだとは思う。相棒はどんなに嫌いな奴でも避けたりはしない」
「だよなぁ、オレもそれは思うぜ。って遊戯がお前のこと嫌いな訳ねーだろ!」
……そう思いたいのは、山々だが

あんなあからさまに避けられていては、そう前向きに考えられる訳が無い。
今ままでずっと一緒にいたものだから、何をするにも一緒だったから。
避けられているというのが鮮明すぎて、その事実が針のように突き刺してきて、痛い程だ。

もしかしてオレは、このまま一生相棒に避けられたままで、前みたいに話せないのだろうか。

思いを告げる事はできないとは分かっていた。
だから、だからこそ友として、親友として隣にいるだけならば、と思っていたが。もはやそれすらも、無理な話なのだろうか。

ちくりと胸が痛むと同時に、締め付けられるようにも感じた。
もう相棒の隣に居られない、と思うと、ばくばくと心臓が鳴り響き、呼吸もままならなくなってくる。こんな思いをしたのは初めてだ。

オレはいつの間にか相棒が隣にいることが当たり前だと思っていたんだな。
だから今、窓の外に相棒が歩いているのが見えるのもきっと相棒に会いたいという、一目で良いから見たいというオレの妄想な訳で、

「あ、遊戯」
…… !?何っ!?」

城之内君のその一言で一気に現実に引き戻され、ぎょっと目を見開く。
意識は飛んでいたが、どうやらオレの妄想ではなく視覚はしっかりと現実にいたらしい。
窓の外を歩いているのは確かに相棒で、隣には獏良君がいる。
本来ならばオレがいる筈のポジションに獏良君がいて、少なからず嫉妬を感じたオレは本能的に体が動いていて。
後ろから何か呼びかけている城之内君も無視して、店内を飛び出す。
そうして相棒の背中を視界に捕え、走って追い付いて腕を掴めば、振り向いた相棒は心底驚いた様な顔をしていた。

「も、もう一人のボク
「あれ、もう一人の遊戯君?どうしたの~?」

隣の獏良君も驚いた顔をして何か言っているが、今は構っている余裕なんてない。
少し息を上がらせながら相棒をじっと見つめいていれば、相棒は困惑した表情でちらりとオレに掴まれた腕を見ていて、まるで無言で離してくれと言っているようで、胸が痛む。
だがここで離してしまえばもう二度と相棒と話せなくなり、理由も聞けなくなる気がして、絶対に離さないというように力を込めれば、もっと困惑した表情になってしまった。

「あ、あのい、痛いよもう一人のボク、離して
「教えてくれ、相棒」
「えっ……
「最低だとは思うが、オレは相棒に何をしたのかが思い出せないんだ。だけどもしオレが相棒の気に障るような事をしたのなら、謝りたい。だから教えて欲しい」
「え、いや、そ、そういう訳じゃなくてっ

ふるふると首を振って必死で何かを否定している相棒に、ならどういう訳なんだ、と言いたくなったがぐっと堪え、返答を待つ。
だけど相棒は不自然に目を泳がせているだけで仕舞いには黙って俯いてしまい、ああ、もうダメなんだ、と確信した。

その瞬間、自分の中に色々な感情が、どろどろとしたものが混ざり合っていくのを感じた。
言えない程酷いことをしたかもしれないのに、なんて冷静に考えてる暇も無く、頭に血が昇ったオレは自然と相棒を責めるような口調になっていってしまう。

オレのことが嫌いなのか」
「!?ち、違うよ!勝手に決め付けないでよ!」
「それ以外に何があるっていうんだ。この間からオレが話しかけても余所余所しいし、今だってオレと目を合わせようともしない。嫌ってるとしか思えない」
「だ、だからそれはっ……あーもう分かったよ!言えば良いんでしょ言えばっ!!」

さっきまでの消極的な態度とは一変し、半ばヤケクソのように怒鳴った相棒に、オレは思わず目を見開いた。
腕はまだ離していなかったが、言葉はすっかり失ってしまう。

目をぱちくりさせながら見つめていると、相棒は見て分かるほど顔を真っ赤に染め、キッとオレを睨みつけた。

「な、何か……君といると、変なの! 何かすごい、この辺がもやもやしてっ……ドキドキしてっ……!」

そう言いながら、自分の胸元を指差す。
さらに、そこだと伝えたいのか、指先で忙しなくくるくると円を描く相棒に、オレはただぽかんと口を開けて見ていることしかできなかった。

それって、つまり――

……え、っと。すまない、もう一度言っ――
「だから、君といるとドキドキして、何にも考えられなくなってやだって言ってんの!二度も言わせないでよ、バカっ!!」

そう叫ぶなり、相棒はオレの手を振り払って一目散に駆け出した。
オレは追いかけることもできず、ただ手を伸ばしたまま、その背中を見送る。

一部始終を見ていた獏良君は、眉をひそめて首を傾げた。

「何このバカップル」


****



「遊戯の奴、大丈夫かなー……

奢ってもらった貴重なパフェをちびちびとつつきながら、城之内は心配そうに窓の外へ視線を向ける。

それがどちらの遊戯に向けた言葉なのか、自分でもよく分からない。だが、どちらかといえば“相棒”と呼ばれる方が気掛かりだった。

「あいつ、けっこう強引なとこあるからなぁ……ま、どーせすぐ仲直りするだろ!」

側から見れば、どうしたって両想いの二人だ。余計な心配だったかと一人で納得し、城之内はうっとりするような大きさのパフェに再びスプーンを伸ばした。

その直後。

「伝票、こちらに失礼します」

ウェイトレスがそっと差し出した一枚の紙を見て、店内に城之内の悲痛な叫びが響き渡るのは――もう少し後の話である。