白殊皎(しらよし こう)
2026-04-28 21:00:00
2848文字
Public FGO【歳勇/土近】
 

テンプテーション・バンドリング

現代に近い日本にて任務を終えた一行はマスターの希望であるものを食べに行くことに……。

この作品は2026年4月4日・5日に開催された、ぐだぐだ鯖WEBオンリー「ボイラー室横より愛をこめてW~二回目~」での白殊独自のリクエスト受付企画【白殊に歳勇小説リクエストを投げつけようVol.2】でリクエストいただいたものです。

◆リクエスト内容◆
カルデア時空、近藤さんは三臨。
「レイシフト先でジャンボパフェを食べる土近」


今回のゲストサーヴァントは無限のお財布をお持ちのギルガメッシュ(キャスター)様にお願いしました!
──後半は沈んでましたけどね。
惚気に当てられるのとどっちが良かったかは本人しかわかりませんが。



 微少特異点が発生した。
 場所は2000年代の日本、季節は冬。
 速やかに聖杯の所在を突き止めて特異点を解決せよ。

──ということで、選ばれたサーヴァントは土方歳三、近藤勇、キャスターのギルガメッシュ。
 手分けをして情報を集め、幾許かの戦闘があり、無事に聖杯は回収された。
『やぁ、お疲れさま。無事に終わってなにより! あとは消滅を待つばかりなんだけど──』
 通信機の向こうのダ・ヴィンチちゃんは満面の笑みで言葉を繋いだ。
『せっかく立香ちゃんの時代の日本だから、時間の許す限り楽しんでくれていいとのゴルドルフくんのお言葉だよ』
「ほぅ、なかなか人の機微がわかるではないか」
 ギルガメッシュは腕組みをしてちらりと少女マスターを見遣る。
──ありがとうございます! 実はちょっと懐かしくって寄り道できたらな、と思っていたんです!!
 その視線を受けて藤丸立香はダ・ヴィンチちゃんに負けない笑顔を見せた。
「QPはオレに任せろ。雑種が望むものなど我には塵みたいなものよ」
──王様、太っ腹!!
「ふはははははは。我は今日は機嫌がいい、お前らの分も出してやる。なんでも望みのものを言うがいい!」
 テンション高めのギルガメッシュは土方と近藤を見ながら胸を反らした。
「それはありがたいな。とりあえず、ここでは目立つお前や俺たちの服装をどうにさせてくれ」
 面食らっている近藤の肩に手をやって、この王様はこういう奴だ、と囁きながら土方は返事をした。
「よかろう! 雑種、馬子にも衣装だ、お前も着替えろ。我が見立ててやる」
──本当ですか? 期待していいんですね!?
 そうして一行は有名ファッションビルに向かうことになった。

──王様、現代の服に縁がなさそうなのに案外センスありますね。
 ギルガメッシュの見立てで着替えた立香はどこからどう見ても年頃の美少女に仕上がっている。
「そうであろう!」
 自分も品のいいジャケットとズボンに白のシャツで身を包んだギルガメッシュはますます機嫌良く笑った。
「まぁ、俺たちはこんなものか」
 チャコールグレーのジャケットに黒のズボン、白いタートルネックのセーターに金のネックレスを合わせた土方は別の更衣室の方に視線を送る。
「なかなかに、着慣れないものだね。これでいいのかな」
 カーテンを開けて出てきた近藤はどうも落ち着かない様子で、袖をめくったりズボンをはたいたりしている。
 それでも幅が広めのズボンに紺のタートルネックシャツ、首元にシルバーのネックレス、そして上着は少し厚めの濃いグレーのダウンジャケット、と浅葱混じりの黒髪と相俟ってなかなかおしゃれに纏められている。
「いいんじゃないか? 見立てた甲斐あるってもんだ」
「ならいいんだが」
 おまえがいいのならいいよ、と近藤は微笑んだ。
 代金はギルガメッシュが気前よく払ってくれたので、いくらかかっているかは互いに知らない。

 そうして外に出れば180センチ越えの美形三人に囲まれた可憐な美少女の構図が出来上がった。
 これならばまかり間違っても悪い虫など寄ってこないだろう。
──王様、美味しいスイーツのお店があるんです、寄ってもいいですか?
「構わんぞ」
 スイーツと聞いて、近藤が少し反応したのを土方は見逃さなかった。
──近藤さんも土方さんもいいですか?
「主のお望みなら、何なりとお供しますよ」
「別に甘いもんが嫌いなわけじゃねぇから、いいぜ」
「歳……
 近藤の平静を装った返答に、土方が喉の奥で微かに笑うと、近藤はちょっとだけ頬を染めた。



──これです、これ! 食べてみたいんです!!
「おい、雑種……
 来たかったという店で立香が示したメニューを見たギルガメッシュは一瞬固まった。
 そこにあったのは値段10,000QPは超えようかという超巨大パフェが記載されていた。
「おぉ~」
 それを見て近藤はギルガメッシュとは逆に目を輝かせた。
 メニューには『六人前以上あります』、と注意書きがされているくらいのジャンボパフェだ。
──ダメですか?
「許す! どんなものでも持ってこい!!」
 きゅるん、と目を潤ませてねだる立香にギルガメッシュは一瞬天を仰いだあと傲然と言い放った。
 結局、この王様はマスターには甘いようだ。
 流石にすぐには準備できないようで、各自飲み物を頼んでしばらく待った。
………………
 どどん!! まさにそんな効果音が相応しい巨大なパフェを前にギルガメッシュは完全に沈黙した。
 わくわくした顔をしているのは立香と近藤だけという有様で、土方ですらこめかみを押さえてテーブルに肘をつくくらいだ。
──王様、ありがとう! いっただきまーす!!
 しばらく写真撮影をしたあと、取り皿に山盛りフルーツとアイスクリーム、ホイップクリームなどを取ってマスターは嬉しそうに頬張った。
「ギルガメッシュ王、私もいただきますね」
 近藤もにこにこと最高の笑顔で立香の倍はありそうな量を自分の皿に取って口に運んだ。
──美味しい。アイスとフルーツが最高に合う!
「初めて食べましたが美味しいですね。アイスで冷えるかと思えばケーキがほどよく和らげてくれるようで、いくらでも食べられます」
 ほくほくと食べ進める立香と近藤を前に、ジャンボパフェは徐々にその姿を小さくしていった。
「歳、全然食べていないじゃないか。ほら」
 よほど機嫌がいいのか、近藤は自分のフォークに刺したイチゴを一つ、口を開けろというように土方に差し出した。
「近藤さん……
 カルデア中が周知済の恋人同士とはいえ、流石の土方も立香の前と人目があるこの場所でそれをやられて、顔を赤らめて顔を押さえた。
「────!!」
 その土方の態度に、はたと正気に戻ったか近藤は耳まで真っ赤に染めた。
 ギルガメッシュは既に沈没しているので、その様子は見ていないようだったが、立香はフォークの先ををくわえたまま頬を染めて目を丸くしている。
「あ、いや、その……これは……えっと……
 気がつけば、立香だけでなく周囲の女性客の中にもその様子を期待も込めて見つめている者がいる。
「~~~っ」
 これ以上なく恥ずかしくなって、近藤はイチゴをぱくりと自分の口におさめた。
──ちょっとびっくりしたけど、大丈夫だよ、近藤さん。美味しいもんね、土方さんにも食べてほしかったんだよね。
「──はい……
──だそうです、土方さん。食べましょう?
「わかったわかった」
 近藤の照れ顔が可愛くて、土方はニヤリと笑った。
「うぅ……忘れてください…………
──忘れてあげません!
 立香はにっこりと笑うと自分もぱくりとイチゴを口に入れた。

 そんなことがあったが、最終的にパフェの大半が近藤の胃に収まったのは間違いなく、その健啖ぶりにギルガメッシュはしばらく口をきいてくれなかったらしい──。