2026-04-28 15:17:26
5710文字
Public 小説
 

普通にしてると可愛いんだよな

ゲーミング配信者パロの拓歪です。付き合ってる。初心者👁️がいつの間にか姫プになっていて慌てる🌊。
モブゲーマーが出てきます。想定の中身は、ぉぢです。

 今巷でじわじわと人気になってきているオンラインゲーム、ルミナス・クロニクル・ファンタジア。略してルミクロ。
 リリースから半年、口コミでユーザーを増やし大型アップデートも控えている話題のゲームだ。
 オレはリリース前から注目していて、リリース日から欠かさずログインしてそれなりにやりこんでいる。

 今オレは、学生ゲーム実況配信者としても活動している。元々ゲームは好きだけどゲーマーと言えるほどやってはいなかった。皆も知っているモンスターを狩るゲームとか、王道RPGとか、メジャーな作品ばかりやっていたし。
 そこを腐れ縁の飴宮に誘われ、というか巻き込まれ、グループで配信者活動をすることになったのだ。
 メンバーは蒼月(こいつよく了承したな……)、銀崎(断らず付き合ってくれてありがとう)、雫原(飴宮に甘いところあるからな)、好奇心旺盛双子の九十九今馬、過子、そして暴君・飴宮と――ゲーム初心者の面影だ。

 何を隠そう、いや隠していないが、オレと面影はなんやかんやあって恋人関係にある。付き合っている。――恋人らしいこともまぁ、している。キスとか。エッチとか。――年頃の男の子なんだから、やらないってことはないだろ!?
 それはさておき、配信グループの件。家柄のせいでテレビゲームなどの娯楽に触れてこなかった面影なので、ゲームに関しては全くのド素人だ。
 だがオレ達が実況するゲームを決めるぞ、とファミレスで会議をすることになった時、面影も「面白そう」とオレについてきた。全員仲間なのだから面影がその場にいることは問題ない。皆、オレと面影が付き合っていることも知っているし。それで話をしているうちに、面影が「楽しそうでいいなぁ」と呟いた瞬間、飴宮の魔の手が伸びてきた。
 
「初心者枠とか絶対面白いじゃん! 上手い奴とか面白おかしく実況するやつは珍しくもないけど、本気の初心者から生まれる天然っぽさとか良すぎる。歪は希少価値なんだよ。というわけで歪もメンバーになるっしょ?」
「え、でも私が入っても迷惑じゃない?」
「面影さんで迷惑だったら僕なんて歩道のど真ん中に鎮座してるウンコですよ! ぜひ参加してください!」
「ハァ、ハァッハァッ……銀崎君、歩道のど真ん中で脱糞だなんて、はしたないよぉ……!」
 銀崎が間に入ったことによって、面影の排泄大好き変態スイッチが入りっぱなしになってしまったことは置いといて。とにかく、面影もこの会議からメンバーになった。

 オレとしては経験がないからといって面影が蚊帳の外に追いやられてしまうのは嫌だったし、他の面々もそうだったのかもしれない。とにかく、嬉しそうに「不束者だけど、これからよろしくね」と微笑む面影を見て、オレは安堵した。
 そもそもオレだって多少は出来るかな……程度だし、アクションが得意なやつもいれば、銀崎のようにスローライフ系のゲームでコツコツ村を発展させていくのが上手いやつもいる。初心者でもこっちが楽しんでいれば見てくれる人も楽しんでくれるよ、ということで定期的にゲーム実況配信をしている。
 
     *

 ルミクロに今ログインしたのは、個人的な趣味と、次の実況に関する予習といったところだ。
 基本的に職業配信者ではないので、発売前案件とかはない。だから発売直後の話題のゲームをやったり、他の配信者がやっていないようなゲームを探してやってみたりする。飴宮のグロ系・鬱系エロゲーレビューとかは人気があるんだよな……。ゲームのチョイスも通好みなだけでなく、あのテンションが視聴者にはエンタメっぽく見えるらしい。オレからしたらいつもの飴宮なんだけど。
 
 ともあれジャンルは問わずでやっているので、次は既に遊んでいたオレ・雫原・飴宮と、初心者枠の面影でルミクロをやろうという話になった。
 で、いくらなんでも少しは触れておこうということで、数日前にお部屋デートと称して面影のルミクロアカウントを作り、アバター作りを手伝って、基本説明をして最初のダンジョンを攻略した。
「私も個人で慣れるように頑張ってみるね」と面影は意気込んでいた。中途半端に出来るようになるよりわからない方がいいかもとも思ったが、大事故の可能性もあるので「これだけは気をつけよう」みたいなことは教えておいたつもりだ。

(あいつ真面目だから、結構この数日でやり込んでたりしてな……いや勉強の方も忙しいか)
 とログインしてみると、事前にフレンドになっていた面影がオンラインになっている。育成を進めたりしてるなら同行するか、と面影のいる場所に飛んでみる、と。
「あ、澄野君! こんばんは」
 とテキストチャットで話しかけてきた。おい! 気をつけようの項目が守られてないぞ!
「リアルで知ってる相手の本名を出すなって言っただろ。個人を特定されたらやばいんだから」
 犯罪のもとだぞ、と嗜める。面影は「そうだった、ごめん(>_<)」と返してくる。
 ――顔文字のチョイスが、可愛くないか?

 そこも気にはなったが、一目見て違和感に気づいていた。数日前に二人でやったのは最初のダンジョンと、序盤のレベル上げ、採集や鍛治、薬品開発の基本説明だ。だが明らかに面影のアバターは初めて数日の初心者が持てる装備でないものを身につけている。
 よくよく見れば、レベルも急激に上がっている。なんでだ!?
 予想としては一つしかない。寝る間を惜しんでやったとしてもこの高レベル装備、しかもレア装備も含む……をソロで入手できるわけがない。
「お前、オレ以外の奴とプレイしただろ」
「んあぁ……! な、なんか浮気を責められてるみたいで怖いよぉ……(//∇//)」
「いや別にいいんだけどさ、それがオンラインゲームの醍醐味みたいなところもあるし、協力プレイ前提のボスとかもいるし。でも大丈夫か? 初心者だからって暴言吐かれたりとかなかったか?」
 一応聞いてみるが、暴言はないだろう。この貢ぎ物装備を見るに、これは姫プだ。勿論、面影が守られる側だ。
 
「ううん、全然? 昨日ギルドはまだ怖いから、牧場? で動物を見てたんだけど、そこで声を掛けてくれた人がいたんだ。ゲーム自体慣れてなくて、って説明したらレベル上げ手伝ってあげるし教えてあげるよって、すごく親切でね? この装備もその人から貰ったんだよ」
 デショウネ、という言葉を呑み込んで「それすごいレア装備だぞ」と、きわどいビキニを示す。
「らしいね。こんなに布面積が少ないのに防御力が高いの、面白いねって言ったら、これは高難易度のダンジョンで採れるものでしか作れなくて、大変だったんだよって言ってた」
「知ってる。オレも持ってない」
「澄」「ごめん。キミのアバターは男の子だから必要ないよね? あ、でも『冥界の暁』さんも男のアバターだったな」
 
「ダッサ!! 厨二すぎる!!」
 また面影が本名で呼びかけたのを咎めるよりも、そちらの方に気がなってしまった。だが、すかさず面影は言い返す。
「澄野君の『ゼロ・ナイトメア』も私から見たら似たようなレベルだと思うんだけど……
「お前の『ひずみん』もアウトだろ! 本名はダメだって言ったのに本名に寄せてるし」
「だって、あまりに違う名前だと自分が呼ばれてるって実感が湧かないから。ごめんね(>人<;)」
 いや、いちいち顔文字が可愛いんだよ。
 顔文字を多用するのは逆に怪しかったりダサかったりする気がするが、普段通りの柔らか口調と相俟って可愛く感じてしまう。
 恋人の欲目を抜きに、客観的に見たとしても、元々一人称が「私」で口調が柔らかい面影は、演じているわけではないのでボロも出ない。
 しかも何故かアバターは「この女の子がいい」と言って、可愛い系の女の子を選んでしまっていた。最早非の打ち所がない。
(髪は青いけどな……

 尖っているのはそこだけで、これは絶対に冥界の暁も面影――ひずみん――のことをリアルでも女性だと思っているに違いない。
 無駄にキュルンキュルンとはしていないが、滲む口調が物語っているのだから。
 ――現実には、ヘビィなアイメイクとバチバチのピアスに奇抜な眼帯といった風体で、「イケメンじゃなかったら許されてなかった」と言われそうなVネックのインナーにジャージを羽織って、太腿にベルトがついたパンクなパンツを穿いた、ガチガチに柄の悪い見た目の男なんだが。
 それが大股開きで多分コーラを飲みつつゲームをやっているんだが。
(気の毒に……
 ゲーム内で承認欲求を満たしているだけならいいが、リアルでワンチャンあるとか思わないでほしい。思っているような女ではないので。男なので。
 あと、ゲーム内でも恋人気取りでイチャイチャとかしないでほしい。この男には、オレという恋人がいるので……

 まさかプレイ開始から数日で姫になっているとは思わなかったので、姫プレイとは何か、行き過ぎると関係が悪くなり殺伐とすることもあるので頼りすぎないように、など心得を教示した。
「わかった、敬意を表して友好関係を築くよ」
「というか、出来ればその装備を返した方がいいんじゃないか。オレとやるからって言ってさ……
「うーん。でも親切にしてもらったのに、急にそれは義理人情に欠けるというか」
 などと話しているところに、件の人物がやってきた。

     *

「あっ! 暁さん(^O^) こんばんは☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆」
 いやその顔文字はないだろ!!
「ひずみん♡ 今日もご機嫌麗しゅう♫ 幻惑のビキニ似合ってますぞ( ̄▽ ̄)」
 おっ、予想以上に気持ち悪いのが来たな……
「ありがとう。お陰で手近なダンジョンはすぐに死ななくなったよ(*^^*)」
 これ……オレは入れるのか、この会話に……
 無言で佇むフリをして、オレは冥界の暁(笑)のステータスを見た。
 やっぱりすごい。これはやり込んでるという以上に、廃ゲーマーの類では? 暇だなこの人? ランカーかな?
 何故ひずみん(面影)を気に入って良くしてくれたのかはわからないが、これは流石に付き合うには釣り合いが取れないだろう。相手はド初心者だぞ。
 コンプとかステータスよりも、ひずみん(面影)をとってしまったのか。それはますます申し訳ない。
 というか、ちょっとムカつくな、恋人が他の男とイチャイチャしてるのは……

「ところでこちらの方は? 姫の新しいフレンドですかな? ふむふむ、このレベル、装備……。なかなか頑張っておられるようで」
 いや、何者なんだよお前は。てかガチで姫って呼んでるのかよ。
「あ、すみ、この人は私の恋人で攻略を手伝ってくれるんだ(●´ω`●)」
 オレが言うより先に爆弾を投げ込んだぞコイツ。義理人情はどこに行ったんだよ。いや、これが天然か……
「なんですと!? ボクというものがありながら……嘘だよね?」
 ほら勝手にこいつの中で何か進んでた! 早く切れ! ここは助け舟を出すか。
「いや本気でリアル恋人なんで、すみません。いつの間にか貴重な装備とか色々いただいたみたいで、この装備はお返ししますんで」
「お前には聞いてねー! クソエイムの三下がよ!」
 クソエイムかどうか見たこともないだろ!
 
「ふぇぇ……( ; ; ) 私のために争わないで……(T ^ T)」
 面影、面白がって煽ってる?
「というのは冗談で、暁さん。親切にしてくれたことは感謝してるんだけど、す、ゼロくんと仲良くしてもらえないなら私も仲良く出来ないから装備は返すね。えっと、どこから返せばいいのかな……。あっ、これだと捨てちゃうのかな?」
「「やめてやめてやめて」」
 冥界の暁とオレのチャットが完全に一致した。
 苦労して地べたを這いつくばって虚無周回して作ったレア装備を無に帰さないで。

「ひずみんはガチの天然だから警告文が出ても本当に捨てちゃいそうで怖い。装備はいいからもうオレは去る。これはでかい勉強代だと思って、ネットの女に尻尾を振るのはやめるぜ……でもひずみんは健気で可愛くていい子だと思ってるよ彼氏と幸せにな!」
 あっ、逃げた。
 あと女じゃないです。
 装備はオレが面影の部屋に行った時に操作して返そうか、と話し合っているうちに、相手がフレを切ってしまった。IDも控えてないしどうしようと思ったが、あのハンドルネームは被るやついないか……というわけで、後日レア装備は返すことに決まった。

     *
 
 上がったレベルや稼いだ通貨、協力プレイで入手した素材などは無駄にはならないので、二人で鍛冶をしたりショップを回ったりして新たに装備を整えた。
 そして二人のレベルや経験を鑑みて最適と思われるダンジョンに挑戦してみる。
「成長がエグすぎる」
 面影は運動神経が良い、つまり反射神経もいい。更には磨けばゲームセンスもあることが発覚してしまった。戦闘は問題ない。
 が、どのゲームにも共通の基本などを覚え切っていない、というかこちらがまだ全部教えていないので、不思議なことを聞いてくる。これはこれでギャップが面白いかも、と合流した飴宮に伝えると、「上手くなりすぎなのはつまらんけど確かにギャップ萌えはアリ。その姫プエピさー、雑談しながらやらん? 絶対ウケるって」などと悪魔の回答が飛んできた。
「このエピソードって配信で喋ってもいいのかな?」
 名前出してもいいものなの? と基本の基本を聞いてくる面影に、オレは即座に反応する。
「やめてあげて! 暁さんが見たら引退しちゃうかもだから!」

 だとしたら暁(笑)のために拓海と歪のネーム変えた方が良くね? と言う飴宮に、「えー。気に入ってるのに_(:3」z)_」と返す面影。
 飴宮はオレ同様、「歪って顔文字とか使うタイプなんだ……ギリ可愛いようなおっさんっぽいような……」という感想を呟いていた。