みる
2026-04-28 12:53:40
2574文字
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【脹虎】籠の中の鳥はどっち?

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13.鳥
(キスをする)(傍にいる)(成功)

現パロ。
悠仁がショタです。九十九さんがゲスト出演

「悠仁」
 兄ちゃんが俺を呼ぶようになってから、自分の名前が好きになった。兄ちゃんが俺を呼ぶと、俺の名前の響きが、すごく優しくてあったかいもののように感じるから
 周りからはオマエの兄ちゃんこえーとか言われることもあったけど、そんなのどうでもよくなるくらい、兄ちゃんが好きだった。いつも傍にいてくれる兄ちゃん。守ってくれる兄ちゃん。我儘をきいてくれる兄ちゃん。たまにそっぽを向いて何かを我慢してる時があるから、俺がいたいのとんでけってして治してあげるんだ。どこか痛いのって聞いても、嬉しいだけだって言うだけなのに。
 大好きな兄ちゃん。世界で一番、兄ちゃんが好き。だから、
……ゆう、じ……?」
 絶対成功させたかった。



 兄ちゃんは酒に弱い。デスクワークが多いせいで不健康な真っ白い肌を真っ赤にして、俺の話をずうっとするんだって同僚である九十九さんが言っていた。
『まあ、君の話をするのは素面の時と変わらないんだけどね』
 なんて、九十九さんは綺麗に笑っていた。
 酔って帰ってきた兄ちゃんの肩を抱いて、リビングのソファに座らせる。水を取りに行こうとした俺を引き留めて、ゆうじ、と舌ったらずに俺を呼ぶんだ。
「ゆうじは、かわいいなあ」
 俺、もう小学六年生なんだよ、兄ちゃん。学校じゃあ体育委員会の委員長をしてるし、昨日も一年生の机を移動したりしてたんだよ。大きくなったんだ、俺だって。
「かわいい。かわいい」
 なのに兄ちゃんは、そんなこと知るもんかと言うように俺の頭を撫でて、俺をいつもべた褒めしてくる。
 男なんだから、かっこいいって言われるほうが嬉しいはずなのに、兄ちゃんに言われる『かわいい』は、嬉しい。クラスメイトたちに呼ばれるのとは違う、兄ちゃんだけの特別なものだ。
「ゆうじは、俺のたからものだ」
……うん、わかってるよ。兄貴」
 兄ちゃんって呼ぶのがちょっと恥ずかしくなってきた俺は、心の中でだけ兄ちゃんって呼ぶ。たまに血走った目で『お兄ちゃんと呼んでくれ』って迫られたときだけは呼んであげるけど。確かその時は、兄ちゃんが出張に行っていて二日も会っていなかった時だ。足りないとかなんとか言っていたけど、何がだろう? ご飯とかかな?

 そのままソファで寝てしまった兄ちゃんを横にする。二人で並んで座ってもそれなりに余裕があるソファ。だけど兄ちゃんが横になると、足がはみ出る。おっきいんだよな、兄ちゃん。
「んん……
 すよすよと寝ている兄ちゃんの、お腹の上に乗っかった。それなりに体格がよくなってきた俺だけど、兄ちゃんからしたらまだまだ軽いほうだ。なんなら兄ちゃんは、ことあるごとに俺を抱っこするタイミングを狙っている。恥ずかしいからやめてって言ったら、この世の終わりみたいな顔をしていた。
「兄ちゃん」
 起きているときは呼ばない呼び方をした。自分の名前を兄ちゃんに呼んでもらっているのに、俺は兄ちゃんの名前は呼ばない。不公平だけど許してくれる、それが兄ちゃんだ。甘えてるってわかってるけど、でも。
「好きだよ」
 弟じゃ、もう、満足できないくらい、俺は兄ちゃんが好きになってんだ。
 少し開いた兄ちゃんの口に、自分のそれをくっつける。いわゆる、ちゅーってやつ。あ、大人風に言うと、キスってことになるのかな。
 酔って寝ている時に、兄ちゃんにキスをする。それが俺の、一世一代の作戦だった。
 だって兄ちゃんが教えてくれたんだ。王子様が眠り姫にキスをしたら、幸せになるって物語を。

……ゆう、じ……?」
 加減がわからなくて勢いよく唇がぶつかったからなのか、兄ちゃんはばっちり起きてしまった。でもこれで、幸せになれるはずだ。兄ちゃんがいつも夜に話してくれるお話では、そう言ってた。
 俺は、兄ちゃんと、幸せになりたいから。
……今、なにを、して、」
「兄ちゃん、好きだよ」
 兄ちゃんが、固まった。俺の言葉を聞いている兄ちゃんは、どんな気持ちなんだろう。
 起きてからも言うんじゃ、意味なかったかな。
「兄貴としてじゃなくて、兄ちゃんが好きだ」
 大切に育ててきた弟からの告白は、この兄にどう受け止められるんだろう。宝物だと思っている弟が、実はもう兄弟じゃ満足できなくなったと知ってしまったら、どうなるんだろう。
 反応が、怖いと思った。それでも、言いたかった。
 もう、我慢なんて、したくないから。

……いいんだな?」
……え? わッ!」
 手を引かれて、柔らかいものに背中が当たる。兄ちゃんが起き上がったと思ったら、反対に俺が仰向きに寝転ぶことになった。兄ちゃんの背中越しに見える照明は眩しくて、そのせいで兄ちゃんの表情がよく見えない。
「そういうことで、いいんだな? 悠仁」
 ……そういうことって? 兄ちゃん、どういうこと?
 Tシャツの裾から、にいちゃんの冷たい手が入り込んでくる。ひゃ、と出そうになった声ごと、兄ちゃんの口の中に吸い込まれた。分厚い舌が、俺の口の中を余すところなく撫でていく。
 知ってる。これ、大人のちゅーだ。自分のものじゃない唾が口内に入り込んでくる。でも、兄ちゃんがくれるものだから飲み込んだ。
「思っていたより早かったが……まあそんなことはどうでもいいか」
 息も絶え絶えな俺と違って、兄ちゃんはとても嬉しそうに笑っている。兄ちゃんのシャツにかかっていたネクタイが、しゅるりと抜かれた。
「俺も好きだ、悠仁。おまえを、一人の人間として」
 返ってきた答えは、俺が求めてやまないもので。俺の心は、嬉しい気持ちでいっぱいになった。
 なのに、なんでだろう。兄ちゃんの笑顔が、いつもと違う。
 少し、怖い感じが、する。
「お前が求めるなら、俺が与えてやろう」
 兄ちゃんなら、いい。だって俺、兄ちゃんのこと、好きだから。
 くれるって言ってくれた。俺も兄ちゃんが好きだから。ほしいから。すっごく嬉しい。
「もっともっと、オマエを愛させてくれ、悠仁」
 うん、て言ったら、嬉しそうに笑った兄ちゃんの鼻の傷から血がこぼれた。垂れた血は、俺の口元にくっついたから、ぺろりと舌でなめとった。

 俺と兄ちゃんは仲良し兄弟。この日から、もっと、もーっと、仲良しな兄弟になった。