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ひまり🐬
2026-04-27 22:47:58
1737文字
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違法マイク
ある日のハマの小話。左馬刻視点。
恋愛要素ないけど生産工場が腐ってるので香りづけ程度には要素あるかも。
「いまいち現実味に欠けますねぇ」
「何がだよ」
「貴方と二人、こうして平日昼間からベッドで惰眠を貪っていることがですよ」
思いの外倦怠感はないですが、と宣うその口を塞いでやろうかと思った。唇で、ではない。物理でだ。
いつもならば返り討ちにあうだろうが、身体が鈍っている今なら勝てる気がした。左馬刻の家に匿ってからというもの、日課であるトレーニングをしているところを見ていない。マウントポジションを取るのも夢ではないだろう。だが実行はしない。何せ左馬刻には男を、ましてや戦友を抱く趣味はないのだ。抱けないか、と言われれば答えは否だが、少なくとも今は必要性を感じない。
「どうして私は仕事を休んでこんなところにいるんでしょうね」
「違法マイクを浴びたからだろ。危ねーから隔離してるって、何回言ったら分かンだよ」
「子供じゃないんですよ。全く、こんな長期的に休んだら仕事が溜まって
……
」
「記憶を失う効果浴びてんのに仕事なんてできるわけねーだろ」
「できる!」
「じゃあお前、休んで何日目だよ」
「っ
……
」
回答は無い。いつから左馬刻のセーフハウスにいたかさえも曖昧なのだ。日付感覚すら失ってしまった状態で、外に出せるわけもなかった。
「分かんねェんだろ。今のお前じゃ、外に出たって役に立たねーよ」
「でも!」
数度目かのやりとりに、左馬刻はすっかり疲弊していた。サイドボードに手を伸ばしかけて、そういえば煙草もライターも灰皿もすべて寝室から撤去していることを思い出した。こんな状態で自分だけ吸うわけにもいかないと、己のやったことだ。だがニコチン不足の脳が苛立ちを思い出し、思わず舌打ちをする。
何も咥えていない口で大きく息を吸う。汚れていない空気で肺を満たした。ため息を深呼吸で誤魔化してから、左馬刻は再度口を開いた。
「安心しろや。しばらく様子見れば治るって寂雷センセーも言ってたからよ」
「しばらくっていつですか」
「それは知らねーけど
……
」
左馬刻は医者でも専門家でも、ましてや製造者でもない。違法マイクの効果の程を尋ねられたところで何も答えられなかった。自分にできることは、籠城するための安全な場所を提供し、監視することのみ。あとは精々、絶賛マイクの調査に奔走しているもう一人の同胞とともに制裁を加えることくらいか。
「とにかく大人しくしてればなんともねーって」
「何ともないって、そればっかり」
「それしか言えねーんだって」
「何ともないなら、どうしてここにいるのは左馬刻だけなんですか」
「
……
」
「どうして、理鶯は会いに来てくれないんですか!」
「
……
そんなの」
俺にはどうしようもできねぇよ。
***
ひとしきり喚き散らかして満足したのか、疲れて寝てしまった同胞を一人残し、寝室を後にする。すぐさまスマホから目的の人物の連絡先をタップし、向こうの事情などお構いなしにコールをした。
『はい』
左馬刻からの電話は予想の範囲内だったのか、ワンコールで応答した。
「もう、限界かもしれねー」
挨拶もせず、左馬刻は事実だけを端的に述べた。
保護して五日ほど経過したが、あれだけの癇癪を起こしたのは今日が初めてだった。しばらくは仕事に行かねばと騒ぐだけだろうと高を括っていたが、姿が見えない仲間への言及が想定よりも早かった。やはり、少なからず違法マイクの効果が体を蝕んでいるようだ。
電話の向こうからはふむ、と考える素振りを見せる相槌が聞こえる。
『今日はなんと?』
「
……
理鶯に会いたいってさ」
『それは
……
鏡でも見せてやったらいいんじゃないか?』
「アホか。余計に混乱させるって分かってんだろが」
『ああ、もちろん冗談で言った』
「クソが」
テーブルから煙草と灰皿を手に取りキッチンへ移動する。自分の家ながら、ここ最近は寝室の扉を締め切って、換気扇の下でしか吸わない。吸えない。今のあいつの前では嗜めないから。
普段吸わない体に「一本くれ」なんて言われたら、左馬刻は何と返せばいいか分からないから。
「さっさと犯人突き止めやがれ、銃兎」
『当たり前だ。理鶯をこんなにした野郎、タダでは済まさねぇよ』
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