甘酸

全年齢の本ロド
できてないロドが事故ちゅーしたことでじわじわと関係が変わる話





あ。
先に呟いたのは、ロナルド君だった。

うわ。
声に出すよりも先に砂になった。

「まじか」
「まじだ」
はぁぁと二人でため息を吐いて、頭を抱えた。
「俺のファーストキスが
「私だって初めてだったのに
掠めただけで、合わさってはいない。
呼ばれて顔を上げたら、目の前にあった顔にぶつかった。
……それだけだ。
「お前が急に顔あげるから
「君が近付きすぎてたんだろ

ファーストキスはレモンの味だっけ。
一瞬すぎて何も分からなかったな。

「あまりにもショックで涙も出てこねぇ」
「驚いたよね」
「でもまぁ」
「嫌ではないから」
「「癪ではあるけど」」

初めてのキスに認定した。






あれから二年と少し。
距離感は相変わらずだし、やっていることも変わらない。
ただ年をとっただけ。
周りがそろそろ結婚を意識してきたのに、ロナルド君は変わらずに彼女の一人もできず。
私は私でお見合いの話を右から左へ流して。
この楽しい生活をもう少し続けてもいいだろうと、暗黙の了解で重ねていた。

面白いと噂のクソ映画。
空飛ぶ鮫も見慣れて、大笑いするのも疲れた頃。
なんとなく横を見たら、ロナルド君が大欠伸をしていた。
少し伸びた髭は、昨日から寝ずに原稿をしていて剃り忘れたもの。
気分転換に付き合えやと言われて、おすすめの映画をつけてやった。
大きな口はだらしなく下がり、目尻には涙がテレビの光を反射して潤んでいた。

せっかくのイケメンがもったいない。

そう思って涙を拭ってやるついでに。
ん、」
ふにりと唇に唇を押し付けて、二回目のキスをした。
「目は閉じてほしいなぁ」
仕方のない坊やだことと笑ったら、デコピンされて死んだ。
「いきなりするからじゃん」
「いきなりじゃなかったら閉じるんだ?」
「分かってりゃ閉じれる」
言外に三回目を滲ませたら「任せろ」と笑ったから、なんだか拍子抜けして一緒に笑った。






そして、さらに年月は過ぎ。
相変わらずロナルド君にはお嫁さんどころか彼女もできず。
すっかり落ち着いた風貌になったのに、やっていることは出会った頃から変わっていない。
私のほうはというと、なんとなく伸ばし始めた髪が背中の真ん中を越して、なんとなくお見合いは断り続けていた。
やっぱり年を重ねただけでは、私たちは何も変わらないのかもしれない。

いや、変わったものもあるのか。

ロナルド君がぼさぼさに伸ばしていた髪を、ばっさり切ってさっぱりルド君になった。
わけを聞けば。
「これからの時期暑いじゃん」
刈り上げてすっきりした襟足をわしわしして「もしかして似合ってない?」と涙目になっていたから。
「似合ってるよ」
と素直な感想を伝えたら「恋人できるかなぁ」と鏡に向かって決めポーズしていた。
せっかくのイケオジなのに、ポーズがダサすぎて涙が出るほど笑った。

そんなロナルド君が、たらふく唐揚げを食べたあと無防備にも寝ていた。
ソファの背もたれに体を預けて、口は半開きで、ゆるゆるな腕組みをして、静かな寝息を立てていた。
「だらしな

つん。
つく。
つん。

右肩。
左肩。
胸の真ん中。

「油断大敵なり」
唇をくっつけたまま、銀色のまつ毛を数えて、たっぷり時間をかけて離れた。
そよそよと扇風機の風が流れ、ふわりと鼻に届いたのは同じシャンプーの甘い香り。
……バレたか」
「現役退治人ロナルド様を舐めるな」
ふふんっ!と鼻で笑って、唇をぺろりとひと舐め。
ありゃりゃ、拭うかと思ったのに。
本当におかしな子。
だけど。
そんな子にキスした自分も大概おかしいのかもしれない。
「三回目はちゃぁんと目を閉じてたね」
「寝てたからな」
「たぬきのくせに」

肩をすくめて笑い合っこして。
髪を引っ張られて、膝の上に乗ってあげた。

「お前も、目ぇ閉じろや」
「断る」
「んじゃ俺も断る」




四回目なのにレモン味なのは、もしかして、唐揚げに添えてたせい?