フリンズさんの秘密を何とか誤魔化す話

※捏造設定にご注意をください
※リンネアが居ます

「こんにちは! お久しぶりですねー!」
「やっほーぅ‼︎」
「リンネアちゃんとルミちゃんだ! こんにちはっ」

 スペランザで一人ご飯を食べていると、ちょうどお店に来たらしい二人と出会った。少し混雑していたし、私との相席を勧めてみたところ、目の前の席にリンネアちゃんが座ってくれた。
 
「おいしそうですね!」
「そうでしょう? と言っても、いつもの『鳥肉のホワイトフラワー漬け焼き』だけどね。リンネアちゃんにもお馴染みの」
「はい! スペランザの料理はどれもお勧めですからねっ」
 
 リンネアちゃんも、馴染みのホラガイ団の小さな店員さんに注文を済ませ、いつも背負っている赤いリュックを椅子に下ろした後、鞄からいくつかの鉱石を取り出した。ルミちゃんもご飯タイムらしい。
……って、あれ、ルミー? どこー⁇」
 いつもフラフラと歩き回るルミちゃんを彼女は見失ったらしい。頭の羽根をパタパタと動かしながら辺りを見回すリンネアちゃんに対し、私はクスクス笑いながら彼女の後ろを指差した。
「リンネアちゃん、貴女の真後ろに居るよ?」
「え! あ、居たー! はーいルミ、どうぞっ」
 真後ろを向いてルミちゃんにヒョイヒョイと鉱石を投げ渡している。ルミちゃんも慣れた様子でパクパク食べていて、二人とも可愛いなぁ……と思っていたが、ふと……気になるものが見えた。

……それ、綺麗だねぇ」
「え、何がですか?」
「リンネアちゃんの、その背中の結晶」
「あー、こちらですね?」

 いつもはリュックに隠れがちな彼女の背中に見えた、キラキラと輝く結晶。彼女は器用に自身の背中を見て、また頭の羽根をパタパタ動かした。
「はい! これは私たちフェイにしか現れない印でして」
「うん、知ってる」
…………知ってる?」

 ――あっ。

「どうして知ってるんですか? 誰から聞いたのですか? まだ貴女には説明したことがないと思ってましたが、どこで? もしかして、私以外にもフェイの知り合いが⁈」
 待って……止まってくれー! 勢いよく立ち上がったリンネアちゃんは、今にも机に身を乗り出しそうな様子で私に迫る。ひーん、失言だったどうしよう……

「どうされたのですか?」

 なんと、そこには救世主となりうる――というか、そもそもの発端と言えるフリンズが現れた!
 なんと良いタイミングなのか。彼はそのまま、私の椅子の隣に立った。
 
「いま丁度ですね、彼女が私以外のフェイとお知り合いだと伺ったところだったので、どこで出会ったのか、どんな方なのか、どの種類のフェイなのかなど、色々聞こうと思いまして」
 リンネアちゃんは、いつのまに身につけたのか、赤いアンダーリム眼鏡の縁を指で押し上げた。いや、私はフェイの知り合いがいるとは……まだ何も言ってないんだが⁈
 というか、いま隣にいる人がフェイです――なんて言えたらどんなに楽だったか。……言える訳ないんだけど!
 
「あぁ……なるほど」
 フリンズはフリンズで、なるほど……じゃないんですよっ。真顔のまま横目で私に視線を寄越してくるので、助けてよぉ……と眉をへの字に曲げながら願いを込めて視線を返した。

「そういえば、僕も以前伺ったことがあります。確か……古い友人にフェイがいるのだとか。――そうでしたよね?」
「そ、そうなの! でも最近は会ってなくて……えへへ、今はどこにいるかさっぱりで……

 さすが口から出まかせが上手い男――褒めてる――フリンズ、スラスラと嘘ではない真実を隠した言葉が出てくる。便乗する形でなんとか話を繋げる。

「なるほど、そうでしたかぁ。それは残念です、どんな方なのか……とっても気になりますねぇ。……でも、貴女の目が動揺からか、少し震えていますよ? それは人間が何らかの理由で焦っている時などの特徴でして――
 ひえ〜!野外生物の専門家は、人間の観察も得意なの⁈ この時点で、もう私はリンネアちゃんの瞳を見返すことができず、虚空を見つめるしかできなかった。だって絶対ボロが出る!

――おや、そろそろ約束の時間ですね」

 そう呟いたフリンズは、そっと私の手を取り椅子から立たせた。約束……?なんかあったっけ……じゃない!これは彼からの助け舟なんだ‼︎
……そう!これからフリンズと出かける予定だったんだぁ。ごめんね、ご飯代一緒に払っておいて貰えるかな?」
 リンネアちゃんの前に自分が食べたご飯代、そこから少し追加した金額のモラを置く。
…………はい、それぐらい構いませんよ。それではまた『今度』、ですね」
「うん、またね!」

 私の手を優しく引くフリンズに身を任せながら、リンネアちゃんに手を振って別れる。
 大分焦ったけど……な、なんとかなった……。もしフリンズが来なかったら口を滑らせていたかもしれない。とても危ない。
 ……しかし、次会った時どうしようか、ね。私は歩きながら、はぁ……と小さくため息を吐いた。



「ふふ、貴女の『古い友人』は、今も隣に居ますね」
……それは本当に、『友人』なのかな?」
 隣を歩く彼に対し、上を向いてそのように告げれば「今はもう『恋人』、ですね」と優しく微笑むフリンズの顔が見えた。
 
「そういえば、何故貴女はフェイの体に結晶があることをご存知なのですか?」
「何故それを……フリンズが聞いてくるの?」



『普段は隠れていて、見えない綺麗なもの。』