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Public ヌヴィリオ
 

ウィーピングウィローの約束 1.5

XXXX歳と17歳のヌヴィリオ🌧⛓️(転生現パロ風味シリーズ第2弾のその後のちょっとしたおまけ短文)

車は静かに夜の街路へと滑り出していた。窓の外では、湖畔から続く路の街灯が並び、細くたなびく光の筋となって流れていく。運転席に座るヌヴィレットは、視線を前方に固定したまま、先ほどまでのやり取りを反芻していた。
理性は正常に機能している。
だがその内側では、制御のために張り詰めた何かが、常に限界ぎりぎりで保たれているのがわかる。
助手席ではリオセスリが片腕を窓際に預けながら、片時も目を離さずヌヴィレットを眺めていた。
流れる景色には目もくれず、ただじっと観察するような、あるいは何かを確かめるような視線。
……何か言いたいことが?」
一言もなく突き刺ささり続ける目線に、ついに我慢できずに問いかければ、リオセスリは曖昧に濁した言葉を返した。
「まぁ……うん、そうだな……
ゆったりと脚を組むと、そこに肘をつき、手のひらに顎を乗せる。
「ヌヴィレットさん」
いつもとは違う、一音一音を慈しむような響き。
まるで深海の底を漂うような、途方もなく穏やかな調べだった。
自分の名前が聞き慣れないものに思えるほど贅沢に紡がれて、突然の空気の変化に戸惑う。
……聞こえている」
何を返せばいいかわからず、ひとまず話を聞く姿勢をとる。
「それはよかった。聞こえてなきゃ困るからな」
そう答えながら、リオセスリは下から覗き込むようにヌヴィレットの横顔を熟視した。
数秒間の長い沈黙。
その後、あまりにもあっさりとした声音で。
「好きだ」
途端、ヌヴィレットの手が、強くハンドルを握り込んだ。
昔から、わかりやすい言葉にするよりも行動で示すタイプの人間だった彼が、このような単純な単語で愛情表現をすることは非常に珍しい。
このタイミング、この距離、この状況でそれを言語化されるとは想定していなかった。
咄嗟に車を停める場所を探すも、海の上の高架では走り続けるしかない。
忙しなく目線を動かすヌヴィレットに対して、間を置かず、躊躇もなくリオセスリは続けた。
「せっかくだから高等学部生のうちに、ヌヴィレットさんとデートがしてみたかったんだが」
「リオセスリ殿」
運転中ではよそ見ができない。
「駐車するまでその話は……
どんな顔をしてそんなことを宣うのか、まともに表情も見られないこの状況で語られてはたまらないと遮るが、彼はお構いなしに続ける。
「こういうの、いわゆる青春ってやつだろ。初めてのまともな学生生活だし、昔は縁がなかったからな」
軽く笑うが、その声に乗せられているのは純粋な願望だった。
「どうせなら、あんたとやってみたかった」
ヌヴィレットの喉がわずかに鳴る。どのような言葉を返すべきか、判断が遅れる。それほどまでに、その内容は彼の内側を直接的に揺さぶった。
……その件については」
ようやく絞り出すように言葉を発した瞬間だった。
「大好きだ」
重ねるように、リオセスリが言った。
今度は、わずかに笑みを含んでいる。だが軽口ではない。明確に、意図して、選んで発したものだった。
ヌヴィレットの思考が高速回転する。
理解はできる。分析もできる。だが、それに対する最適な反応を選択する前に、別のものが先にせり上がる。
触れられないとわかっている状況で、あえてそれを言うのか。
理性の奥で、極めて原始的な衝動が、明確な形を持って膨れ上がる。
リオセスリはその反応を見逃さない。むしろ、それを確認するように身を乗り出した。
「どうした?」
わざとらしく首を傾げる。その距離の近さが、先ほどの軽い接触を思い起こさせる。
次の瞬間、彼の指先が、ヌヴィレットの髪に触れた。
するり、と。
軽く梳くように、ほんの一筋だけ。
……リオセスリ殿」
低く、抑えた声が落ちる。
「やめた方がいい」
単なる注意よりも、警告に近い重さだった。
だがリオセスリは引かない。
「なんだ、これくらいなら問題ないんじゃなかったか?」
さっきの仕返しだ、とでも言いたげな調子で、もう一度、同じように指を滑らせる。
その接触はとても軽いが、余計に厄介だった。
指が触れているわけでもないのに、確実にこちらの理性を掻き乱してくる。
ヌヴィレットの指が、ハンドルに食い込む。ぎしり、と軋む音が、高く車内に響いた。
……君は」
熱を下げるように、言葉が一度途切れる。
呼吸を整え、それでも抑えきれないものを気力だけで押し込めた。
「状況を理解した上で、その行動を選択しているのか」
リオセスリは、今度ははっきりと笑った。
「もちろん」
悪びれもなく答える。
「さっきの仕返しもあるが――
穏やかに紡がれるその響きに、頑なに車線を捉えていた視線を、とうとう我慢できずに横へ向けてしまう。
「単純に、言いたくなっただけだ」
好きも、大好きも。
春の陽だまりに微睡むような、どこかたおやかな飾り気のなさ。
その様子に、ヌヴィレットは完全に言葉を失った。
理性はなお機能している。だが、制御に割かれる負荷が限界に近い。制限際までスピードを落とし、しっかりと目を合わせた。
……これ以上は、本当に危険だ」
低く、明確に告げる。
それは忠告であり、同時に懇願でもあった。
リオセスリは数秒その様子を見つめ、それから小さく息を吐いた。
……わかったよ」
ようやく手を引く。
だがその表情には、どこか満足げな色が残っていた。
「そんな顔をするくらいだ。やめておこう」
からかい半分、しかし完全な悪意はない。
ヌヴィレットはしばらく何も言わなかった。やがて、わずかに息を整え、前方に視線を戻す。
「私は今……人の言葉の限界を感じている」
「そうなのか。俺にわかる言語で頼むよ」
再び速度を上げ、家路を急ぐ。
彼に門限を破らせるつもりはない。
「この身が滅ぶまで、君とともにありたいと思っている」
しばらくしても答えはなく、ただ頷く気配だけが感じられた。
車は夜の海を進む。
触れることも、抱き寄せることもできない距離のまま、それでも確かに互いを強く意識しながら。
その均衡は、正しく、崩れないまま、静かに続いていた。