うすねず
2026-04-27 00:23:07
2929文字
Public カイスト
 

裏鋭さんがイクスプラクさんの介錯するだけ

捏造が甚だしい。
イクリエなんだかリエイクなんだかわからない落書き文

委員会管理下の世界で少しやりすぎてしまった。
どうしても気になる急所があったので刺したところ、急所が連鎖的に反応してしまったらしく思いの外被害が大きくなってしまったのだ。最終的に町が一つ消えてしまった。
しっかり観察してもたまにこういう事が起きてしまう。
捕縛された裏鋭に対し、委員会が課したのは一万年の奉仕活動だった。些か長過ぎるような気もするが、捕縛しにやってきた委員会所属のCクラスの急所をうっかりいくつか刺してしまったことが関係しているのかもしれない。
うっかり刺した件については裏鋭も若干の後ろめたさは感じているので特に反抗することもなく従う。
しかしCクラスとはいえ、ああも急所がわかりやすいのもどうなのだろう。

奉仕活動ではそれなりにこき使われた。
人手が足りないそうなので猫ならぬ急所狂いでも使えるものなら使いたいといったところなのだろう。
委員会の仕事は制限が多く裏鋭にとってあまり面白いものではない。
しかし、許される範囲内であれば委員会の蔵書を読めるのは嬉しい誤算だった。管理下の世界で発表される文書や論文、委員会の会報などカイストから見れば当たり障りないものばかりだったが裏鋭にとって不満は無い。
それに貪るように読み、知識を蓄えている間はそこら中にある急所を刺さずに済む。
一度裏鋭の視線に耐えかね吹っ掛けてきたBクラスの急所を刺してしまって委員会から警告をもらっているのだ。
委員会からの依頼に反さない程度であれば急所を刺すこともできるとはいえ、指示された範囲内のものしか刺せない状況は予想以上に裏鋭にとってストレスになっていた。
五千年ほど耐えたあたりでいっそのこと逃げ出してしまおうかとも思ったが、あからさまに委員会に反旗を翻せるほど裏鋭は愚かではない。
そんな風に鬱憤を溜めていた裏鋭に対し、変わった依頼が持ち込まれた。
それはある土地にかけられた呪いの根絶してほしいというものだ。
委員会所属のカイストたちが何人か取り込まれたまま戻って来ないのだそうだ。
一定以上の我力を持っている存在は強制的に取り込まれるため強いカイストほど苦戦するらしい。裏鋭が選ばれたのは、町を土地ごと殺した実績と、裏鋭の我力量がギリギリでその下限値に引っかかないから、とのことだった。
被害が出ている割に裏鋭一人に任せるとは随分と杜撰だが、正式な委員会メンバーでもない裏鋭ならば追加で取り込まれても困らないということだろう。
その代わり、呪いさえどうにかすれば地区内では何をしても良いらしい。
裏鋭は二つ返事で引き受けた。
まあ、今の裏鋭の立場では引き受ける以外の選択肢はそもそも無いのだが。

森だ。
線が引かれている。ここから先は呪いの範囲内だ。
特に躊躇うこともなく踏み込む。少し空気が澱んでいるようだ。

微かに広がる我力はどこか覚えがあった。
この土地に足を踏み入れて返ってこなかったカイスト達の名前は事前資料で把握している。その中にいくつか見覚えのある名前もあったので、その誰かのものかもしれない。

「イクスプラク」
……裏鋭か」
予想通り、結界の中心地に転がっていたのはそれなりに馴染みのある顔だった。
イクスプラクの首から下は臓器から末端神経まで全てが開かれていた。薄く開かれた体は微かに脈打ち、徐々に地面と同化しながら視界の先まで続いている。
目を凝らせば裏鋭の足元にも薄っぺらい膜が広がっていた。
もしかしたら今まで裏鋭が踏んできた地面にもイクスプラクの一部が含まれていたかもしれない。
裏鋭がこうして立っているだけでも相当の苦痛をもたらしているはずだが、イクスプラクの顔に浮かぶのは普段と変わらない疲れたような表情だけだ。
空間座標を固定して宙に立てばその苦痛を軽減できる可能性もある。しかしそこまで気を使う必要のある相手でもないと裏鋭は判断した。
……さて、どうするべきだろう。
救助は依頼に入っていない。
委員会も裏鋭に対してそういった期待はしていないだろう。途中で遭遇した何人かは結果的に救助したような形になったが。
イクスプラクをスキャン・モードで眺めると頭部には淡い光点がいくつか見えるが、それだけだ。究極の急所……魂の座は見当たらない。薄く広がる肉体にも所々にぼんやりと光点が見えるだけだった。そして、かなり遠く離れた……地中深くにいくつかの光点が見える。その光はイクスプラク自身の頭部に見えるものよりも強い。術式に組み込まれたことで急所の位置も変わっているのだろう。
わざわざ頭部を残しているのはダミーとしての役割を期待してのことか、それとも結界の機能を維持するために必要なのか。
結界そのものを写すように視界をずらすと光点の場所が変わる。イクスプラクにも光点はあるが光は淡い。
地面の奥深くに強い光点があった。
強く輝く点は、それがこの結界の急所であることを示している。

「この土地の急所と呪術の急所、そしてお前の急所はかなり近い場所にあるようだ」
「そうか」
イクスプラクはどうでもよさそうに相槌を打つ。
土地にせよ呪術にせよ、この位置だとイクスプラクの急所もいくつか巻き込むだろう。
……刺してしまってもよいのではないか。
どうせもう助からないことは目に見えている。委員会との契約に反するわけでもない。
衝動がジリジリと裏鋭を焦がす。
しかし、観察を続ける内に新しい光点が見え始めた。呪術と、土地と、イクスプラク、これら三つの要素を一つの構造として捉えた時にだけ見える急所だ。
どうせならこの急所を刺したい。
見え始めた光点はまだ朧げだ。これは究極の急所ではない。
「できれば究極の急所を刺したい。お前と話すことが糸口になりそうだ。暫く付き合ってくれ」
「お前は……はあ、いい。わかった」
イクスプラクは疲れた声で答えた。
何を聞くべきだうか。観察して手に入る情報もあるが、当人視点の情報もまた急所を見つけるためには重要だ。
「かなり広く広がっているようだが、感覚はあるか」
「ある」
まずは基本的なことから聞くべきだろう。
どのような感覚か、痛覚の程度は、我力の流れは、ねじれ結界は使えるのか。
「直近の食事は」
「本当に必要なのか、その質問は」
「ああ」
……オムライス」
「ふむ、この場に来た時来ていた服は」
「普段と変わらん」
全く関係なく思えるだろう質問にもイクスプラクは淡々と答える。
その後も質問を重ね続ける。返答の際の筋肉の動き、広げられた体と密接した土地の我力の流れ、様々な情報が裏鋭の無意識下で最適化され、スキャン・モードに反映される。
……見えた。それでは、今から急所を刺すが、委員会に対して伝言はあるか」
「ない」
返答の音が消えるよりも先にイクスプラクの頭が色を失い傾く。同時に裏鋭の立つ地面も色褪せ、質量を失っていた。
そのまま踏むと崩れるので、空間固定で空中を歩く。満足感からかその足取りは軽い。
森の木々も存在感を失っている。裏鋭にははっきり感知できるわけではないが、呪いも動作を停止しているはずだ。
全てが停止した森の中で裏鋭だけが動いていた。