mochimochizucchini
2026-04-26 18:47:20
7298文字
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Reversible

現在執筆中の灰レムレム本のノベライズ版のサンプルです。

※漫画版とだいたい同じ箇所までの掲載となります
※出血描写、捏造モブ・魔物、魔導の解釈妄想などやりたい放題ですが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです
※こちらは執筆中の作品のため、完成時には構成や表現等が変わっている可能性があります。あらかじめご了承ください







———その日は、朝からずっと嫌な予感がしていた。
何とも言い難いその不快感は、大好きな苦いお菓子を食べても、コーヒーを飲んでも全く収まる気配はなく、今自分のそばに騒がしいやつが居ようものなら即お菓子にしてしまいそうな勢いだった。


もういくつ目か分からない灰色のキャンデーを口に放り込み、ガリッとかみ砕く。
……こういう時は、お気に入りの書物でも読んで心を無にするのが一番だ。
そうやって無理矢理腹の虫を落ち着かせようと椅子から立ち上がった瞬間———


ッ!!!」


突如、酷い目眩のような感覚と寒気に襲われた。
そして、頭によぎる『彼』の姿。

嫌な汗が頬を伝う。



………………まさか」



『レムレス』は僕自身であるだからだろうか。
かつてひとつの命であった双子同士がテレパシーのようなもので繋がることがあるように、僕もまた、彼がどこにいて何を考え、何をしているのか、時折感じ取ることができるようになっていた。


そして、先ほど訪れた悪寒。
それが意味するものは———



「チッ………くそっ!」



思わず舌打ちをしながら、僕は箒をひっつかみ、彼が依頼で向かうと話していたダンジョンへ急行した。





迷宮内の魔物ザコはなかなかに歯応えがあるらしいやつらばかりだったが、そんなことはお構いなしに問答無用で全員お菓子に変えつつ、僕は全速力で『彼』が向かったであろう最奥部へと歩を進めた。


暫く進んでいるうちに、通路の先に光の差す広い空間が見えてきた。
………よく見ると、その中央付近の床に「何か」が倒れている。




「!!!!!」



辿り着いた僕がそこで目にしたのは



どす黒い血溜まりの中で、ボロボロになって倒れている『彼』の姿だった。




「レムレス!!!!!」



僕は無我夢中で彼の元に駆け寄り、その身体を抱き起こした。
血液を大量に失っているせいだろう、体温は酷く冷たく、顔色も「青白い」を通り越してもはや真っ白になっていた。
鮮やかな山吹色だったはずのインナーは血や土ぼこりで薄汚れ、腹の真ん中には巨大な裂傷。
いや、もはや切り傷というより「抉り取られた」ような、そんな惨い傷があった。
戦いが終わってから時間が経っているはずなのに、今もなお傷からは血がどくどくと流れ続けている。


あまりの凄惨さに、僕はおもわず顔をしかめた。


……これが常人ならば、とっくの昔に命を失っていたはずだ。
ここまでの大怪我を負ってなお、わずかでも息があるのは「魔導師」という力の強いイキモノがなせるわざなのだろうか。


僕は急いで腹の傷に治癒魔法をかけ……ようとした。


………あれ?」


最大限の魔力を込めているはずなのに、傷が治るどころか血が止まる気配がまったくない。


…………そういうことか」



恐らく、レムレスが倒したあの竜の爪には、治癒系の魔力を阻害する毒か呪いの類が込められていたのだろう。
奴に関する情報が殆ど無かったというのも頷ける。
今まで戦った者は皆、”これ”にやられて命を落としたのだ。



こうしている間にも、刻一刻とレムレスの身体からは命が失われていく。
何か他に手立てがないか考えようとした———その時。



パリンッ



通路へと続く入口の方で、硝子のように、何かが砕け散るような音がした。
振り返ってみれば、レムレスが戦いの前に仕掛けたのであろう結界が解除されるところだった。


……もうしばらくすれば、血の匂いを嗅ぎ付けた魔物どもが、一斉にこちらへと襲い掛かってくるだろう。このままここに留まり続けるのは危険だ。


治療より先にここを脱出しようとワープの魔法を唱えようとした直前、ふと僕は口をつぐんだ。……この術は、どんなに遠く離れた空間でも跳躍を可能にする。だが、非常に便利である反面、見た目以上に体に負担がかかるのだ。


あと少しでも負荷を与えれば死んでしまいそうな虫の息の彼に使うのは、あまりにもリスクが大きかった。


しかし、今にも死にそうな人間を完璧に庇いならこのダンジョンの入り口まで戻るのは、いくら強いチカラをもつ僕であっても至難の業だ。


(一体どうすれば………?)


必死に思考を巡らせていると、


………あ」


ふと「ある考え」が思い浮かんだ。



……なぜこんな簡単な事に気がつかなかったのだろう。
思いついたその妙案に思わず口の端をほころばせながら、僕は「いつものように」あの呪文を唱えた。



「『お菓子にな〜れ』!」