風花莉亜
2026-04-26 09:41:47
2994文字
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どうやら俺達はお似合いらしい。


第39回とどち版ワンドロワンライ参加作品。千早くん視点。千早くんの家でただ会話してるだけの2人。犬派とか猫派とか衣替えとか。今回も自分でも何を書きたかったのか謎。いつも通りなんでも大丈夫な方向け



「ねーねー、葵ちゃんは犬派? 猫派? 俺は……
「俺は?」
「選べなぁい」
「あっそ」
「ひどっ!」
「テメェで言っといて選べないもクソもあるかよ」
「えぇ〜、そんな風に言わなくってもいいじゃん!! 葵ちゃんの意地悪〜!!」
「だー!! 引っ付くなっての!!」
「やだやだやだぁ〜」






……なーんて話を要としたんだが、千早はどっち派?」

唐突に、ローテーブルを挟んで向かいに座る藤堂くんが、そんな事を口にした。
先程まで一緒になって課題に取り組んでいたのに、藤堂くんの手に握られていたはずのシャーペンはテーブルの上に転がっている。
早くも集中力が切れたのか、コイツ。
脳ミソまで筋肉に犯されていると言っても過言では無いので、仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが、だからと言って飽きるの早すぎでしょ。
俺が呆れているなど気付かない藤堂くんは、要くんとした会話を思い出したのだろう、頭上を指差している。
が、勿論そこに映像が映っている訳ではないので、一緒になって上を見上げた所で何もなかった。
ただ、二人の会話なんて想像に容易いので、映像なんかなくったって簡単に思い浮かべてしまえるので、全く問題はないのだが。

「で? 千早はどっちなん?」

頬杖をつきながら問うてくるその顔は、なんだか楽しげだ。
俺の答えに何を期待しているのかはさっぱりだけど、こんなにも興味を示しているのなら無視する訳にもいかない。
カチリ、とシャーペンの芯を出しながら考える素振りをしてみたが、正直に言うと、答えは既に決まっている。
でも、もう少しだけこの藤堂くんを見ていたい、と心が訴えてくるので時間稼ぎをする事にした。
そうですねぇ、なんて尤もらしい台詞を口にしつつ、手にしていたシャーペンをクルリと一回転させる。
それから再び藤堂くんへと視線を移すと、先程とはまた違った種類の顔をしていた。
楽しそうなのは同じ。
けれど、先程はどちらかと言えば大人びて見えたのに、今度は玩具を前にした子供のように目を輝かせているではないか。
藤堂くんって表情が豊かで、それでいて、素直なんだ。
もう一度シャーペンをクルリと回すと、どうやらコレに反応しているようだと気付く。
あぁ、うん、子供のようにではなく、正しく子供だったらしい。
更にもう一度シャーペンを回し、綺麗に円を描いて手に戻ってきたタイミングで、目の前の金色を見詰めながら「犬ですかねぇ」と口にした。

「へ? あ、あー、イヌ、犬ね」

完全に意識を俺の手元へと飛ばしていた藤堂くんは、『犬』という単語に一瞬だけ理解が追い付かなかったらしい。
犬か猫かの話をすっかり忘れてる辺りが藤堂くんらしいけど、そっちが振ってきたんだろ。
犬、犬、とブツブツ言いながら無意識だろう、シャーペンを回し出す藤堂くんに笑いが込み上げる。
精神統一の手段と化しているそれは、小学生なんかが見たら「すげー!!」なんて、それこそ先程の藤堂くんみたいな顔を向けられるに違いない動きだ。
こんなにクルクル回せるのに、なんであんなにも目を輝かせて俺の手元もを見ていたのか謎である。
久しぶりに見て童心に返ったとか?
よくわからないが、とりあえず、

「そういう藤堂くんは、犬と猫、どっち派なんです?」
「え」
「もう一度、言いましょうか?」
「や、聞こえてた、聞こえてたから」
「では、どっちです?」
……ねこ」

へぇ、猫派なんですか。
考える素振りをひとつも見せずに出された答えは、俺とは反対のものだった。
てっきり犬派かと思っていたのに。
どっちが犬かわかんない、みたいに愛犬と一緒にじゃれ合うイメージがあった為、猫派だと言うのは意外だ。
あぁでも、雨が降りしきる中、ヤンキーがダンボール箱に入った猫に傘さしてあげるの図、を考えると自然かも?
なるほど、と納得した所で、藤堂くんが「だって、お前みたいだし」と頬を掻きながら言った。
お前みたい、ってなんだ?
俺が猫っぽいから、猫派とでも言いたげな……え、あ、そうなんですか?
ほんのり頬を赤く染めているのを見て、この結論は正しいと確信する。
なんか、藤堂くんって、俺の事めちゃくちゃ好きじゃないですかね?
そう思ったら、悪い気はしなかった。

「藤堂くん」
「な、んだよ」
「にゃあ」

藤堂くんが俺の事を猫っぽいと言うのなら、一層の事全力でなりきってやろうと、猫のポーズ付きでひと鳴きしてみせる。
俺がやったとて可愛くはないだろうな、と頭の片隅で考えながら。
さて、藤堂くんはどんな反応を見せるだろうか?
あまり考えたくはない事だが、気持ち悪がられたら死ねるから、そうならない事を願おう。
自らやっといて何言ってんだって話だが、やってしまったものはもう取り返せないので。
死刑執行を待つような気持ちで藤堂くんの反応を待っていると、ややあって盛大な溜息が聞こえてきて、心臓がドキリ、と音を立てた。

「お前さ、ただでさえ衣替えして無防備になってるってのに、そんなんされたら俺はどうしたら良いんだよ!」
「ちょっと言ってる意味が」
「半袖から伸びる白い腕が眩しくてちょっとドキッとするってのに!! それなのに、しなやかな動きで猫のポーズしかも鳴き声付きとかされてみろ!! 無理だろ!!」

握り拳を作りながら力説されたとて、俺には理解不能だった。
気持ち悪がられたらどうしよう、なんて思っていたのが馬鹿らしくなるくらい、藤堂くんの中ではアリ寄りのアリらしい。
何言ってんだコイツ、ついついそんな目を向けてしまう自分がいたが、これ絶対に俺は悪くない。
同じ状況に陥ったら、皆こうなる。
だって本当に、少しも藤堂くんの言っている意味がわからないのだから。
そんな俺を置いてきぼりにして、藤堂くんは更にヒートアップしていった。

「なんかもうこの際だから言うけど、衣替えしてからここ数日、男女問わずお前の事めっちゃ見てるのが気にくわねェ。冬服の時は萌え袖だったから半袖が珍しいのか知らんけど、見て良いのは俺だけだっての!! はっきり言って、見た奴全員許さないって思ってる!!」
「そんな事を俺に言われましても」

衣替えなんだから仕方ないでしょ。
全員に等しく訪れるものだし。
と言うか、それを言うならそっちこそ。
ユニフォームや練習着が半袖なのは見飽きているけど、制服はまた違う。
逞しい腕を惜しげも無く晒しておいて、尚且つ胸元のボタンだってちょっと開けすぎではないですかね?
きっちり上までボタンしろとは言わないけど、もう少しその胸筋をしまう努力はしてほしい。
ガッツリ見えてる訳ではないって?
そう、チラチラ見える、という所にタチの悪さを感じるのだ。
そんな藤堂くんを見て良いのは俺だけなので、やっぱり同じく、

「俺も許してないんですけどね〜」
「あ? なにを?」
「そうですね、返事は全部『ワンッ』で答えてくれたら、教えてあげても良いですよ?」
……
「アハハ、変な顔」
「趣味悪ィ」
「そんなの、お互い様でしょ」


衣替え如きで許せないだのなんだの言ってるのなんて、俺達くらいなものだろう。
似た者同士でお似合いだよね、なんてイマジナリー要くんがウインクした──────……



END