おじいちゃんのレシピ ライスボール

おじいちゃんの作るごはんシリーズ……になる予定の1作品目。ゆるうちよそ。

ライス 適量
適宜(拘ったら駄目)
残り物 この際なんでもいい


我が家のライスは鍋炊きである。竈門など無いからだ。パン窯ならある。

クガネで食べるライスは一味も二味も違う。ドマノヨアケ、という名前らしい。ひんがしの民が米へ掛ける情熱はそら恐ろしい。愛想良い茶屋の娘の言うことには、ヤキモノの鍋でも米が炊けるし、水加減に蒸らす時間、エトセトラエトセトラ。
ひとまず土鍋というものを買って、メモに認めた通りにドマノヨアケを炊いてみた。おいしいね、これ。

「というわけだよ」
「そうか」
塩焼きにした切り身のサーモンを包んだライスボールを食む彼女は、珍しく機嫌が良いと見える。好きだものね、サーモン。おいしいよね。
ほかほかのライスを適量、素手に取る。手には塩を先に付けておく。産地にこだわりだしたらキリが無いことに気が付いたので、手に入り易いラノシア産の、所謂普通の塩が殆ど。ボウルに水を張って側に置くと、握る時に楽になる。
「包むものはね、ライスに合うなら何でも構わないと思うんだ」
卵を焼いたものでも、鶏肉を揚げたものでも、コールスローサラダなんかでも美味しいかもしれないね。何でも王道はウメボシや昆布を炊いたものだそう。
「残り物を美味しく食べるには、このやり方がぼくには合ってね」
この際だから何でも握っちゃおうね。どれに何が入っているのかも、食べた時のお楽しみで面白い。ピクルスも握っちゃえ。
「やってみる?」
おっかなびっくりの様子で差し出された小さな手に塩を塗り、溢れないようライスを乗せる。初めてだから、少し冷ましてから。更にその上に、切って焼いたヴルストを。
「こう、包んで。優しく力を入れてね、ライスが崩れないように」
ぐっちゃり、とならない辺り、シノンにしてはかなり繊細な力加減を努めているらしい。
「不恰好でもいいんだよ」
上手にボールにならなくてもいい。ひんがしの民はこれを素早く三角形に握るなんてことをするけれど、つまるところ美味しければいいわけで。
……こう?」
卵のような、少し固いライスボール……ライスエッグかな。
「かわいいね」
そう返せば笑った彼女に、しわすちゃんにあげようかと続けたものの。
帰宅した当の彼女が、ライスボールにミソを塗り焼いて仕上げるなんてことを披露したものだから、シノンは少しだけ凹んでいたし、ぼくはレシピに新しい頁を追加することになった。

ご馳走様でした。