三毛田
2026-04-22 22:06:25
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35 【35/近づいたけど離れてく】

35日目
近づいて離れて、また近づく

 列車に乗ったばかりの頃に比べたら、確かに距離は縮まってきているだろう。
 しかし、ある日を境に急に余所余所しくなって。声をかけただけで離れていくほど。
「なあ。壁ドンしちゃった俺が悪いのかな?」
「詳しく」
 泣きたくなるのをこらえながらなのの前でこぼせば、目を輝かせながら迫ってくる。
 迫ってくるなら、丹恒にしてくれ?! という叫びは、もちろん飲み込む。俺、いい子だもの。
 まるで賄賂だと言わんばかりに、勢いよく突っ込まれたクッキーを飲み込んでから、話し始める。
 パムに頼まれたものを買いに街に言った時、走り回る人々を避けるために、抱き寄せたこと。そして、避けきれなかった人にぶつかられて、自然と壁ドンする体勢になってしまったこと。
 直前に二人でおやつを食べていたからだろうけど、爽やかな匂いに微かな甘さを感じて、少しドキドキしていたことは内緒にしておく。
「こう、わざとじゃなくて事故で壁ドンしちゃったって、された側からしたらちょっとドキドキしちゃうシチュエーションだよね~」
「する?」
「ウチの話聞いてた?」
 ふざけて言ってみたら、顔をしかめられた。可愛いのに、そんな顔するなよ。
「可愛い顔が台無しだぞ」
「誤魔化されないからね~?」
 えいえい! と、指で頬をつつかれた。
「まあ、丹恒本人に聞くしかないでしょ」
「だよな~」
 カリカリと、棒状のスナック菓子を音を立てながら食べる。二人で。
「丹恒。今いいか?」
 資料室のドアをノックすると、ガタガタと激しい音。
「な、なんだ」
 少々乱れた髪を撫でつけながら、出てくる。
 髪が乱れていても可愛い。いや。可愛いってなんだよ。
 自分で思いながら、自分でツッコミ。
「大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない」
 いつもなら、俺の手が届く範囲にいてくれるのに、今は踏み込まないと触れることが叶わないような距離に。
 俺、何かした?
「でもさ」
「お前のせいじゃない。俺自身の、問題なんだ」
 俯いて、ボソボソと。
 その表情にキュンキュンするし、やっぱり可愛く見える。
「丹恒」
「なんだ」
「俺、お前のことが、可愛く見える」
「はぁ」
 何を言ってるんだ、こいつ。という怪訝そうな表情。それすら、俺を惹きつけて。
「うーん……じゃあ、これからお前に振り向いてもらえるように頑張るから!」
「努力などしなくてもいい」
「へ?」
 拳を上に突きつけるように挙げると、そんなことを口にし。
「お前のことがす、好き……だからな」
 耳まで真っ赤にしながら告げてくる。