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2026-04-22 18:41:09
11259文字
Public 小説
 

【リバリン】リンクの結婚🔞

<2025.8.31初出>「リーバルの結婚」ネタを立場を逆にしてみた全く別の話。

【⚠️18歳以上のみ閲覧可】

 リーバルは苛立っていた。
 苛立ちの原因は、誰もが知る世界を救った英雄が一人、退魔の剣の騎士ことリンクその人だ。
 きっかけは、久々に登城したハイラル城で耳にした噂だった。

--

「リンクが結婚?」

 ハイラル城の中庭近くの回廊を歩いていた時、耳に入ってきた思いもよらない言葉にリーバルは驚愕した。思わず裏返った声を出してしまってから嘴を抑えるが、飛び出てしまった言葉は元には戻らない。しまったと思った時にはもう、リーバルの声は回廊の中に響き渡り、中庭に集まって噂話に花を咲かせていた数人のメイドたちにも届いてしまっていた。
 リーバルも間違いなく厄災から世界を救った英雄の一人で、ハイラル王国でその名と顔を知らないものはいない。そんな有名人に噂話を聞き咎められたと思ったらしいメイドたちはサッと顔を青ざめさせて縮こまらせた。

(まいったな。)

 リーバルは内心舌打ちをしたい気持ちだった。
 リーバルだって普段であればよほど悪意のある内容でなければ一々噂話を聞き咎めたりはしないし、今回のようにうら若い乙女たちが楽しくおしゃべりをしている中に割り込むような無粋な真似もしない。しかしいかんせん、今回ばかりは内容が気になりすぎた。それはもちろんリーバルが誰それの結婚、といったゴシップ大好きだから、と言う訳ではなく(むしろ下世話な噂話は苦手な方だ)、話の中心にリンクの名があったことによる。

 と言うのも、リーバルとリンクには長らく身体の関係があるのだ。

 リンクとは厄災に対する戦いの混乱の中で、いつの間にかそういう関係になっていた。きっかけになった出来事はよく覚えていない。確かその日は珍しくいい酒が手に入って、魔物の軍勢との戦いも勝利を収めて気分が良くて、つまりは酔った勢いで気づいた時にはそういうことになっていたのだ。仮にも英傑同士で身体だけの関係を結ぶなんて、はたから見ればふしだら極まりないと思われるかも知れない。しかし、他人にこの関係は知られていないしこれからも知らせるつもりはないので問題ない。リーバルは今までリンクとの関係に特に不満を抱いていなかった。
 しかし、その当のリンクが結婚すると言うのであれば話は別だ。リーバルは青ざめた顔でチラチラとこちらの様子を伺うメイドたちを見てまたため息をつき、「ちょっと、その話を詳しく聞かせてくれる?」と声をかけたのだった。



 リーバルは中庭から離れた後、元の回廊を歩きながらもやもやした気持ちを吐き出すように息を吐いた。
 結局メイドたちの話を聞いて分かったことはほとんどない。リンクが結婚するらしいということ、正確には結婚するための相手を探しているらしい、ということだけだった。メイドたちは若く将来有望な近衛騎士のそんな色めいた話題に浮き立っていたらしい。それを聞いたリーバルは何とも言えない気持ちになった。

(──普通は、好きな相手がいるから結婚するんじゃないのか?)

 それなのに、結婚する相手を探しているとはどういうことなのだろう。テクテクと回廊を進みながらリーバルは思案した。火がないところに煙は立たないとは言うけれど、もしかすると噂が巡るうちに背鰭尾鰭がついて、本来の話とは全然違うものになっているのかも知れない。リンクのような有名人に関する噂が多くの民衆の興味を惹きやすいのは世の常だ。きっと何かの話が捻じ曲がって広がって、あんな噂になったのだ。きっとそうに違いない。

(まぁ、どちらにせよアイツに問いただせばいいのか。)

 リンクとは今日も逢瀬の約束をしていた。君に関してとんでもない噂が流れているよ。早くどうにかして噂話を訂正しないと、退魔の騎士じゃなくて『いつまでも結婚相手を見つけられない情けない男』だなんて称号に上書きされることになるよ。いつものようにそんな風にからかいがてら本人に確認すればいいのだ。
 リーバルは心の中でそう結論付けると、約束していたリンクの部屋へといそいそを脚を進めたのだった。


--

「そういえば面白い噂を聞いたんだ」

 リーバルはベッドの上でリンクを身体を絡ませ合いながらおもむろに嘴を開いた。リンクはリーバルの身体の下で脚を開き、身の内にずっぽりとリーバルを受け入れている。すでに一度、互いに果ていた。けれどまだ若い身体はどちらも熱を持て余しているのは明らかで、リーバルも一度果てたくらいでは収まらない欲と興奮に緩やかに腰を動かし続けている。リーバルのものを飲み込んだリンクの秘所は、きつく収縮を繰り返しながらもリーバルが吐き出したものでぬかるんでたまらない具合だった。先にも散々突いたせいでぷっくりと腫れた前立腺を抉るようにぐりぐりと押し上げると、リンクが腰を跳ねさせて身体を捩る。

「あ、ぅ……っ、う、わさ……?」
「そう。君が結婚相手を探してるって噂」

 快楽で潤んだ瞳をシパシパとさせるリンクに、リーバルは半笑いになりながら聞いた噂を伝えた。さて、いったいどんな話がこんな噂に変わったのだろう? きっとコッコが豆鉄砲を喰らったような顔をするに違いないリンクの反応を良く見ようと、リーバルはリンクの両腿を抱え直し身体をググッとリンクの方に傾けた。当たる箇所が変わったのだろう、リンクが鼻から甘い息を漏らしながら頭をのけぞらせる。「あぁっ」と声をあげるリンクの顎を捕らえ、リーバルは「ねぇ、君、結婚するのかい?」と重ねて質問した。リンクは気持ちよくてたまらないというような悩ましげな視線をリーバルに向け、抑えようとしても殺しきれない嬌声の合間に短く答えた。

「ぁ、っ、うん……っ」
「だよねぇ……って、は?」

 聞き間違いだろうか。リーバルは思わず緩慢に動かしていた腰を止めた。結合部から絶えず鳴っていた卑猥な水音が止んで、ハァハァというリンクの呼吸音だけが聞こえる。リーバルはリンクの呼吸が少し落ち着くのを待って、急に動きを止めたリーバルを訝しげに見上げるリンクに向かって再度確認した。

「えーっと、するの? 結婚?」
「する。結婚」

 聞き間違いではなかった。あっさりと肯定したリンクのことを信じられない思いで凝視する。リンクはリーバルを受け入れたままの肉壺をヒクヒクと収縮させながら、呆然とするリーバルを見上げて口を開いた。

「故郷の村の習わしで、成人したら相手を決めて結婚するんだ。俺はもう数年前に成人したけど、厄災との戦いがあってそんなことをしている暇がなくて……。でも戦争も終わったし世間も落ち着いてきたから、そろそろどうかって、村長が」

 なんだ、その話は。リーバルは聞いたこともない風習に眉を顰めた。

「へぇ? 聞く限り古臭い風習にしか思えないけどね。大体、君はもうその村に住んでいるわけじゃないだろう? そんな習わしに従う必要があるの?」
「まぁ、そういうわけじゃないけど。村には若者は少なくて、子供の頃に村を出て行った俺のことを覚えていてくれる人たちがいるんだよ。そういう人たちが、もう親も居ない俺のことを気にかけてくれているんだ。それに、みんな明るい話題を求めているんだと思う」

 だから、一応は相手を探してみるのだと。そんな風に主張するリンクによって、リーバルが馬鹿げた噂だと軽んじていた話はそのままそっくり事実へと格上げされた。思ってもみなかった事態に混乱し、リーバルは思わず無言になってしまう。

(は? じゃあコイツ、そんな他人への義理立てでこれから相手を探して結婚するつもり? なのに変わらず僕に抱かれてるの? それで相手が見つかって結婚したら、僕とはハイさよならってするつもりなの?)

 仮にもこうやって肌を重ねる関係を何年も続けてきているのに、リンクの言葉には全くリーバルのことを気にしているそぶりがなかった。リーバルがこうやって噂を聞き齧って真相を問わなければ、きっと結婚するつもりで相手を探していることすら話さなかったに違いない。確かに、リーバルとリンクは恋人同士ではない。肌を重ねても甘い睦言なんて囁きあったこともなければ、もちろん愛を誓い合ったという事実もない。でも、それでも、リンクのやり方はあまりにリーバルのことを蔑ろにしすぎなのではないか。そんな思いが沸々と湧き立っていた。今までリンクのことを自分のものだなんて意識して考えたことはなかったが、こんな風に勝手をされると無性に腹が立つ。
 黙ったリーバルの反応をどう思ったのか、リンクが「気になる?」なんて無神経な質問をしてきたのもリーバルの神経を逆撫でした。気になる。ぶっちゃけものすごく気になる。しかしそれをそのまま口に出せるほどリーバルの性格は単純ではなかった。

「ハッ! 君が誰と結婚しようと興味ないね」
「だよね。身体だけの関係だもんね」

 リーバルが動揺に声が震えないように意識して吐いた強がりに、リンクは何も気にしていないような声色で答えた。リンクが意識しているのかどうかは定かでないが、まるでリーバルは結婚相手の候補に掠ってもいないぞと牽制するかのような言葉選びにもカチンとくる。リーバルはむしゃくしゃした気持ちをぶつけるようにリンクの腰を掴みなおし、話に夢中になって少し萎えていた自身を扱くようにリンクの内壁に擦り付けた。打てば響くように反応する肉襞に包まれ、リーバル自身はすぐに硬く芯を取り戻していく。大きく開いたままのリンクの内腿がビクリと震える。

「んっ……!」
「その身体だけの相手に散々抱かれ慣れた身体で結婚なんてできるのかよ」

 憎々しい気持ちのままに、わざと蔑むような言葉を投げかける。
 リーバルが揶揄した通り、リーバルが腰の動きを再開させたことによって二人の腹の間に挟まれていたリンク自身も再び反応していた。そこを直接触られずとも、リンクは後孔だけで快楽を拾えるのだ。何年もかけて、そんな身体にリーバルが仕立てたのだ。それなのに、リンクはリーバルの手管によって淫らに乱れながらも「どうかなぁ」などとどこか他人事のような返事を返してくる。ムカつく。本当にムカつく。どうしてこう、ここぞという時にリーバルの神経に触れるような受け答えをするんだよ。
 リーバルは言葉に言い表せない苛立ちをぶつけるように、激しくリンクの身体を貪った。



***

 リンクの結婚相手探しの話題は、驚いたことにリーバル以外の皆にも周知のようだった。
 リーバルの記憶ではゼルダ姫やミファーなどは実はリンクに思いを寄せているのでは? と思わせるような素振りがあったように思う。リンクと身体の関係を結んでいるがゆえ気まずくてはっきりと確認したことはなかったのだが、リンクの結婚相手探しの話題をダシにさりげなく探りを入れたところ、どちらの姫もそれを笑って否定した。
 リンクの結婚相手が、少なくともあの二人のどちらかにあっさりと決まってしまうことはなさそうだ。リーバルはそれにホッとして、すぐにそんなことを思ってしまう自分に嫌気がさした。

(姫やミファーがそうじゃないからといって、僕がリンクに選ばれるわけじゃないのに。)

 そう考えてしまう自分が悔しい。まるでリーバルがリンクの結婚相手に選ばれたいみたいじゃないか。そう自嘲したところで、胸の内に沸いた気持ちは変わらなかった。そうなのだ。リーバルは選ばれたいのだ。

 だって、確かに関係の始まりは厄災との戦いの最中の混乱した時期だった。しかし戦争が終わってはや数年、厄災の残した混乱と傷跡がだいぶ癒え、もう「平和な世」といっても差し支えない今になってもなおこの関係は続いている。その意味をリンクは考えたことがあるのだろうか。
 厄災との戦いは険しく、初めは確かに持て余した性欲を、時にはやりきれない感情を慰め合うだけの関係だった。リンクとリーバルの強さは英傑の中でもツートップであり何かと一緒に行動させられることが多く、ひっそりと関係を結ぶのに都合が良かったというのもある。
 しかし今はそうではない。リトの村で自身も戦士として魔物の残党と戦う前線に立ちながら後進の育成にも携わるリーバルと、ハイラル王国に仕え姫付きの騎士であるリンクは意図的に予定を合わせない限り会うことはできない。しかも、リンクは職務の性質上基本的にハイラル城から離れることはないので、逢瀬となればもっぱらリーバルがリンクの元に訪れるのしかないのだ。いくら平和な世になったからと言って、リーバルだって自由気ままに好きな時にフラフラできるような立場ではないのだから、気軽にリンクの元を訪れているわけではない。何かとハイラル城への用事を重ねたり、遣いを買って出たり、時には事前に休暇を取るなど工夫をしてリンクと会う時間を工面している。そんな面倒をかけても良いと思うくらいには、リーバルはリンクとの関係を継続したいと思っていた。

 リンクとの逢瀬は一応は肌を合わせて欲を発散するためという体裁をとってはいたが、時間的にも精神的にも余裕が生まれたこともあり、昔と違って欲を吐き出してはい終わりということはなくなっていた。情を交わし合ったベッドの中で語り合うことも、言葉は交わさずともただ寄り添って過ごすことも増えた。確かに始まりは身体の関係だけであったけれど、少しずつにでもそれ以上の関係を築き始められているんじゃないかと思っていたのに。いまだに喧嘩をすることも少なくはないが、それを上回るくらい穏やかに会話することも増えた。リンクも出会った当初から変わらず表情の乏しい奴ではあるが、厄災の混乱がおさまってもこれだけ長く関係を続けてきたのだ。情を交わし合う時も、それ以外の時も、ふとした瞬間にリーバルに向けて柔らかい表情を見せることが増えた。だから、言葉にはせずともリンクもリーバルのことを憎からず思っているのではないかと思っていたのだ。リーバルがそうだったから、リンクもそうならいいと思っていたのだ。
 しかし、リーバルのそんな希望的予測はリンク自身によって否定された。リンクが結婚相手を探さなくてはならないという必要に迫られても、リーバルはその候補者の立場にもいないというのだ。それはリーバルにリーバル自身も思わなかったほどの衝撃を与えていた。

──身体だけで十分なのか。
──僕の気持ちはいらないのか。
──僕の気持ちも欲しがれよ。
──僕のことを欲しいって言えよ!

 とても口には出せない、惨めにすがりつくような言葉が行き先を失って胸の中にぐるぐると渦巻き、チクチクとリーバルの心臓を突き刺していく。

 端的に言うと、リーバルは傷ついていた。



***

 リーバルはハイラル城に赴いた時もそうでない時も、周囲には不自然に思われない程度にリンクの結婚相手探しに関する話題を聞き漏らさないように気をつけていた。しかし、リーバルが最初に噂を聞いた時からそれなりに時間が経っても、相手が決まったという話はとんと聞かない。リンクが相手にどのような条件を求めているのかは知らないが、推察するにリンクの結婚相手探しは難航しているようだ。

(いい気味だよ。)

 リーバルは上空でバサリと翼を大きく羽ばたかせながら心の中で独りごちた。
 リンクの結婚相手が決まれば、流石にリーバルとの関係は清算されるだろう。結婚相手とリーバルの両方とうまく関係を続けるほどリンクが器用だとは思えないし、何よりそんな不倫相手のような扱いはリーバルが許せない。でも、だとすると、何度考えてもリンクの結婚相手が決まり次第にリーバルはリンクに捨てられるということになってしまう。

(なんだよそれ……っ!)

 そう考えると悔しくて、いっそリーバルの方から関係を切ってやろうかなんて自棄な考えも浮かぶが、できなかった。だって、リンクとのつながりはこの身体の関係だけなのだ。これを切ってしまったら、リンクに会う口実は何もなくなる。
 リーバルは結婚して幸せそうなリンクの顔を穏やかな気持ちで見ることなんてとてもできそうにない。リンクだって、新婚で幸せの絶頂の最中に昔の男にうろちょろされたらいい迷惑だろう。だからリーバルはリンクが結婚した後はもうリンクに会うつもりはなかった。つまりリーバルとリンクが会えるのはリンクが結婚するまでの残りわずかな時間しかないのだ。その残りわずかな時間を自分の手で打ち消してしまうことが、リーバルにはできなかった。自分がそんな臆病だなんて、思ってみたこともなかった。誰にも聞かれることのない呟きが嘴から溢れる。

「惚れた弱み、っていうのは厄介だな……

 まもなく捨てられると分かっていても、会いたい気持ちを抑えられない。これが他人だったらやめておけと言えるのに、自分のこととなるとままならない。リーバルは傷心しながらも、今日も未練がましくリンクの元に足を運んでしまうのだった。



***

「君、結婚相手を探しているんだよね? 僕とこんなことしてて良いわけ?」

 リンクから結婚の話を聞いてから、どれくらい経っただろうか。気にしているとは思われたくないのにリーバルがついそう聞いてしまうくらい、リーバルとリンクが身体を重ねる頻度は変わらなかった。
 リンクの事情を慮ってリーバルの方から逢瀬の頻度を下げる、というのも癪でわざと今まで通りの頻度で誘っている。そんなリーバルもリーバルだなとは思うのだが、それに応じるリンクも大概だと思う。絶頂の余韻で身体を痙攣させているリンクの背中を眺めながら、リーバルはリンクの後孔に埋め込んでいたリーバル自身を引き抜いた。体液に塗れた肉茎が抜けるのと同時にリンクの後孔はヒクヒクと収縮しながら白濁を溢れさせる。リーバルの種を汗ばんだ肌に伝わせるリンクの姿があまりに卑猥で目に毒で、リーバルは準備してあった懐紙で自身の劣情の後を拭い去った。そのわずかな刺激にもリンクは感じ入るように「んぁ、」と小さく喘ぐのが聞こえる。
 こんな風に、リンクの身体はリーバルの種を受けて喜んでいるのに。それなのに君は、別の相手を探しているんだ。怨みがましい言葉が喉の奥まで込み上げるのを呑み込んで、リーバルはクッタリと横たわるリンクの隣に身体を倒れ込ませた。

「なかなか、見つからなくて……
「フゥン」

 先ほどリーバルが問いかけたことへの回答を、リンクがウトウトとしながら呟いた。意識して興味のない感じで返事をしながらも、心の中では「ずっと見つからないでいろ!」と呪詛を渦巻かせるリーバルの気持ちなんて考えたこともないのだろう。リンクが「リーバルはどんな相手がいいと思う?」などと無神経もここまで来ればいっそ見事なものだなと思うようなことを尋ねてくる。正直、リーバルはイラついていた。

「君みたいな朴念仁の相手が、そこらの奴に務まるとは思えないな。──それこそ、僕みたいに懐の大きな奴じゃないとね」

 リーバルはイラついていたので、心の中に留めておくつもりだった言葉までついうっかりぽろっと口にしてしまった。完全に口が滑った。これじゃあまるで僕がリンクの結婚相手に選ばれたいって白状しているようなものじゃないか! そう焦って隣にいるリンクの様子を伺うが、うつ伏せで事後特有の色っぽさを漂わせているリンクはこちらを見もせずに「だよね」などと小さく笑っている。

 ──なんなんだその答えは。何を笑っているんだよ。僕の気も知らないで。

 リンクのあまりに呑気な様子に、リーバルは静かにキレた。

……なら、なんで僕にしないの」
「え?」

 低い声で呻くように言うリーバルに、リンクがやっとこちらに視線を投げた。潤んだ空色の瞳にリーバルの顔が映るのが見える。

「なんで僕を選ばないのさ」
「何に?」

 リンクが小首をかしげる。なんでここまで言ってわからないんだよ! 察しが悪すぎるリンクにリーバルは頭の血管が切れそうになった。ダメだこいつは。みなまで言わないと伝わらない。リーバルはガバリと身を起こすと、ヤケクソになった気持ちで「結婚相手にだよ!」と叫んだ。

「へ……?」

 リンクが寝転んだまま間抜けな顔で間抜けな声を出す。それを面白いと思う余裕もなくリーバルは「あのねぇ!」と畳み掛ける。

「君みたいなやつに付き合い切れるのは僕くらいだよ! 実際にこれまで何年も一緒に過ごしてきたじゃないか! なのにどうして結婚相手に僕を選ばないの!? 僕を選びなよ!!」

 もう恥も外聞もない。言いたいことは言い切った。なるようになれと思いながらリーバルがハァハァと肩で息をしている横で、リンクも寝そべっていた身体をのそりと起こした。さてどうくるか。身構えるリーバルの前に、リンクはどこかリーバルの反応を伺うような揺れる瞳をして小さく口を開いた。

……いいの?」
「は?」

 今度はリーバルが間抜けな声を出す番だった。いいの? いいのって、どういう意味だ? リンクの問いかけが分からず困惑する。

「だって……、だってリーバルが、俺とは身体の関係にしかならないって。恋人になるつもりはないって言ってたから。だからとても結婚なんて……
「はぇ??」

 リーバルの嘴からは、リーバルも今まで聞いたことがないような声が漏れた。何言ってるんだコイツ? まったく覚えがない。ちょっと待ってよ、何の話と戸惑うリーバルにリンクも戸惑った様子で言葉を続ける。

「初めてこういうことをした時、リーバルがそう言ったんだよね?」

 リンクが確認するような口ぶりで言うが、初耳だ。初めての時のことはほとんど覚えていない。リンクもそうだと勝手に思い込んでいたのだが、違ったのか。リーバルは焦りながら「じ、実はその時のことをあんまりはっきりと覚えていないんだよね」と言った。
 
「だいぶ酔ってたのは覚えているんだけど。その時どんな会話をしたのか教えてくれる?」

 リンクが戸惑った顔のままこくりと頷く。

「えっと、あの日はお互いに酒を飲んでいて。リーバルは最初は俺に対する不満を言ってた。いっぱい。まぁそれはいつも通りだったんだけど、なんか途中から、中身はムカつくけど俺の顔は嫌いじゃないって言い出して」

 リーバルは内心冷や汗をかいていた。確かに、リンクの顔はリーバルの好みだった。リトの一族にはない黄金色の髪も、高い空のように透き通った青い瞳も、全体の造形も。でもそれを他人には、ましてや本人に伝えたことがある自覚はない。知らない間になんてことを漏らしているんだ僕は! リーバルが過去の自分をぶん殴りたい気持ちを募らせていると、リンクが言葉を続ける。

「外見が好みなら身体の相性もいいんじゃないかって、リーバルが」

 ──なんだそれ恥ずかしすぎる。

 リーバルは頭を抱えて喚きたい衝動を必死に抑え込んだ。シラフの今それを聞くと、まるで下心が見え見えだ。必死に羞恥に耐えるリーバルの横でリンクがまだ続ける。

「それでちょっと抱かれてみなよって言って、そういうことになって……。そしたら俺の身体の具合がいいからこれからも抱いてやるって。でも恋人になるつもりはないから勘違いするなって」

 ──訂正する。最低すぎる僕が。

 リーバルは声にならない呻き声を嘴の隙間から漏らした。完全に、酔ってやらかしていた。まだほとんど自覚していなかったリンクに対する好意と、生来の捻くれた性格が最悪な形でミックスされて吐かれた言葉であることは明らかだ。でも、そんなことはリンクに伝わってないだろう。発言した当時のリーバルだってわかっていなかったに違いない。

「わ、悪かったよ。そんなこと思ってない。言い訳でしかないけど、酔って言いすぎたんだと思う」

 リーバルは瀕死のダメージを負ったような心境でリンクに謝罪した。身体の関係にしかならないと、先に牽制していたのはリーバルの方だったのか。それをずっと信じてたリンクに同じ言葉を返されて、それで傷ついていたのだから世話はない。

「でもやらかしておいた僕が言うのもなんだけど、君もいいようにされていないで拒否しろよ。バカにするなって怒れよ」

 リンクだって、嫌なら抵抗することもできたはずだ。腕力だけならリーバルより強いのはリーバルも認めるところなのだから。まぁリーバルの横暴が招いた結果の状況なのだからリンクに苦言を呈するのも間違っているとは思うが、それでもと口を突いて出てしまう。

「お、俺は。リーバルのことを嫌いじゃなかったし、気持ちいいのも本当だったし……

 リーバルの言葉に、リンクが妙にモゴモゴと答える。歯切れの悪い物言いにリーバルが首をかしげて顔を覗き込むと、リンクはそれから逃れるように少し顔を俯かせた。髪の間から覗くリンクの目元や耳は、よく見ればじわじわと赤くなってきていた。付き合いは長いけれど、ここまで顔を赤くしたリンクを見たことがない。その珍しい表情にポカンと嘴を開けるリーバルに向けて、リンクが朱に染まった顔でチラリと上目遣いをしてくる。

「えっと、それで……いいの、リーバル。俺と結婚してくれるの?」

 身体だけの関係じゃなくていいのかとリンクが聞いてくる。リーバルの身体だけではなく気持ちまでも求めていいのかと、そう問いかけるリンクの瞳が期待に潤んでいる。
 想定外の反応に呆気に取られてしまったリーバルの嘴は、常の饒舌さを忘れてしまったようだった。ただただリンクの顔を呆然と見つめながら「う、うん」と辿々しく返事をするのが精一杯だった。


-

 翌朝。
 リーバルはハイラル城の中庭で親しい顔たちに囲まれ、リンクとの結婚を祝福されていた。故郷の村に報告しに行く前に、まずは仲間内でお祝いするのだとか。即席だろうがそれなりに見栄えのする花飾りをつけられたリーバルの隣にはもちろん、同じように花飾りで装われ嬉しさを顔に滲ませたリンクが立っている。

「おめでとうございます、リーバル」
「あ、ありがとう……

 正直、展開の速さについていけない。確かに僕を選びなよって言ったけど。結婚するなら僕にしなよって言ったけど。翌日にはこの状態って、いくらなんでも対応が早すぎないか? 姫だけならまだしも、なんでミファーやダルケル、ウルボザまで勢揃いしているんだ?? 心の底から良かったと思っているような穏やかな顔で祝辞を述べるゼルダ姫に表面上はにこやかに受け答えしながらも、リーバルは内心呆然としていた。そんなリーバルの隣に立つリンクに、ミファーが近づいてきて「良かったね」と優しく言葉をかける。

「リンク、ずっとリーバルさんのことが好きだったもんね」
「へ?」

 リーバルは思わずリンクの横顔を凝視した。何それどういうこと? 疑問に思うが、そう思っているのはどうやらリーバルだけのようだ。ミファーだけではなくて、リンクを囲むダルケルもウルボザもにこやかな顔で口々に良かった良かったと繰り返している。
 リンクは周囲の祝福に少し恥ずかしそうにしながらも、ミファーの言葉に「うん」と頷いた。

「だからリーバルと結婚できて嬉しい」
「あ、そう……

 そんな風に素直に答えるリンクの幸せそうな顔を見ていると、その他の問題はまるで瑣末なことにしか思えなくなる。

 ──なんかもう、幸せだからいいか。色々と確認するのは後回しで。

 リーバルは考えることを諦めると、今はただ幸せそうに顔を綻ばせる伴侶の様子を堪能することに決めたのだった。