三毛田
2026-04-21 22:11:04
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34 【34/思い出すのはあの日の笑顔】

34日目
あの頃は珍しい君の笑顔

「ふっ。くく……
「あ! 丹恒が笑ってる!」
「笑っていない」
 少し俯いて、笑いをこらえているような声を出していたのになんだその反応は。
 どうやら、彼は笑っていたことを認めるつもりがないようなので、なのと視線を交わしてジリジリ追い詰めていく。
「何、をするつもりだ」
「そりゃあ、簡単」
「くすぐるだけ!」
 逃げようとした丹恒を、俺が羽交い絞めして。そして、なのが彼の脇腹をくすぐる。が。
「穹、どうしよう」
「全然効いてないな」
 二人でむすっと丹恒を見上げるけれど、彼は深いため息をつくだけ。
「お前たち。覚悟はいいだろうな」
「「ひえっ」」
 俺を振り切った彼に、一発ずつ拳骨を喰らったのだった。
「うう……
「どうした」
「頭のてっぺんが痛い」
「俺は何もしていないが」
「知ってる」
 丹恒の笑顔を引き出そうとして、無理矢理笑わせようとした結果。なのと二人で拳骨を喰らった結果。を思い出して、傷が疼いただけ。
 あれ以来、彼が何かを堪えるような笑いをしたことはない。
「不満そうだな」
「俺となのの努力を無駄にしやがって」
「まだあの件を引きずっているのか」
 呆れたようにこちらを見て。
「だってぇ」
「あの丹恒、可愛かったからさぁ」
「別に可愛くはない」
 こいつ、色々残念だな。という副音声が聞こえてきそうだ。
「丹恒は可愛いです」
「可愛くないな」
 首を振って否定するだけ。どうしてこんなに頑ななのだろうか。
 何度も可愛いと告げ、少しずつ自己肯定感を上げてきたはずなんだけどなぁ・
 未だに自分に自信がない様子。
「ちゅーして」
「脈絡がない」
 と言いつつも、キスしてくれる。そういうところ甘いし、俺のことを好きなんだろうって。
「ふふふ」
「また不気味な笑いを」
 呆れているけれど、優しい笑みを薄く浮かべており。
「んっ」
 俺からキスをした。普段と変わらず、俺がお手入れをしているので唇は艶プル。最高。
「丹恒先生、これからもずっとずっと愛していくから。覚悟しておいて」
 見耳元で囁くと、一気に耳を赤くして。
 こういうところが可愛いんだ。本人は認めないけど。
 あの日の彼の笑顔を思い出しては、仕事を乗り切るための活力にしている。
「丹恒先生、笑って」
 ベッドの上で、汗で湿った髪をそっと撫でる。と、俺の手を振り払って。
「睨んでも可愛いだけだぞ~」
 ちゅっちゅとキスを落とせば、睨まれ。
「何が気に入らないんだよ~」
「俺は、可愛くない」
 啼きすぎてガラガラな声で、否定する。も~強情! でも可愛い!