神の子の犠牲を前提とした復活祭もこの国ではただのお祭りだ。人間界でも地域によっては厳粛さや熱狂を帯びる行事だが、ここでは悪魔のYouTuberが季節ネタの一つとして扱っても文句を言う者もまずいない。
いつもの公園でカラフルに色付けされた卵を抱えたブラックはアカネに今回の撮影のルールを説明していた。
「これがイースターエッグ、そして隠されたこのイースターエッグを探し当てるゲームがエッグハントです」
「任せろ!今のアタシにはウサギの耳があるからな!絶対に探し出してやる!!」
どういうわけかアカネはラビキャロットを食べて来たようで、手足はふかふかのウサギの毛に包まれ、長い耳が生えている。確かにウサギは卵と共にこの時期によく見かけるモチーフではあるが、何か勘違いしているようだ。
「卵は聴覚じゃ見つからないと思いますけど……」
当然の感想をもらしたブラックに、アカネは逆に首をかしげて言う。
「そうか?なんか中から音がするぞ、コツコツって」
「はい?ゆで卵になってるはずですが。中に何が入ってるんでしょう??」
二人がそろって覗き込んだタイミングで、卵の表面の絵の具に隠れる形で入っていたヒビにそって殻が割れた。中から火の粉の色をしたヒヨコが顔を出し、つぶらな瞳で辺りを見回す。
「これは……魔界ヒクイドリさんの赤ちゃんですね、炎を食べる鳥型の魔物です。ゆで卵にしてもヒナが無事なはずですよ」
「ど、どうするんだこれ!?このまま放っとくわけにも……」
まだ冷たい春風から守るように、アカネがヒナを毛皮のある両手で包み込む。その様子を見たブラックの目が子どもらしい悪戯っぽさにも、老獪な悪だくみにも見える形に歪んだ。
「育てましょうか。オレちゃん達二人で!」
「アタシも!?」
「一人じゃ大変ですから。カメラちゃんにも迷惑かけられませんし」
「アタシはいいのかよ!勝手に決めるな!!」
「アカネさんが真っ先にヒナの心配をしたんじゃないですか。オレちゃん手伝ってもらうならアカネさんがいーです。アカネさんは嫌ですか?」
「い、嫌じゃないけど……仕方ないな、ヒナのためだからな!」
ヒナはすっかりブラックとアカネを両親だと思っているらしく、大人しくさとしの家までついてくる(この二人が慣れないことを始めようとすると決まってさとしが巻き込まれるのだ)
「ヒナさん、パパが巣の掃除をしている間にママからごはんをもらって下さいね」
「な、なに言ってんだ!?パパとかママとか……」
「そう刷り込んじゃったので。こんな可愛い子を認知しないわけにいかないでしょう?」
「その言い方やめろー!!」
「ア、アカネちゃん、もうちょっと静かに……」
ヒナの餌になるライターの火をアカネが雑に扱ってさとしの部屋が燃えかけたり、空を飛ぶ練習で撒き散らした火の粉のせいで近所一帯が燃えかけたり、色々なことがあったがヒナは無事に魔界へと巣立った。
二つに割れたイースターエッグの殻は、今はヒナとの思い出の写真を入れたケースとしてさとしが預かっており、ブラックとアカネが時々眺めている。
2024/03/15
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