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幸希(ユキ)
2026-04-20 01:40:13
3622文字
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器の中に満たすもの
むっちゃん視点。独白に近い。
2ページ目着地点見失った。私が自分の情緒把握しきれずに半分暴走したせい。面倒くさい事やってる自覚はある。
1
2
『
……
疲れたよ。』
ぽつりと呟きながら、わしの胸元に頭をつける愛しい彼女。週の始めに身体を壊してから気丈に振る舞いはしていたものの、流石に精神的に堪えたのだろう。充電期間に入ると言われた。
充電期間ちゅうのは、とにかく自分の気力や体調を優先して動く期間。主が自分で自分を労る為の期間じゃ。その間、周りに対しての気遣いがあまり出来なくなる。わしからも離れる事が増える。それだけ、主の中で余裕がない。自分の事で精一杯なんじゃ。
(普段が気を遣いすぎじゃと思うがの
…
)
主は「私ポンコツだから」とは言うが、優先順位さえ決まってしまえば、おおよその事はやれてしまう。元々1人であれこれこなしてしまえていたから、そのせいもあって人に頼るのが極端に苦手じゃ。わしには甘えるようになってくれたけんど、仕事先の仲間相手だと、「言ったとこで文句垂れるし動かないから頼まない」と、結局1人でやってしまう。
(充電期間入ってそろそろ1週間か。)
不意の体調不良かつ、現状の不安感。その前の週にも体調を崩しかけていた事もあって、いつもよりずっとぼんやりしていて、どこか覇気がない。遠くを見つめて動かん。身体が病み上がりな事もあって食事量も落ちる。ただでさえ薄い身体をしているのが、更に細ってしまう。
正直全部世話して甘やかいてやりたい。が、
(“やれる事は自分でやる”言っちょったきにゃあ
…
。)
こういう時は構いすぎると逆効果。快復が遅れてしまうので待つの1択。
「
…
一緒におらんちゅうのも久々じゃな。」
気付けばいつだって隣にいて、すぐ傍で同じ時間を過ごしていた。己が「ねきにおりたい」と望んだのだからなおさらやけんど、それでも、昔は時々傍を離れては何かしらやっていた。
(いや、違うか。)
顕現した時からとにかくなんでもやってきた。見るもの全てが目新しくて、新鮮で、何もかもが興味深かった。年月が経つ中で趣味を見つけて、そこに没頭するようになり、“好きな事”として過ごすようになった。その好きな事が、“趣味”から“彼女と過ごす事”に変わった。
変化に乏しい表情が、自分が笑いかければふわりと綻ぶ。見つめれば朱に染まって愛おしい。触れれば嬉しそうにすり寄る。「わしの嫁さん」と口にすれば「大好きな旦那さま」と返ってくる。愛しい愛しいわしの唯一。隣り合って過ごすその日々が当たり前になるほど傍にいた。傍におらんちゅう選択肢が浮かばんかった。
(大好き過ぎやか。)
苦笑が漏れる。惚れ込んでるという自覚はあったが、そがに四六時中一緒におるっちゅう自覚は薄かったみたいじゃ。主が仕事で日中おらん事が多いき、余計に自覚が持てんかったかもしれん。
(それに
…
)
充電期間に入ったからといって、主のわしへの気持ちが薄れた訳ではない。安心感を求めてわしにくっついてくるがは変わらん。他の刀と交流をしに行っても、最後にはわしのところに帰ってくる。拠り所になっちょるのは確かじゃ。
仮に少しの間離れていたとしても、わしらの関係も信頼も、何も変わりはしない。
「あの子を信じて待つかにゃあ。」
少しずつだが顔色も良くなり、沈んでいた表情も元に戻ってきている。そう遠くないうちに充電期間は終わりになるだろう。それまで何をしていようか。
「最近ボトルシップの整理しちょらんかったの。してくるか。品種改良も途中やったにゃあ。」
待つのは得意だ。今までも慣れない彼女の心がほどけるのをずっと待っていた。
今の主は、疲労やストレスで心が空に近くなって、溜めていた優しさや愛情が、ヒビからこぼれてしまいゆう状態。そのヒビを直すのが充電期間じゃ。ヒビが直れば、また心の器を満たそう。「愛してる」と伝えて、めいっぱい抱き締めて、その淡い唇に口づけよう。
「好きじゃ。」
薄くなってしもうた痕をなぞる。「私の」と恥じらいながらも付けた、目に見える所有の痕、独占の証。主につけたものもきっと薄くなっている。もう1度つけ直して、「わしの」と分かるようにせんと。
「大好きじゃ。」
彼女の声が待ち遠しい。『大好き』と告げる甘えた声が。また聞けるその時まで、わしは待ちゆう。愛しい彼女の為なら、いつまででも待とう。
「愛しちゅうよ、ゆき。」
やき、
腕の中
ここ
へ早うもんてきとうせ。
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