lilie_y0527
2026-04-19 22:32:46
947文字
Public
 

夢の中の青


グローグーをジェダイのもとへ帰した時から。空っぽの場所に身を置きながら、ディンの時間軸は歪んでいた。
​眠らなければならない。だが、目を閉じれば、あの子の小さな手が自分の指を掴んだ感触が蘇る。そして、その後に必ず現れるのだ。

あの、黒いローブの男が。

​「…………またか」
​意識が微睡みに沈んだ瞬間、ディンの視界は白一色の世界から、静寂に包まれたあの場所へと切り替わる。
目の前に立っているのは、帝国軍のドロイドを一掃した、あの恐るべきジェダイ。
フードを脱いだ彼の、射抜くような青い瞳が、ただ、じっとディンを見つめていた。
​彼は何も語らない。
ただ、静かにそこに佇んでいる。その澄んだ瞳は、ディンのバイザーの奥、誰にも見せたことのない内面まで見透かしているようで、ディンは夢の中でも全身の筋肉が強張るのを感じた。

​(何か言いたいことがあるなら、言えばいいだろう)
​ディンは夢の中で毒づく。
だが、ジェダイは微笑むことも、口を開くこともしない。ただ、波一つない湖のような静謐さで、ディンを視線という鎖で縛り付ける。
​その緊張感に耐えきれず、ディンは跳ねるように意識を覚醒させた。
​「……はぁ、……はぁ、……っ」
​冷たい汗が背中を伝う。
目の前にあるのは、無機質な天井だけだ。隣にあるべき温もりは、もう、どこにもない。

​ディンは乱暴にシーツを掴み、バイザー越しに暗闇を睨みつけた。
​「……どうせ夢に出てくるなら、あいつの近況くらい教えてくれたらどうなんだ。あのジェダイ」
​低い声が、虚しく室内に響く。
​「飯は食っているのか、泣いてはいないか……。フォースとやらの修行は、順調なのか。あんたにじっと見つめられても、俺には何もわからない。……何も……
​自分の無力さと、届かない想い。
夢の中のあの青い瞳は、ディンにとって希望であると同時に、あの子を遠くへ連れ去った孤独の象徴でもあった。
​「お節介な男だ。夢の中にまで出てきて、どうしようというんだ」
​そう吐き捨てて、ディンは再び眠りにつこうと目を閉じる。

だが、その奥底では、もう一度あの青い瞳が現れるのを――そして、いつかその瞳が、あの子の笑顔を映し出してくれるのを、誰よりも切望しているのだった。