human_hamster
2026-04-19 21:44:03
2896文字
Public そのほか
 
2140180

4/18ワンライ

✨夢
※恋愛関係なし
※✨の姪っ子夢主が風邪でダウンしているだけの話
※おおらかな気持ちで読んでください

ナマエナマエナマエナマエナマエ

叔父さんの家のベッドがものすごく大きくて、よかった。私はだるい身体で寝返りをうつ。広すぎるシーツの上、自分の体温では温まらない部分のひんやりとした感触を求めて、さっきから私は寝返りを繰り返していた。激務の影響でうっかり住むところを無くした私が叔父さんのほとんど使っていない家に転がり込んでから数ヶ月。その激務が祟り、私は高熱を出していた。ウイルス性の風邪のようなもので、出勤を強制的にせき止められた私は家での療養を余儀なくされている。咳も鼻水もおさまったが、熱だけが下がらなかった。早く出勤したいけれど、立ち上がると膝に力が入らない。とんでもなく広い家に一人きりという状況は、勤務の間に寝に戻るだけ、というシチュエーションではさほど気にならなかったのに、不思議と病身には堪えた。
……けれど、もうすぐ来てくれるはずだ。

ナマエちゃ〜ん……大丈夫かァ〜い……うぉっと」

玄関から軽い何かを蹴っ飛ばしたような音がして、私はベッドの上で身を起こした。多分、玄関に出しっぱなしになっていた私の外出用の靴が蹴っ飛ばされた音だろう。ハイヒールのやつ。

「寝てんのかい? ……入るよォ〜」

こんこん、と控えめなノック音の後で叔父さんが寝室の扉を開けた。家の鍵をもらった日以来の再会だ。私が出入りする分には重くて大きすぎる扉も、叔父さんは悠々と開ける。スーツのジャケットを脱いで腕に引っ掛けた叔父さんは、扉から上半身だけ出して、心配そうに眉を下げていた。

「どうだい〜?お熱の方はァ〜」
「これでも、少しはよくなったんだけど…………

久しぶりに声を出したら、やっぱり頭がくらくらと回った。

「無理しないでねェ〜。飲むもの持ってきてやるよォ〜」
「叔父さん……お水と一緒に、冷蔵庫の中の瓶、持ってきてほしい……

私はパジャマ姿なのがなんとなく気恥ずかしくて、大きすぎる枕で身体を隠しながら叔父さんの方に身体を起こした。

「お安いご用だよォ〜」

扉が閉まって、叔父さんがキッチンの方へ向かう足音が聞こえてくる。私はまたベッドに身を倒した。長らくこの家を留守にしていた叔父さんだったけど、長期任務が終わるから帰るのだと電電虫で連絡をくれたのは昨日の夜だった。私がダウンしていることを伝えると、心配いらないよォ〜と優しい声で言ってくれたけれど、叔父さんだって疲れて帰ってきて、家でくつろぎたいだろうに、ベッドを姪が占領しているなんて申し訳ない限りだ。
おまけに、ここ数ヶ月の間で、私が勝手に家の中を自分好みに仕立ててしまっている。バスルームには私のシャンプー、トリートメント類がずらっと並んでいるし、玄関とリビングにおいたディフューザーはおそらく叔父さん好みの香りではないだろう。保存食もかなり買い込んだし、冷凍庫には私の作り置き弁当がぱんぱんに入っている。まぁ、そのおかげでこの療養をやり過ごせているのだけれど。久しぶりに帰ってきた叔父さんは、居心地が悪く感じるかもしれない。帰ってくることをもっと早く知っていれば、そして私が元気だったなら、もう少し気を配って叔父さんの帰りを迎えることができていたはずなのに。けれど、叔父さんが帰ってきてくれたことはものすごく嬉しかった。甘えてしまっていることを、自覚している。

ナマエちゃん、入るよォ〜」
「あ、はい!」

扉のノック音のあと、お盆にグラスと飲み物を乗せた叔父さんが入ってきた。私の食事用の長方形のお盆は、叔父さんには不釣り合いなほど小さい。

ナマエちゃん……瓶ってこれだよねェ〜? 本当にこんなの飲むのかい〜?」

不思議そうな顔をした叔父さんは、ベッドサイドのテーブルにお盆を置いてくれた。私の注文通り、冷蔵庫でよく冷やされたミネラルウォーターのペットボトル、私用のキャラクターもののグラス、瓶のコーラが乗っている。

「うん、ありがとう。私、熱が出た時ってコーラ飲みたくなるんだ。変かもだけど」

私はそこで、瓶のふたを開けるオープナーがこの家にないことを思い出した。体調不良の予兆を感じ、仕事の帰りに瓶コーラを買ったはいいが、開けられなくて結局冷蔵庫に入れたままにしていたのだ。数日寝込んでいて、そのことを忘れていた。
私の身振りでオープナーがないことを察したのか、叔父さんはコーラの瓶を取ると爪で容易く瓶の蓋を弾き飛ばした。

ナマエちゃんは寝てなさいよォ〜」

叔父さんは私の子どもみたいなグラスにとくとくとコーラを注いでくれた。犬のキャラクターと、四葉のクローバーがデザインされた可愛いグラスは叔父さんの大きすぎる手にちんまりと持たれていた。コーラがしゅわしゅわと音を立てて注がれる。無意識に喉が鳴った。叔父さんはストローをグラスに刺すと、私の口元にストローの先端を向ける。

「勢いあまって、むせるんじゃないよォ〜」

少し恥ずかしかったけど、私は叔父さんがストローを差し出してくれるまま口をつけ、コーラを飲んだ。求めていた、冷たくて弾ける刺激が喉を駆け下りる。からからに乾いた喉に、炭酸がしみて思わずぎゅっと目を閉じた。

「おいしい……。叔父さん、ありがとう」

叔父さんはにっこり笑顔になった。シャツの胸ポケットに、折り畳まれたサングラスが入っている。ツルが曲がっているように見えた。よく見るとシャツは煤けていたし、叔父さんもいつもより疲れているようだ。

……叔父さん、ごめんね。疲れて帰ってきたのに、私こんなんで……。お仕事、お疲れ様でした」

同じ職場とはいえ、叔父さんのやっていることは軍の任務の中でも最高機密に関わるところが大きい。今回の任務も、どこへ行ってきたのかは知らないけれど、きっと過酷なものだっただろう。

「いいんだよォ〜。どうせ、一人の家なんて寒くってねェ〜」
「でも、うつっちゃうし……。叔父さんも早くこの部屋出たほうがいいよ。ごめんね、」
「謝ることねェよォ〜。わっしはナマエちゃんよりも大っきくて強いからねェ〜。うつったりしねェよ〜」

叔父さんの大きな手のひらが私の髪の毛をぐりぐり撫でる。そのままおでこに叔父さんの指が三本くらい当てられた。

「まだこんなに熱っちいじゃないのォ〜。夜にお粥作ってやるからそれまで寝てることだねェ〜」

叔父さんはまたストローを私の口元に差し出した。グラスに残っている分を全て飲み干す。少し炭酸が抜けて、今度は味わう余裕があった。急に安堵感が全身を包み、私はまぶたが重くなってくるのを感じた。

「うん……。叔父さん、ありがとう。少し寝させてもらうね……

叔父さんはお盆の上に置いた別のグラスに水を注ぐと、私が飲みやすいようにそれにもストローをさして部屋から出ていった。叔父さんの優しい声音と、あったかい手のぬくもりがまだ部屋の中にフワフワと幸せの余韻を残している。それが消えないうちに、私は目を瞑った。叔父さん、お粥なんて作れるのかな、なんて考えているうちに、私は眠りに落ちた。

おわり