身悶えるほどのエモ義炭シナリオを、多忙なにわとりさんに駄々こねて回してもらいましたが、セッション中あまりに言葉足らずなところがあったため、ログを補完して諸々を付け足したものになります。
---で囲ったところはKPの描写です。また、義勇さんの台詞は全てKPです。私が書いているところは炭治郎くんの台詞と、---囲み以外の描写です。
セッション終わった後、一週間くらいは脳を焼かれていました。エモすぎて。
CoCのセッションについては、下記動画を参考にしてください。
※PLが違うので炭治郎の行動は違います。私よりも情報を引き出しているので、多分こちらがシナリオ完全版……。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm40008938
炭治郎くんは惣菜屋の息子
義勇さんは惣菜屋の常連客
という設定です。他の柱についても若干の現パロ設定があります。
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本日は2月7日。時刻は夜の23時半を回っている。
明日は総菜屋の定休日でもあるため炭治郎は遅くまで起きている。
常連の義勇と雑談のさなかで知ったことだが明日2月8日は義勇の誕生日とのことだった。
お客さんとはいえど義勇とは友人としても仲良くなっていると自負している。
そんな友人が明日誕生日を迎える……そのことが頭の片隅に浮かびつつも就寝の準備を進める。
明日は定休日といえど睡眠は大事。炭治郎は済ませることを全て済ませると即座に布団に潜り込む。
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(前日じゃなくて、一週間くらい前に言ってくれればよかったのに)
もっと早くに知っていれば、何かしら用意ができたかもしれない。今からプレゼントを用意するのは少し厳しい。そもそも、義勇が欲しがりそうなものが何も思いつかない。炭治郎が知っているのは、よく注文される弁当メニューくらいである。誕生日プレゼントに鳥の照り焼き弁当を贈るわけにはいかないだろう。喜んでくれそうではあるが。
それに、そもそも自分の誕生日の申告など、進んでやる人物には見えない。我が身に置き換えてみても、贈り物を要求しているような感じがして、水を向けられない限りは言わない気がする。昨日だって、朝テレビでやっていた星座占いの話から、ついでのように言われただけだ。
(……何かほしいものがあるか聞いてみて、後日用意するしかないかなぁ)
炭治郎ができるのはそのくらいである。
もはや寝る以外にすることはなくなった。
「明日もがんばろ!」と思いつつ即寝落ちする。
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炭治郎は抗いようもない強烈なねむけに炭治郎は誘われるまま瞳を閉じる。
気がつくと炭治郎は昼間の装いのまま道に立っていた。
足元には雪が積もり、道に沿うように竹林が並び立っている。
そして目の前の屋敷。さほど大きくはないが立派な佇まいだ。
自分は何故ここにいるのだろう。
どうやってここまで来たのだろう。
SAN値チェック : SAN値チェックです。
成功でSAN値減少0
失敗でSAN値減少-1です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 75 > 失敗
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「え、寒……!?」
突き刺さるような凍えた空気に、炭治郎はぽかんと口を開けた。
さっきまで、温かな布団の中にいたはずなのに、これは一体どういうことなのだろう。
「おれの寝間着はどこへ……」
近所の量販店で買った、あったか素材の布地は跡形もない。今身に着けている毛糸のカーディガンは確かに冬服として優秀なのだが、それもアウターがあればの話だ。コートもジャケットもなければ当然寒い。これが夢だったとしても、寒すぎる。
足元の雪を確かめてみる。冷たい。紛うことなき雪である。
「本物!!!!」
どこからどう見ても触っても本物の雪だった。
「──おい。」
やや呆然としつつ雪に指を突っ込んでいると、背後からいきなり声がかかった。
「はい!!」
声を掛けられるとつい元気に返事をしてしまう。客商売の習い性だ。反射的に返事をして振り返れば、一人の青年がそこにいた。切れ長の瞳に猫のような虹彩。瓶覗色から漆黒へ色が移り変わる不思議な髪色の青年だ。時々店へやってくる客……愈史郎によく似ている。
「あれ、愈史郎さんじゃないですか。こんにちは……?」
「愈史郎? ああ……この姿の者と知り合いか。まあ、そんなことはどうでもいい。ならばいくぞ」
挨拶も返さず、すたすたと歩き始める愈史郎に、炭治郎は慌てて立ち上がった。
「えええ? ちょっと待ってください、どこへ行くんですか? ていうこここどこですか? なんで愈史郎さんがいるんですか?」
「うるさい 黙ってついてこい」
「そんな亭主関白みたいな……」
祖母がよく聞いていた歌みたいなことを言う。確かに店でやり取りする愈史郎は若干古風な話し方をする人ではあったが、こんなに人の話を聞かない客ではなかった。混乱しつつも見失わないよう後に付いていくと、なんとも古めかしい屋敷の前に到着した。品のいい門構えだ。
「お前に頼みたいことがある」
愈史郎がこちらを見た。
「この屋敷で一日を過ごせ」
そう言って目の前の屋敷にむかって顎を傾ける。
「いいな? わかったか? ならば中に入れ」
とても人にものを頼む態度ではない。そしてわかるわけがない。
「いいえ、わかりません!!」
わかりやすくハッキリ答えたというのに、完全に無視して愈史郎は炭治郎の背中をグイグイと押して屋敷の中へ入れようとする。
「ちょっと愈史郎さん、もう少し説明してくれてもいいと思うんですけど!?」
全力で抵抗し足を踏ん張るが、じりじりと前進してしまう。細身のくせに力が強い。
「……なんだ? 既に訳の分からない状況なんだろう? 一つ二つ分からないことが増えたとしてもさほど変わりはしないだろうが」
酷い暴論である。しかしここで屈するわけにはいかない。ものを頼むときにはそれなりの礼儀が必要なのである。無礼な依頼にすんなり対応してやるほど、炭治郎はお人よしではない。
どうやっても抗おうとする姿勢に多少は思うところがあったのか、少しだけ愈史郎の力が少しだけ緩んだ。
「……まあ目的くらいは説明してやろう」
「是非お願いします」
「お前の魂を借り受けなければ俺の目的は果たされない。そしてお前には俺の目的のために協力をしてもらいたい。これは強制だ」
「……魂の貸与はうちでは扱ってないんですけど。うち惣菜屋なんで」
「総菜屋……? だとしても関係ない。……この屋敷には一人の剣士がいる。その剣士は俺の好む剣技を極め、とある戦いで活躍した者だ。俺はその功績を讃えてやりたい。 奴の願いを叶えてやろうと言うわけだ。そのためにはお前の協力がいる。以上だ。行け」
そう言って愈史郎は再び炭治郎の背中をグイグイと押して屋敷の中へ入れようとする。手と背中の鍔迫り合いが再開である。今の説明で「はいわかりました」とは到底言えない。
「その剣士って誰なんですか? 愈史郎さんとのご関係は? おれ全然知らない人ですよね?」
「そこの説明はしない。面倒だからだ。」
「面倒!! そういうの良くないと思います!! 人にものを頼むときはきちんと誠実に説明すべきだと思うんですが! 我が家ではそう教わってますし!」
「うるさい。そこの説明はしないと言っている。だが……」
目の前の青年は懐から一枚の紙を取り出し、炭治郎へ渡してきた。
「紙眼という。……お前がここに連れてこられた理由を知りたければ使うといい」
やはり説明不足が過ぎる。
「……使い方がわからないんですが」
(すごくホラー映画とかに出てきそうな紙だなぁ……)
何やら朱色で目玉のような文様が描かれている紙だ。持ってるだけで呪われそうな見た目である。
「使って覚えろ。答える気は無い」
けんもほろろな愈史郎の態度に、炭治郎は僅かに瞳を眇めた。
「愈史郎さん、一ついいですか?」
「なんだ」
「使ったことのないものを、使って覚えろ、とは、どう覚えればいいんでしょうか」
真顔で、真剣に問い詰めた。なにしろ見るからに妖しげな紙なのだ。変に扱って本当に呪われでもしたらとても困る。
そんな炭治郎に愈史郎はため息を吐きながら、懐からもう一枚同じ紙を取り出し額に当てた。どうやらこれが「使い方」らしい。
どうも愈史郎は強引なうえに極度の面倒くさがりのようだ。
「……。お前が帰ってもいいタイミングになったらもう一度姿を現そう。じゃあな」
そう言葉を残した直後、突如として青年の姿が消え失せた。
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SAN値チェック : SAN値チェックです。
成功でSAN値減少0
失敗でSAN値減少-1です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 67 > 失敗
system : [ 竈門 炭治郎 ] SAN : 64 → 63
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「……引田天功?」
こんなところでイリュージョンをされても、どう反応すべきかわからなかった。
(この紙、おでこに貼るものだったのか……何が起こるのかも教えてくれなかったな……ていうか何も教えてくれなかったな……)
わかったのは、魂を貸与せよ、ということと、この屋敷で一日過ごせ、ということだけ。しかも断ったのに無視された。あんまりな依頼方法だ。だいたい、魂というものが本当に存在しているとしても、自分の意志で貸したり借りたりできるものなのだろうか。
考えたところで答えは出ない。 仕方なく、炭治郎は屋敷を眺めた。新しく建てられた家なのか、綺麗な佇まいだ。人気はなく、しんとしている。
(ここがどこかもわからないし、とりあえず行ってみるしかないかぁ)
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 3 > 決定的成功/スペシャル
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屋敷の玄関から横に伸びる石畳はおそらく庭の方につながっているのだろう。その方向から誰かが咳き込む声が聞こえた。静かで人の気配がまるでないのに、どうやら何かがいるようだ。
(……どなたかいるなら、ここがどこか教えてもらおう……愈史郎さん全然なんにも教えてくれなかったから)
割と根に持つタイプである。訳も分からず見知らぬ場所へ放り出されたのだから、多少恨み言を言っても罰は当たらないはずだ。音の聞こえた方向へ歩いてみれば、そこには広い庭があった。葉の落ちた木々と、奥には池が見える。その上に雪が降り積もっていた。庭を望む縁側は内縁で、古めかしい硝子の引き戸だ。建材はそう古くはないのに、古民家のような造りだった。
その縁側の引き戸は一部が開いており、そこには咳をしながら体を丸めている青年がいた。この家の住人だろうか。具合の悪そうな様子に一瞬躊躇ったが、声をかけなければ始まらない。炭治郎にしては控えめに、庭の隅から呼びかけた。
「ごめんくださーい。すみません、少しお尋ねしたいことがあるんですが……」
「……ああ……客人か? すまない、来客に気が付かなかった」
そう言って青年が顔を上げる。その容姿は、店の常連である「冨岡義勇」によく似ていた。
すっと目が合う。その瞬間、青年は目を見開き驚いた表情を浮かべた。
「 炭……治郎?」
「はい!」
呼ばれたので返事をした。声も似ている。よく知る声だ。
「はい!? えっ義勇さん、具合が悪いんですか? いやその前になんでここにいるんです? 義勇さんち、2Kのアパートでしたよね。四丁目の」
炭治郎が常連の家を思い出しながら言葉を零す最中、彼は座っていた縁側から勢いよく腰をあげるとそのまま真っすぐにこちらへ駆け寄り、炭治郎を抱きしめた。
胸が苦しくなるような切ない感情の匂いが彼から漂ってくる。
「……炭治郎……!」
「わひゃ!? はい、炭治郎ですけども、え、どうしたんです?」
兄弟にするのと同じ感覚で、反射的に腕を回してしまう。抱きつかれたら抱き返す、もはや習い性である。が、考える余裕があったのはここまでだった。青年はぎゅうぎゅうに抱きしめてくるせいで、だんだん息が苦しくなってくる。
(この力強い鯖折り……! 初体験過ぎる!)
「ぎ、ぎゆうさん、おれの肋骨が、ギブアップしそうで……くるしぃ」
炭治郎の声に青年は慌てながら腕を緩め、身を起こした。
「すまな……!」
言葉が不自然に途切れる。
「……? 腕……いや、ちがう……」
青年は眉間にしわを寄せながら小さく呟いた。
「お前は……俺の知る炭治郎ではない……?」
「ええと? えーっと?」
言われたことがよく理解できないまま、炭治郎は目の前の義勇をじっと見つめてみた。記憶の中の人物と、何かが違うような気もする。
「義勇さんは、義勇さんじゃないんですか? 四丁目のアパートの……でもなんで着物?」
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 42 > 成功
炭治郎は目の前の青年の姿を伺う。己の知る冨岡義勇と着ている服がいつもと違う以外では容姿や声色…頭髪もまったく同じように思えた。
しかし決定的な異常を見つける。
彼には右手がない。
肘の下から先が失われている──!
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 98 > 致命的失敗
SAN値チェック : SAN値チェックです。
成功でSAN値減少-1
失敗でSAN値減少-1d3です。
竈門 炭治郎 : 1d3 (1D3) > 1
system : [ 竈門 炭治郎 ] SAN : 63 → 62
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「ぁえー!? 義勇さん、右手はどこにおいて来ちゃいましたか!?」
驚きのあまり、本来右手があるところを触って確かめてしまった。なにもない。質量がない。欠損している。
「こ、ここに! こう! 右手が!」
手振りで右手の長さを「ここからこう!」と示したりなどしてしまい、動揺が激しい。なにしろ、五体満足の冨岡義勇しか知らないのである。多少失礼な物言いになってしまっても、許されたい。
「置……切り落とされただけだ。もうずいぶん経つ」
「右手の切り落とし!!!! そんな豚肉みたいなことがあってたまりますか!!」
「……騒がしいな」
「あっすみません……」
むぎゅ、と口を引き結び、己を鎮めることに集中した。指摘の通り、騒がしいのは間違いがない。炭治郎が口をつぐむと、どこか遠くでどさりと雪の落ちる音がした。
どういった状況なのかよくわからないものの、目の前の冨岡義勇に見える人物は、四丁目のアパートでよく惣菜弁当をオーダーしてくる冨岡義勇とは違う人物らしい、ということは理解した。だって右手がない。明らかに違う。
「まあ……元気なことは悪いことではない。……知り合いかと思った。急に抱擁してすまなかった。名を伺ってもいいだろうか」
「あ、はい。竈門炭治郎です……?」
名乗る必要があるのか? と一瞬考え、確かに炭治郎が知る人物でないのだから初対面だと思い直した。よく似ているだけに、混乱する。
「……お前の名も竈門炭治郎なのか。そうか」
そうつぶやくと青年は考え込む様子を見せた。
「お知り合いにも竈門炭治郎さんが……? あ、えっと、義勇さんは冨岡義勇さんで合ってますか?」
「そうだ。俺は……冨岡義勇という」
「なるほど、じゃああなたもおれの知ってる義勇さんとは違う義勇さん、なんですね。たぶん」
「おそらくそういう事なのだろう」
「あのぅ、ここってどこなんでしょう? おれ、愈史郎さんに強引に連れてこられたんですけど、なんにも説明がなくって。なんか一日ここでご厄介になれって言われてまして」
こちらの状況を口にしたところ、義勇が驚いた素振りを見せた。
「……! そうか……」
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竈門 炭治郎 : CCB<=45 聞き耳 (1D100<=45) > 27 > 成功
「あれは本当だったのか…」
青年がちいさくつぶやいたのが聞こえた。
そしてさらに続けて
「……ということは、今日……なのか」
そうこぼすのも聞こえた。
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「今日? あっそういえば義勇さんの誕生日ですよね、今日!! あ、誕生日は違いますか?」
「今日」という単語に、ふと思い出す。寝る前に考えていたからだろうか。
「……! そうだな。生まれはその日だ。そして今日は二月八日だ」
「おお~誕生日も同じなんですね。なんだか不思議な感じです。義勇さんじゃないのに義勇さんで。顔も同じなのに」
よく似ている顔。誕生日も同じ。記憶と少しの相違もないか、じっくり顔面を観察してみた。頬に軽く手を添えるようにして、じいっとまじまじ、秀麗な顔を眺めた。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 94 > 失敗
特筆したことはない
……冨岡義勇の顔だ
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(顔面偏差値も同じだ)
いわゆる「イケメン」である。造作が整った人である。芸術的でもある。炭治郎にとって顔の良し悪しは大した問題ではないが、綺麗なものはつい「きれいだな~」と眺めてしまうものだ。
「……なんだ(近い…)」
「いいお顔だな~と思いまして」
「そうか」
なんとなく質量がない右腕の方も見てしまう。あるのが当たり前だったものが消失しているのを見ると、やっぱり不思議な感じがした。
「右腕は、痛くないんですか?」
「時折……もうない腕が痛むときもあるが、傷としてはふさがっている。問題ない」
「なるほど……へっぷしゅ!!」
寒さが身に沁みてきてくしゃみが出た。雪の中、アウター無しの服装では、いくら炭治郎が風の子であっても限度がある。冷える、ということをほとんど知らない手のひらが、じんじんと凍え始めていた。
「……! すまない。ここで話し込むべきではなかったな。上がっていくといい中で話そう」
義勇はそう言って玄関の方を指し示した。
「はい、すみません、お邪魔します」
「ああ。こっちだ」
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玄関に戻ってきた。義勇は玄関の戸を引き炭治郎を屋敷に引き入れる。
玄関内。
作りは土間となっていて、台所と一体となっている。
義勇は先を進み、履き物を脱いで座敷にあがっていく。
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「冷えただろう。羽織るものを持ってくる。座敷に上がって待っていてくれ」
「はい、失礼します」
招き入れられた玄関で靴を脱いで上がり、言われたとおり座敷にちんまり座る。ついでに部屋の中を見回してみる。
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炭治郎は部屋を見渡す。
玄関からすぐの部屋は客間になっているようだ。
中央にはちゃぶ台。
壁には振り子時計がかかっている。
そうしてあたりを見渡していた炭治郎は強い既視感を感じる。
──この家を、己は知っている。
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(なんだろう、すごく懐かしい感じがする)
見て回ったわけでもないのに、間取りがわかる。何がどこにあるか、なんとなくわかる。奇妙なくらい落ち着く空気。自分の家に帰ってきたかのような。初めて見る家なのに、と炭治郎は首を傾げた。
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義勇は屋敷の奥から戻ってくる。
手には二つの羽織を抱えているようで
そのうちの一つを炭治郎差し出す。
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「これをつかうといい」
言いつつ、差し出されたのは市松模様の羽織。馴染みのない衣服だが、この古い造りの家にはよく似合っていた。
「ありがとうございます」
受け取って早速羽織る。なんとなくしっくりくる感じがする。
(羽織なんて、普段着ることなんてないのに、不思議だ)
義勇も羽織に腕を通しながら「やはり似合うな」と零した。
「茶の準備をする 少し待て」
言い残し、義勇は客間を通り過ぎるように玄関の方へと姿を消した。
借り物の羽織を、じっくり見てみる。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 17 > 成功
炭治郎は己の着ている羽織をまじまじと見つめる。
炭治郎はこのような柄の服を持ってはいない。
しかし……あまりにも己に馴染み深く感じてしまう。
市松模様は某企業の海苔のパッケージイメージしかなかったはずなのに!
そして、観察している間にもう一つのことにも気が付く。
この羽織は余りにも己の体格にぴったりにあつらえてある。
そうこうしている間に義勇が茶や茶菓子を持って戻ってくる。
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「上がってもらって悪かったな。ひとまず茶でものんでくれ」
「いえいえ全然。ありがとうございます、いただきます」
(お茶あったかい)
湯呑から伝わる熱で、冷え切った指先がじんわりと温まってくる。ほっと息をつくと、向かいで家主が静かにこちらを見ていた。
「……この状況について心当たりがある」
茶を一口飲み、口を湿らせ、静かな声音が言葉を紡いだ。
「この状況は以前俺が見た夢…そこに出てきた神と名乗る人物に吐いてしまった妄言に近い状況だ。不可思議なことだが。恐らく俺のせいだ。そしてその妄言が詳細まで合致しているのであればおそらくお前はこの屋敷の敷地から一日出ることができないだろう。すまないが休暇だと思って今日一日をここで過ごしてもらえないだろうか」
荒唐無稽な内容だ。しかし、否定などできない。何しろいきなり雪景色に放り出され、知り合いのイリュージョンを見せつけられ、冨岡義勇のそっくりさんと対峙しているわけなのだから、ここはそういう現象が起こる場所なのだろう。
「自称神様が夢に……!? 不思議体験ですねそれは」
少し考えて、じっと義勇を見る。
「あの、義勇さんが一体何をその自称神様に言ったのか、聞いてもいいものですか?」
義勇は少し気まずそうに身を揺らし、小さく答えた。
「……すまない あまり言いたくない」
「あ、じゃあいいです。えっと、それじゃあおれは、一日ここで何してればいいですか? 何か具体的にすることがあれば、やりますよ。義勇さんはおれが知ってる義勇さんじゃないみたいですけど、でもやっぱり義勇さんなので」
(見た目はおんなじだし、今日誕生日だし)
そう、このまるで知らない義勇も、炭治郎が知る義勇と同じ誕生日なのである。祝うことも吝かではない。それに、一日ここいろと言われても、手持無沙汰になりそうだ。。
「確かに一日過ごすといっても何の面白みもない家だ。退屈だろう。家の物は自由に見て使って回って構わない。それくらいしかできることがないだろうしな。お前も俺の知る炭治郎ではないが……知り合いに似ているよしみということにして気楽にしてほしい。折角だ。昼と夜も食べていってくれ」
「それだけでいいんですか? わかりました。それならおれ、まずはご飯作りますね。もうすぐお昼時ですし」
(ここの台所、レンジとかないし、それなりに時間かかるよな)
ガスコンロもないはずだ。
「……! それは……ありがたい 食べてみたい。いい時間だし早速始めよう……台所はこっちだ」
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義勇は立ち上がり台所へと炭治郎を案内する。
台所は新しいもののようだが時代劇にでも出てきそうな古い造りになっている。
流し・釜戸・食器棚・中の見えない扉のついた棚・炭置き場が見えた。
竈門 炭治郎 : CCB<=70 アイデア (1D100<=70) > 42 > 成功
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(やっぱりガスなんてなかった)
釜戸など、初めて触れる。けれどなんとなくできそうな気がして、釜戸に火を入れてみた。昔から何度もやっていたかのように、難なく火が付き自分自身でもちょっと驚いた。
「……手際がいいな」
「意外とやればできるもんですね」
ちょっと得意な気持ちになった。キャンプでの火起こしも得意だ。焚火の火加減のやり方も知っている。釜戸もその延長上のようなものだろう。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 製作(惣菜) (1D100<=65) > 32 > 成功
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米は見つけたものの、他の食材のありかがよくわからなかった。強い既視感のある台所ではあるものの、細々とした物の位置まではわからない。ご飯を炊きながらあちこち探っていると、後ろから声をかけられた。
「どうかしたのか」
「鶏肉とかってありますか?」
「鶏肉はある」
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そういうと義勇は釜戸に背を向ける。
台所に入った際に見えた、しっかりとした作りになっていて非常に重たそうな中の見えない扉のついた棚の前までやってくるとその下段を開いた。
下段を開けるとひんやりとした涼やかな空気が流れ出る。
扉の内側は断熱材のようなものと金属板が打ち付けられている。
中には魚や野菜や肉などが入っている。
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「ここだ 中の物は好きに使ってくれていい」
「ありがとうございます! わぁ、何でも作れそうですね!」
献立は、手早く作れる鶏の照り焼きと、白米に葱と油揚げの味噌汁にした。ガスコンロでなくても作り慣れているせいか、いつもと同じようにできあがる。
「……すごくうまそうだ」
「職業、惣菜屋ですからね!」
「……総菜屋なのか。すごいな。料理もうまいのか」
「うちの店で人気の竈門家照り焼きです!」
「客間に運ぼう」
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客間のちゃぶ台の上に料理が並ぶ。
炭治郎が綺麗にならべると二人で席に着く
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「どうぞ召し上がってください!」
「ああ。ありがとう。いただきます」
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義勇は左手でも器用に箸をはこび次々に口の中へ料理を収めていく。
口数は少ないがその分表情やしぐさから料理を心から楽しんでいるのが伝わってくる。
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「うまい」
「ありがとうございます! 嬉しいです! 看板商品ってわけじゃないんですけど、うちの店で上位に入る人気メニューなんですよ、鶏の照り焼き。結構すぐ売り切れちゃうんで」
(そういえば、四丁目の義勇さんも照り焼き戦争にはあんまり勝ててなかったなぁ)
毎日お昼時は店も厨房も結構な戦場なのだ。よく出るものは多めに作ってはいるものの、なくなるときは早くになくなる。特に義勇の場合は基本デリバリー注文なのもあり、よっぽど早めに発注してくれる日以外の勝率は低かった。
「貴重な品をいただけたということか……僥倖だな」
「おれ、夜もつくりますんで、何かお好きなものあったら教えてください」
「折角希望の物を作ってもらえるというなら……夜は鮭大根を作ってもらえると嬉しい。夜は俺も作る。例にお前の好物を代わりに作ろう」
「鮭大根ですね、承知しました! えっおれの好物ですか? うう~んそうだなぁ……天ぷらとかですかね。野菜の天ぷらがいいです! せっかくですし、一緒に揚げましょう!」
なにやらとても楽しくなってきた。
「野菜の天ぷらか……今ある材料でも十分いいものができると思う。楽しみだ。あと……ついでだが、いつまでもお前という呼び方はよくないだろう。なんとよべばいいだろうか?」
「お好きに呼んでいただければ……おれも義勇さんって呼んじゃってますし……」
「……ならば下の名前で呼ばせてもらう」
「どうぞ!」
「炭治郎」
「はい!」
「この後の話だ。一日過ごしてほしいとはいったがこの家に面白いものはあまりない 家の中を見て回るくらいしかないだろう。一応屋敷の外も見て回ってもいいと思う。俺は少し縁側で休んでいる。何かあれば声をかけてくれ」
「はい。わかりました。じゃあ、食器片付けたらお家の中見せてもらいますね。不思議と懐かしい感じがするんですよね、このお家。だから面白いというか、楽しそうな気がします」
「懐かしい……か? そうか。まあ自由にしてくれ。では片づけるか」
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炭治郎と義勇は食べ終えた食器を片付けた。
全てを終えると義勇は余った茶を片手に縁側へと歩いて行った。
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家を見て回っていい、と言われたものの、どこからどう見るべきか少し悩む。あまり人様の家をあれこれ物色するのもよくない。さらっと様子を見て回り、古風な雰囲気を楽しむ程度がいいだろう。手始めに、台所の隣にある風呂場を覗いてみた。
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風呂。
掛け流しの温泉のようだ。
硫黄の匂いが立ち込めている。
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(まさかの温泉だった!!! 後で入らせてもらおうかな……せっかくだし。だって今日一日だけなんだもんな)
なにしろ冬で、外は雪景色。家主の許可を得られれば、足先程度を温めてみたい。しかし、自宅に温泉とは贅沢な造りである。毎日湯治ができるなら、相当長生きできそうだ。
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茶の間
囲炉裏が中央にある。
柱の部分に張り紙がある。
壁の張り紙
びっしりと文字が書かれており中央にはどこかの商店の名前が書かれている。
初めて見るものではあるが、これがカレンダーのようなものであることがなんとなわかる。すぎた日には筆で1本の線が引いてあるようだ。
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(時代を感じる……)
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 78 > 失敗
竈門 炭治郎 : 茶の間を見渡して見たが、囲炉裏と張り紙以外は特に何もないように見えた。
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囲炉裏も風情があってよいものだ。特筆すべきものは見つからず、次の部屋への襖を開けた。
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座敷1
私室のようだ。
押し入れ・小さな机・飾られた刀と耳飾りがある。
座敷1の机
大きめの寄木細工の箱と炭と筆と紙が置いてある。
黒い刀が飾られている。
耳飾りは自分が今つけているものと形が全く一緒である。
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(耳飾りのドッペルゲンガー)
酷く似ている小物に、心のどこかがざわついた。今、炭治郎の耳にある飾りも、古いものではある。父からもらったものだ。製造元は知らないが、同じ店で買ったのかもしれない。一点物でない限り、同じものがこの世に存在していてもまったくおかしくないが、少し気になる。
(触って良いものか後で義勇さんに聞いてみよ)
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座敷2。
私室のようだ。机と棚と飾られた刀が置いてある。
机には鍵のついた箱がある。
棚には貴重品や雑貨や書類などが並んでいる。
柄の白い刀
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あまり小物類には触らず、様子だけ見て回った。見ていいと言われていても、人様のものを勝手に触るのは気が引けた。この屋敷には続き間以外にも離れがあったはずだ。襖を開けて見渡せば、渡り廊下があった。
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寝室
畳まれた布団二つに仏壇がある。
仏壇には位牌は3つある。
冨岡蔦子・錆兎・竈門炭治郎(法名略)
SAN値チェック : SAN値チェックです。
成功でSAN値減少0
失敗でSAN値減少-3です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 48 > 成功
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(これ、こっちの義勇さんが知ってる竈門炭治郎は既にこの世にいないってことか……なんか錆兎の名前もあるぞ。こっちの錆兎も別の錆兎だよな)
錆兎は時々配達に行くと、義勇のアパートにいることがある。顔見知りだ。やはりこちらの世界の人物と似ているのだろうか。知っている名前なので、仏壇に向かって真摯に手を合わせておく。なんとも不思議な感覚である。
部屋の中のものを触っても良いものか、やはり確認しておくべきのような気がした。とてとてと廊下を歩き、縁側にいる義勇の元へと向かった。縁側に据えた将棋盤に一人向き合う義勇は、雪の庭と同じくらい静かだった。
「義勇さん、ちょっとお聞きしたいんですが。お部屋にある箱とか刀とかは、ちょこっとだけ触ってみてもいいですか?」
声を掛けるとすぐ、青い瞳がこちらを向いた。
「ああ。ここにあるものはすべて自由にしてもらって構わない。隠しておきたいものもない。むしろそのくらいしか暇をつぶせるものもないだろう」
「ありがとうございます! じゃあちょっと見させてもらいますね」
「うん」
気になっていた寄せ木細工の箱を見てみることにした。
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炭治郎は座敷にもどってくる。
そして机にぽつんとおかれた寄せ木細工の箱をてにとった。
自然と解き方がわかる。
まるで元から知っていたかのような感覚だ。
炭治郎は静かに模様を動かしていく。左に二回ずらし下に上に……
程なくして箱はカチリと音を立てた。
中にはたくさんの手紙と鍵の付いた文箱があった。
手紙の 宛名はすべて「竈門炭治郎」とかかれている。
しかし送り手の名前はバラバラだ。知人や友人と同じ名前もある。
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(知っている名前ばかりだ。こっちの炭治郎のも、おれの知り合いと似てる人に囲まれてたんだろうか)
気にはなる。気にはなるが、これは自分へ宛てた手紙ではない。読み漁るのもよくない気がした。鍵付きの箱が気にはなるが、無理矢理開ける必要はないだろう。
家捜しなんて、普通はやらない。いくら家主の許可があったとしても、やはりどこか気後れする。見てはいけないものを見ているような、居心地の悪さがあった。一通り部屋の中は見て回ったのだから、少し外へ行ってみた方がいいかもしれない。玄関に戻り靴を履き、雪の庭へ出てみた。
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庭。
葉の落ちた木々と奥には池が見える。
雪が積もっている。
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(池がある。お魚いるかなぁ。鯉とかいそうな雰囲気だけど)
和風な庭に似合いの池だ。石の配置も風情があった。
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池。
生き物はいない。
風が止んでいるからか、鏡のような静かな水面だ。
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ちょっと池の水面を触ってみる。凍ってはいないが非常に冷たい。水面下で動くものはなく、時が止まったような雰囲気だ。
(お魚はいないかぁ)
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竈門 炭治郎 : CCB<=70 アイデア (1D100<=70) > 76 > 失敗
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庭から室内へ戻り、先ほどの座敷へ向かった。鍵付きの箱があった座敷だ。こちらは寄せ木細工の箱と違い、開け方など一つもわからない。恐らくどこかに鍵があるのだろうが、どこにあるかも皆目見当が付かなかった。これもこちらの炭治郎のものなのだろうか。中身が何か、義勇に聞いてみるのが一番早いかもしれない。何かがわかれば、あえて暴かなくても構わなかった。
「義勇さん義勇さん、あのぅ、座敷の鍵付きの箱って何が入っているのか、聞いてもいいですか?」
義勇は先ほどと同じく、縁側にいた。近寄って尋ねると、特に動じることもなく静かな声が返ってくる。
「……俺の部屋のもののことか」
「そうです。えっと寄せ木細工の中に入っている文箱と、座敷に置いてある箱……。鍵がかかってるから、気になっちゃって。聞いたらダメなことじゃなければ、教えてください」
「……! 寄せ木細工のなかのものは知らない 俺の知人の炭治郎のものだからな……。そうか。文箱が入っていたか。寄せ木細工の中に鍵箱とは……厳重だな。俺の部屋の箱は俺宛ての文箱だ。大事なものだったから鍵をつけているだけで見てもらっても構わないものだ。炭治郎は無理やりここに連れてこられた身だからな。少しでも知れることがあったほうがいい。少し待て」
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そういって義勇は客室に入っていく
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なんとなく、義勇の後に続き客間へついて行った。
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炭治郎が客間に入ると義勇は壁に掛けられた振り子時計の扉に手をかけているところだった。扉の奥に手を入れしばらくすると奥から何かを取り出したようだった。
義勇は炭治郎のほうに振り返ると手の中の物をさしだす。
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「俺の部屋の文箱の鍵だ。」
「あ、ありがとうございます……」
(ほんとに見ていいのかなぁ……)
大事なものだと言っていたのに。やはりまだ気持ちに引っかかりを覚えた。
「ああ」
戸惑う炭治郎とは違い、義勇の方は泰然としている。炭治郎が何を見ても当然、というような雰囲気すらある。信頼されているのか、気を許されているのか。どうにも心の奥底がざわざわするような感覚がした。
ともあれ、せっかく鍵を出してくれたのだ。借りた鍵で文箱の錠前を開ける。大事なものだと聞いたので、できるだけ丁寧に扱うことにする。
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箱の中には大量の紙が詰められていた。どうやら手紙のようだ。
宛名の部分にはどれも冨岡義勇の名前が書かれている。
宛名の筆跡はどれも同じもののようだ。
送り主の名前には自分と同じ名前がかいてあることにも気がつく。
炭治郎は手紙の一枚を手に取る。
────妹を鬼にされたらしい。
妹を見逃してくれたこと、自分に道を示してくれたこと。
それに対する感謝の言葉。
日々の修行のこと、鬼殺隊という組織に入るための試練のこと、それを乗り越えたこと。
任務のこと。日々のこと。そのようなことが書かれていた。
現実とは思えない内容。
しかし現実であることを感じさせる何か。背筋が粟立ち唐突な恐怖に襲われる。
SAN値チェック : SAN値チェックです。
成功でSAN値減少1
失敗でSAN値減少-1d3です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 23 > 成功
system : [ 竈門 炭治郎 ] SAN : 62 → 61
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(……なんか妙なリアリティがあるけど、なんだろう?)
首をひねってみても何も思いつかないのである。
鬼、など。非現実的にもほどがある。おとぎ話の世界観だ。なのに、それが確かに存在していたのだと、妙な納得感があった。ましてや妹が鬼になったなど。惣菜屋の看板娘でもある禰豆子は生まれてこの方人間でしかなく、今日も昨日も元気に店の手伝いをしてくれていた。でも、きっと現実の禰豆子が鬼とやらになったとしても、禰豆子は禰豆子だ。変わらず自分の妹である。そういう意味では、手紙の内容に酷く共感できた。
一通り家の中を見させてもらい、なんとなくわかったことがある。
(えっと、たぶんだけど、このお家でおれじゃない竈門炭治郎と、義勇さんじゃない義勇さんが一緒に暮らしてた……感じだ。ということは、お隣の座敷は、おれじゃない竈門炭治郎の部屋なのかな)
これまでの状況と、間取りや部屋の様子から、恐らく間違いではないだろう。でも、こちらの炭治郎は既に亡き人となっていて、今は義勇の一人暮らしになってしまった、ということか。
一人、縁側で将棋盤に向き合う義勇の背中が脳裏をよぎった。
冴え冴えと静かで、そして、ほんのりと寂しい。
不可思議な、いてもたってもいられない焦燥感に似た感覚がある。こちらの義勇とは先ほど会ったばかりで、似ているとは言え四丁目の義勇とは別人で、なのにその存在感は妙に近い。家族を思うように、辛いことがあるのならなんとかしてあげたいと思ってしまう。
今の炭治郎に、できることなどほとんどないだろうに。
(そういえば愈史郎さんからもらった紙があったっけ)
「ここに連れてこられた理由を知りたければ使うといい」と言っていたのを思い出した。これを使えば、何かがわかるということか。
(目っぽい絵がついてるから、何か見た目が変わるのかもしれない。なにしろここ、よくわからないところだし……)
紙を取り出しておでこに貼ってみる。つくづく、食い下がって使い方を聞いておいてよかった。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 62 > 成功
柄の白い刀が目に入る。それに誘われるように紙眼を額に当てると、風景が広がる。
誰かが叫んでいる。
目覚めなければ。まだ誰かが戦っている。
朦朧とする意識の中、微かに見えた視界の先に。
強い視線と鬼気迫る姿で何かと対峙する冨岡の姿が見えた。
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(……なんだ今の)
時代劇か何かのような、けれど生きるか死ぬかの肌が裂けそうな空気感に恐ろしいほどの現実感がある。
(確か、愈史郎さんがここの屋敷に「剣士」がいるって言ってたっけ。それって義勇さんのことだったのかな?)
剣士、だなんて。聞き流していたけれど、先ほどの映像が本当にあったことなら、相当な強さを誇る剣士だったのだろう。今の静かな様子からは、あんな風に刀を振るうようには見えない。右手を切り落とされたというのも、戦いの末の結果なのだろうか。
(……もう少し、他のところでも確認してみようか)
ここに自分がいる意味が、何かわかるのかもしれない。
ひとまずもう一度、庭へ行ってみることにした。
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竈門 炭治郎 : 何か別のものも見えるかもしれない。もう一度庭に出て、池まで行ってみる。
炭治郎は庭の池を見つめた。紙眼を額に当てると、風景が広がる。
自分に似た少年が妹に似た少女を庇うように覆いかぶさっている。ボロボロだ。そこに歩みをすすめる白い少年は今まさに彼らを殺さんとしていた。
しかしその攻撃は凪払われる。彼らを救ったのは今よりも髪の長い冨岡だった。
SAN値チェックです。
成功でSAN値減少0
失敗でSAN値減少-1です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 4 > 決定的成功/スペシャル
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(今のが、こっちの義勇さんが知ってる竈門炭治郎ってことか。なんか禰豆子までいたような……)
考えてもわからないが、不思議である。きっと鬼になったという禰豆子なのだろう。共に戦っていたのだろうか。そうでなければああもボロボロになるはずがない。
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竈門 炭治郎 : 庭の木も見に行ってみる。
炭治郎は葉の落ちた木々に紙眼を額に当てながら近づく。
すると再び風景が広がる。
自分に似た少年が泣き叫びながら頭を垂れている。
それを見ていた今よりも髪の長い冨岡が、暴れる妹に似た子を押さえつけ、激昂する。
「生殺与奪の件を他人に握らせるな!!」
そして……
地に伏せた少年と少女。冨岡はそっと離れ彼らの目覚めを待ち始めた。
「こいつらは何か違うのかもしれない」
(かけてみよう)
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(……どういう状況???)
さっぱりわからない。わからないが、義勇ならばああいう叱咤をしそうだな、と妙な納得感があった。
(もうちょっと他のところも見入ってみてから考えよう……)
庭から戻り、ついでに玄関脇の台所へ寄った。ここでも何かが見えるかもしれない。
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竈門 炭治郎 : 台所を見回し、炭置き場を眺めた。
紙眼を額に当てると、風景が広がる。
自分に似た少年が高校時代の友人に似た少年二人へ炭の焼き方を教えている。
自分に似た少年は炭をじっくりと眺め一息吐くと微笑み、告げる。
「合格だ! 善逸! 伊之助!」
喜ぶふたり。そんな二人に少年は続けて告ぐ。
「……これで俺が居なくなっても大丈夫だな」
ふたりの表情が一気に抜け落ちた。
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(これって、つまり終活、みたいな……? でも自分の死期を悟ってたのだとしたら、多分おれもやるだろうなぁ)
親近感がある。
この様子からすると、炭焼きが生業だったのだろうか。しかし、これはどこの映像なのだろう。こちらの炭治郎はこの家で暮らしていたようなのに、善逸と伊之助とも暮らしていた風にも見える。なんだかよくわからなくなってきた。
(ついでだから、お風呂場も見ておこうかな)
台所から風呂場に入り、湯船を見る。
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紙眼を額に当てると、風景が広がる。
「伊之助が見つけた温泉だ。傷によく効くらしい。それでこの家を建てた。 だ、だから……」
冨岡がそれ以上を紡げずに口を閉ざすと自分に似た少年が元気よく言葉を返す。
「わかりました! これからも遊びに行きますね!」
その言葉に冨岡の体は不自然に強ばる。
直後、物陰に隠れていた六太が世話になってる塾講師に似た人物が駆け寄り冨岡の頭を思いっきり殴った。
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(……登場人物が、身近な人ばかりなのが気になるな……)
まさかの塾講師の登場である。見た目は怖そうなのに実際に教わってみるとそうでもないようで、最初は泣きそうになりながら帰ってきた六太も、今では意気揚々と塾通いをしている。確実に成績が上がると評判の塾でもあった。その塾講師とよく似た人物も、こちらの義勇と炭治郎の近くにいたらしい。
考えてもわからないことは、ひとまず脇に置いておく。客間に戻り、ちゃぶ台を見た。
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紙眼を額に当てると、風景が広がる。
自分の妹に似た子が見守り、友人に似た少年二人が騒ぎながら机を運んでいる。
「私たちからの引越し祝い!」
「俺一人で持てたわ!!!」
「2人にあげるものなんだから丁寧に運べよ!!」
「でもやっぱセンスあるねぇ俺!新しい時代の食事はちゃぶ台なわけよ!!」
「こうやって……身を寄せあってご飯食べられるの!!禰豆子ちゃん!俺達も買おうねぇ!」
それを見て笑う自分に似た少年と微笑む冨岡の姿。
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(やっぱり一緒に暮らしてたんだなぁ)
ということは、今のはここへ引っ越してきた時の映像だろう。なんだか嫁入りでもしたかのような雰囲気だった。
(……嫁入り)
そう考えると、先ほど風呂場で見た情景が、なんとなく察せられた。つまり、あれは、義勇のプロポーズだったのだろう。家を建ててからプロポーズとは、気合いが入りすぎている。あの後、きちんと言葉にはできたのだろうか。ここに炭治郎が暮らしていたのだから、できたのだろう。
(……離れも、見ておこう)
客間から移動し、離れの布団を見る。
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紙眼を額に当てると、風景が広がる。
自分に似た少年が、短く激しく息をしながら横たわっている。その隣で冨岡が少年の右手を左手で掬い、己の頬に手を当てて静かに泣いている。
冨岡が泣きながら何かを零すと少年はか細くも返事をしたようだ。
冨岡はその答えに泣きながら微笑んだ。
そして少年はそれを見届けると瞳を閉じる。しばらくすると大きく息を吐き、静かになった。
SAN値チェック : SAN値チェックです。
成功でSAN値減少1d3
失敗でSAN値減少1d6です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 31 > 成功
竈門 炭治郎 : 1d3 (1D3) > 1
system : [ 竈門 炭治郎 ] SAN : 61 → 60
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(……こっちの竈門炭治郎は、義勇さんに看取られたんだ……)
悲しいような、でも少しだけ羨ましいような、よくわからない感覚に襲われた。
自分とよく似ている。よく似てはいるけれど、自分ではない。違う人間だ。その人物を、義勇が愛おしそうに扱うのがとても美しく、同時に「いいなぁ」と思ってしまった。
死の瞬間、こちらの炭治郎は何を思ったのだろう。何を最期に言ったのだろう。
自分だったら、なんと言うだろう。
(……もういい。もうやめだ)
こちらの義勇と、義勇の炭治郎の記憶を漁るような真似は。
もう、見なくていい。
映し出された、過去であろう情景。これは本来、ここにいた二人のものだ。どれだけ似ていようが、別人である自分が見ていいものではない。
本当は、今日ここへ来るべきだったのは「義勇の炭治郎」だったのだ。それが何の間違いか、同じ名前の自分が連れてこられてしまった。落胆しただろうに、そんな素振りを見せないこちらの義勇は、やさしすぎる。
(おれにできることって、なんだろう。こっちの義勇さんの、慰めになるような)
今日一日しかない。一日しかないのなら、もう家捜しではなく、一時でも長く義勇と時を共有した方がいい気がした。義勇の炭治郎ではないから喜ばせるのは難しくても、今の自分にできる何かを。不思議な時を過ごした、証のような、何かを。
(……雪)
渡り廊下から見える雪の庭に、ふと思いついた。
今日、ここに炭治郎がいた思い出に、雪だるまでも作ってみたらどうだろう。長く残るものではないけれど、一瞬で消えるものでもない。明日以降、幾日かは保つだろうから、炭治郎がいなくなった後も多少は義勇の慰めになるかもしれない。
思い出して、くれるかもしれない。
思い立ったら吉日である。そうと決めれば、打診するだけだ。急いで縁側へ行くと、義勇は変わらずそこにいた。
「義勇さん! よかったらおれと雪だるま作りませんか! お誕生日記念に! 雪があるので!」
「唐突にどうした」
びっくりされた。それはそうだろう。でも否定はされない。あっさり了承された。
「まあ家の中だけではつまらないか……雪だるまを作るのは久しぶりだ。いこう」
「せっかく一日ここにいるんですから、一緒に何かやるのもいいと思うんですよ。おっきいの作りましょう! 義勇さんはメリケン式と日本式のどっちがお好きですか?」
「……違いがあるのか。作るなら大きい物だろう。やるか」
「じゃあ三段メリケン式ですね! 雪玉三つ作りましょう!」
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冨岡 義勇 : CCB<=80 雪玉1段目 (1D100<=80) > 100 > 致命的失敗
庭に出た義勇と炭治郎。さっそく雪玉を作り始める。炭治郎の指示に従い義勇も雪玉を作り始める。もくもくと作業を進めていたため炭治郎は少し目を離してしまっていた。
まさかこの短い間に義勇が一人で巨大な雪玉を作り上げるとは夢にも思わはなかったのだ。
ふと炭治郎の後ろから小さな声で「まずい」とこぼすのが聞こえた。
炭治郎が振り返ると義勇が自分の作った巨大な雪玉に逆襲される瞬間だった。
ボゴという大きな音を立てて大きな雪玉が崩れ義勇は雪の中に呑まれていった。
1D5 ダメージロール (1D5) > 2
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「ぐ……っ」
「わぁあ!! 大事故!?」
自分の雪玉をほっぽり出して、駆け寄る。巨大な雪玉が崩れた跡地は大惨事だ。白に埋もれた義勇の一部だけしか見えない。
「ちょっと待っててくださいね!」
とにかく雪をかき分け、義勇発掘した。さすがに片腕では雪をかき分けるのは大変なようだ。
「……すまない。格好の悪いところをみせた」
「いえいえ、全然! 怪我は無いですか? 痛いところは?」
「少し腕を痛めたくらいだ 問題はない」
「ちょっと手当しますね」
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竈門 炭治郎 : CCB<=50 応急手当 (1D100<=50) > 21 > 成功
竈門 炭治郎 : 1d3 (1D3) > 2
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幼い頃の弟妹にしていたように、さくさく手当をした。こういうのは結構慣れている。なにしろ過去の自分も含め、子供というものはすぐ怪我をするものだ。
「……手慣れているな。ありがとう。もう痛みはない」
「うちは兄弟が多いですからねぇ。ちっさい怪我とかしょっちゅうでしたから。痛みがないならよかったです。それにしても立派すぎる雪玉でした。あはは!」
「……浮かれていたようだ。やりなおす」
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 (1D100<=65) > 29 > 成功
冨岡 義勇 : CCB<=80 雪玉1段目(再) (1D100<=80) > 9 > スペシャル
炭治郎が器用につくっていく姿をじっと見つめていた義勇はしばらくするとまねるように自身も雪玉を作り始めた。
二人共見事な出来栄えの一段目ができあがった。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 (1D100<=65) > 92 > 失敗
冨岡 義勇 : CCB<=80 雪玉2段目 (1D100<=80) > 78 > 成功
竈門 炭治郎 : CCB<=65 (1D100<=65) > 2 > 決定的成功/スペシャル
冨岡 義勇 : CCB<=80 雪玉3段目 (1D100<=80) > 84 > 失敗
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「えっと、これをこう重ねて……あっ顔と手が必要ですね。いい感じの枝とかがあれば……」
当たりを見渡し、装飾にできそうな枝を探した。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 62 > 成功
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その辺の石で顔を作り、いい感じの枝で手をつけ、海外の映像に出てくるような立派な三段スノーマンが完成できた。
「我ながら、なかなかのできばえです。ちょうど義勇さんの背丈くらいになりましたね。当分溶けなさそうです!」
「意外とできるものだな。……いい思い出になった。やはり炭治郎は器用だな。大半を任せてしまった」
「そんなことないですよ。義勇さんに手伝ってもらえたからこそです! 共同作業ですからね。でも童心に帰れてすごく楽しかったです! ただ、やっぱり雪なだけに、ちょっと冷えましたね。お風呂お借りしてもいいですか?」
「もちろんだ。かけ流しだからすぐに入れる。使うといい」
「はい! ありがとうございます! じゃあ義勇さんも入りましょうね! 冷えちゃったでしょうから。お背中流しますよ!」
(お風呂、温泉旅館みたいだったもんな~)
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義勇は唐突な誘いに驚いた猫のように目を丸くする。しばらく無言で炭治郎をみつめるとひりだしたような唸り声をあげる。
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「……いい!早く入ってこい!!」
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その耳は赤く染まっていた
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「ええ……ダメですか? おれ結構頭洗うのとか上手いですよ? お誕生日の人は本日の主役ですよ?」
「客人に接待をさせる奴がいるか! あまりに無防備が過ぎるぞ」
「無防備……?」
ちょっと意味を測りかねて首をかしげる。無防備、とは。確かに風呂なら裸の付き合いになりはするが。
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その様子の炭治郎をしばらく静かにねめつけていたが、無理やり意識をそらすように顔を背け、その勢いのまま縁側に向かっていく。
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「……これ以上は風邪をひく。さっさと風呂に入ってこい」
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そういうと義勇は座敷にあがっていった。
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「えぇ…………?」
なんとも腑に落ちないが、深追いするのはよくなさそうである。
(一緒にお風呂も楽しいと思うんだけど……仕方ない、一人で入らせてもらおう……)
これも良い思い出になるかも、と思ったのに、しょんぼりである。
冷えているのは確かなので、仕方なく一人でさっさと脱いで風呂に向かった。自宅に温泉があるなんて、なんと豪華な屋敷だろうか。
(シャワーないけど、ほとんど温泉旅館だなぁ)
手桶で湯を掬って足先に掛けると、赤くなった指の先がびりびりした。冷え冷えである。雪だるま制作中は気にならなかったが、さすがに手袋もなく雪に触れていたのだから冷えて当たり前だろう。
手早く頭と身体を洗い湯船に浸かれば、もう完全に温泉宿の名物温泉の風情だった。ほわほわの湯気がまたよい。硫黄の匂いはするものの、それほどきつくはなかった。
(やっぱ温泉っていいな~! うちにもほしいな~!)
ありがたく十分に堪能し、ほっかほかに温まったところで風呂から出ることにした。
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炭治郎が風呂場でるとちょうど義勇が台所でお茶を作って飲んでいるところだった。
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「……上がったか」
「はい! ありがとうございました! 大変にいいお湯でした! お家に温泉があるの、いいですねぇ。さっき雪まみれになっちゃってましたし、義勇さんも温まってきてくださいね」
「……俺は冷えていない」
「そんなバカな!?」
あれだけ雪に埋まって冷えていないはずがない。義勇の手を取って確かめてみた。
「?!」
「えええあれだけ雪にまみれて全然冷えてないんですか?」
ためつすがめつ手をひっくり返したりしてみる。なぜ冷えてないのか不思議すぎる。手は温かく、赤くもなっておらず、いたって普通であった。
「……とりあえずここでは湯冷めする。茶の間で体をかわかせ。飲み物をはこんでやるから」
「あ、はい。じゃあ、茶の間お借りします」
促されるまま、素直に茶の間へ向かった。
(この囲炉裏も風情があっていいな)
お茶をいただきながら、ついでにじっくり囲炉裏を見てみる。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 目星 (1D100<=65) > 35 > 成功
いろりの中には灰が敷かれている。じっとその灰も観察していると四方の一つの灰が不自然に盛り上がっていることに気が付く。
炭治郎が火かき棒で灰を掘り返すと小さな鍵がみつかる。
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「鍵だ」
あの文箱の鍵だろうか。
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そうしてカギを見つめていると火かき棒で炭をつついていた義勇が声をかける
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「それはカギか。見たことがないな。俺の知人の炭治郎のものかもしれないな」
「家主の義勇さんが見たことないものも、この家にあったんですね。……あの文箱の鍵のような気がします」
「そうか。箱を開けた炭治郎なら見てもいいと思う……少しだけ中身の想像はつくしな」
「そうなんですか? う~ん……」
なんとなく、義勇が知らないものを一人で見るのも違和感が残る。
「あの箱、持ってきます」
座敷から鍵付きの文箱を持って茶の間に戻った。
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炭治郎は文箱のカギ穴にゆっくりと鍵を差し込み、ひねる。カチリと音がした。
中身は手紙だ。その様子を義勇も炭治郎の向かいで見守っている。
手に取って宛名を確認してみると宛名にはすべて「竈門炭治郎」とかかれていた。送り手の名前はすべて「冨岡義勇」である。
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思わず手紙と、義勇の顔を交互に見つめてしまう。
「……これは、おれが見てはいけないのでは……?」
「宛名は炭治郎だからな。お前も読んでもいい物だろう。だが、俺の目の前で読むつもりなのかは気になる」
「箱を開ける前までは、箱の中身は義勇さんと一緒に見るつもりでした」
「だろうな」
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竈門 炭治郎 : CCB<=70 アイデア (1D100<=70) > 93 > 失敗
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少し考えて、義勇の目を見る。
「……中身を知るなら、義勇さんがいてくれた方が、いいなって、思います。義勇さんが、嫌でなければ、ですけど」
「……拷問だな」
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そういいつつも義勇は席を立たない様子だ
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(ご、拷問……。(でも移動しないってことは、このまま読んでいいってことかな……にしても拷問かぁ……)
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炭治郎は手紙のひとつひとつに目を通していく
冨岡からの手紙は大きな戦の後からの手紙のようで、生き残ったことへの自責や自身の力不足の嘆きなどが書かれていた。しかし、やり取りが進むにつれ、だんだんと前向きで明るい話題の内容に変化している。
そしてその手紙の端々に送り相手である自分と同じ名前の人物への愛の言葉を散りばめていた。
竈門 炭治郎 : CCB<=70 アイデア (1D100<=70) > 37 > 成功
手紙は何度も読み込まれたようで紙の端がよれてしまっている。
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「すごく……らぶれたーです……」
「だから拷問だといった」
「……なんかごめんなさい……」
「何故謝る 了承したのは俺だ」
「でも、いいですね。すごく。心が温かくなるっていうか。義勇さんが知る炭治郎も、きっとすごく嬉しかったんだと思います。何度も読み返していたみたいですし。なんだろう? 温泉みたいです。さっき借りたお風呂の!」
「……フ 温泉か」
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義勇は小さく笑う
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「炭治郎も喜んで読んでくれていたのならいいとするか」
(笑った!!)
こっちも嬉しくなって、にこにこしてしまった。
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客間から19時を告げる柱時計の音が鳴る。それを聞いた義勇が膝に手をつきながら立ち上がる。
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「遅くなってしまったが夕飯をつくるか」
「そうですね。鮭大根と天ぷら!」
「そうだ 手分けして作るぞ」
気合いを入れて鮭大根に取りかかった。
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 製作(惣菜) (1D100<=65) > 90 > 失敗
冨岡 義勇 : CCB<=40 製作(天ぷら) (1D100<=40) > 74 > 失敗
竈門 炭治郎 : CCB<=65 幸運 (1D100<=65) > 91 > 失敗
冨岡 義勇 : CCB<=70 幸運 (1D100<=70) > 86 > 失敗
台所に笑い声が響く
なにをふたりであせっているのか。普段で出来ていたことすら出来ていない。さんざんな出来映えだ。
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「……なんだこれ、こんな失敗料理、生まれて初めてですよ! あはは!」
「く……これは……ひどいな」
「はい! ひどいです! 楽しいひどさです!」
「俺はともかくお前は総菜屋じゃなかったか?」
「そうなんですよねえ、惣菜屋なんですよねえ、おれ。失敗料理なんて、子供の頃以来ですよ」
「……それは逆に貴重だな。あとで少し食べよう」
「失敗料理に希少価値が!?」
「逆に気になるだろう? こうなったら意地だ。ここにある食材遣いつくしてでもいい料理ができるまで挑むぞ」
「はい! 仕切り直ししましょう!」
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竈門 炭治郎 : CCB<=65 製作(惣菜) (1D100<=65) > 1 > 決定的成功/スペシャル
冨岡 義勇 : CCB<=40 製作(天ぷら) (1D100<=40) > 41 > 失敗
冨岡 義勇 : CCB<=70 幸運 (1D100<=70) > 66 > 成功
二人で奮闘した結果、輝かんばかりの鮭大根と不格好だがそれなりのてんぷらが出来上がった。
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「……完璧ですね」
「……すごくうまそうだな……?」
「はい! 仕切り直しした甲斐がありました! 義勇さんの天ぷらも楽しみです!」
「うん。見た目は悪いが味は悪くないと思う」
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義勇は早く鮭大根を食べたいのかそわそわしており普段とはかけ離れたたたずまいだ。
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「じゃ、盛り付けして食べましょう」
「そうだな わかった」
昼間と同じように、盛り付けした食器を二人分ちゃぶ台に並べた。結構なボリュームである。
「いただくか」
「はい! いただきます」
「いただきます」
手を合わせ、早速天ぷらに手をつけた。形は確かに前衛的だが、食べてみるとさくさくだ。
「この春菊の天ぷら、すごく美味しいです」
「……! ……!!」
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義勇は早速鮭大根に手を付てから、わかりやすく目を輝かせつつもくもくと食べている。
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「お口に合いましたか? 近年まれに見る上出来鮭大根だと思うんです」
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ひとしきりほおばっていた鮭大根をゆっくりのみこむと義勇は唸るように声をこぼした。
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「……最高の味だ。これほど食べ終わりたくないと思うものはない」
「そんなに!? ありがとうございます。嬉しいなあ」
ストレートに褒められて、ちょっとこそばゆい。
「うん これは歴史に残る味だ。こんな傑作に並べるのはおこがましく感じてしまうが俺が作ったものも食べてくれ」
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そういって義勇は炭治郎の皿に手料理をのせていく。
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「あっ、ありがとうございます。これ、蓮根の天ぷらですか? ほくほくで美味しいです」
「そうだ ちゃんと火が通っているならいいのだが」
「大丈夫ですよ。形は不揃いですけど、きちんとできあがってますから。こういうの、手作り感あって好きです」
「そうか…それならいい。ところでだが……聞きたいことがある」
「はい、なんでしょう」
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義勇は少し姿勢を正すように座りなおして伺う
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「お前の知人の冨岡義勇とやらと炭治郎はどういった関係なのだろうか。詳しく聞いてみたかった」
「えっおれのところの義勇さんですか? 関係……友達、ですかね。義勇さんはうちの常連客だったんですけど、今は時々一緒に出かけたりしますから、多分友達です。趣味が釣りなんで、釣ってきた魚を分けてくれたりするんですよ。一緒に渓流釣り行ったりしてます。おれも釣りが楽しくなってきたところです」
「二人でか」
「うう~ん? そういえばたいていは二人かも」
「そうか…楽しそうだ」
「楽しいですよ! 義勇さんも一緒に行けたらいいのになぁ。あっでも義勇さんと義勇さんが混じっちゃいますね。おれのとこの義勇さんも、すごく優しい人なんで。見た目も中身も、なんだかすごく似てます」
「俺と俺がか?そうだろうか。喧嘩になりそうだ」
「えええ……けんか? するんですか?」
まったく想像がつかない。
「だがお前と俺の炭治郎なら仲良くなりそうだ。賑やかになる」
「間違えるくらい似てるんですよね? だったらとても気が合いそうな気がします! 義勇さんと義勇さんも、気が合うんじゃないかなって、おれは思うんですけども……」
「想像つかないな 会話は弾まなそうだ」
「あー……会話は……まあ……でもほら、言葉にしなくても通ずるところがあるっていうか……」
「まあ確かに俺は話すことが得意ではないから、うまくいくのかもしれないが。どちらにしろ 楽しくやっているようで安心した」
(安心……)
日頃の生活が、何か心配になったのだろうか。いや、今日はもう夜だ。いるべきところへ帰る炭治郎を心配しているのかもしれなかった。
「楽しいです。とても。毎日充実してます。家族も元気ですしね」
(おれは楽しく生きてるけど、ここの義勇さんは、もうひとりぼっち、なのかな……)
じくりと、胸に痛みが広がる。「義勇の炭治郎」は既に亡く、「炭治郎」も明日にはいない。そうしたら、一人になってしまう。知人友人はいるのかもしれないが、少なくともこの家には一人になる。
炭治郎が、いないのだから。
「そうか。家族も元気なのか。それは良いことだ。幸せに過ごせているなら、それで」
「はい……おれは幸せ、なんだと思います。でも、義勇さんは……? 何か、幸せになれること、ありますか?」
「……何故聞く? 今こうして炭治郎の話を聞けただけでも幸福なんだ。きっと炭治郎が想像しているよりはるかに、今幸せを感じている。それではだめだろうか」
「全然ダメじゃないです。ダメじゃないんですけど……うーん……」
「案じてくれているのか」
「うまくいえないんですが、すごく……さみしい、ような、さみしいんだけどあったかいような、不思議な気持ちです。おれ、今日一日しかここにいられないんですよね? もっと気軽にまた義勇さんと会えたらいいのになって思って。今日、すごく楽しかったし。自称神様、おれの夢にも出てきてくれたらいいんですけど。あっ、義勇さんと一緒に寝たら、自称神様の夢おれも見られますかね?」
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その言葉に義勇は飲もうとしていた茶をのどに詰まらせる
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「ぐ……何を言い出すんだ。そういうのはするべきではない。だが今日一日すごく楽しかった。ただ不可思議なことはそう長く続くことではない」
(雑魚寝は得意なんだけどなぁ)
本人が嫌がっているのなら諦めるしかない。一日の最後まで一緒にいるなら、一緒に寝るのも悪くないと考えたのだが、できなさそうだ。
「……そうですね。そうかもしれません。不思議なこと、ですもんね。でも義勇さんも、今日が楽しかったのなら、とても嬉しいです」
「ああ 特別な日になった。ありがとう 炭治郎」
「こちらこそ、ありがとうございます。そうだ、お誕生日おめでとうございます。言い忘れてました!」
「嗚呼、幸せな誕生日だった」
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そんな談笑を時折はさみながら夕餉はつづいていき、そして食事はきれいに食べ終えられた。
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「片付けるか。」
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冨岡は食器を片手に立ち上がる。
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「はい!」
一緒に食器を片付ける。
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机にある食器を整理し終えた炭治郎が義勇に続けて立ち上がろうとする。
しかし膝にうまく力が入らない。
急激に視界が薄れていく。
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「……きいてきたか。炭治郎。あえてうれしかった」
その声音に、ぐらぐらする頭の中で、炭治郎は確信した。
終わりがきた。ここで意識を失ったら、多分もう二度とこの義勇には会えない。
今日の終わりが、今なのだ。
霞み始める視界の中で懸命に義勇を見つめ、おぼつかなくなる舌先で、なんとか言葉を紡いだ。
「……またあいたいです」
「そうか。おれもだよ。炭治郎」
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それを最後に炭治郎の意識はうしなわれてしまう。
────遠くで声が聞こえる。
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「おい。おきろ。いつまでねているんだ。」
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炭治郎は目を覚ます。
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「おはようございます?」
「やっとおきたのか」
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そこにいたのは愈史郎に似た青年だった
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「……知りませんでした。愈史郎さんが、自称神様だったなんて……」
「……うるさいな。だいたい俺はお前の知る愈史郎とやらではない」
「どこからどう見ても愈史郎さんなのに! それであの、ここはどこなんでしょう? 義勇さんは?」
「見た目だけで判断するとはな。浅はかな奴め。ここは屋敷の離れだ。……お前の役目は終わった。もう好きに帰っていいぞ。」
「……もうここに義勇さんはいないんですか? あと帰り方の具体的な説明もお願いします!」
「冨岡か? あいつは座敷にいる。帰り方などどうでもいい。帰りたかったらいつでも帰れる。ただそれだけだ」
(全然具体的じゃない……)
相変わらずの愈史郎に、だいぶ諦めモードである。仕方なく起き上がり、義勇がいるという座敷へ向かうことにした。
(義勇さんは、座敷にいる)
けれど、それがどういう状態なのか、うっすらと予感はしていた。意識を失う前と、同じ状態ではないだろう。それは確信に近い。
だから、静かに覚悟を決めた。
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炭治郎は寝室をでて渡り廊下を進む。
廊下を過ぎたところで気がつくことがある。
全ての襖が開けられている。
庭の雪景色を阻むものは何も無くなっていた。
そのためが真夜中にもかかわらず、月明かりを反射した雪の白さが部屋を薄く照らしていた。
その中央で。
冨岡は横たわっていた。
敷かれた布団の上に体を預ける彼の胸は動いていない。顔にかけられた布の意味するところは……
SAN値チェックです。
成功でSAN値減少1d3
失敗でSAN値減少1d6です。
竈門 炭治郎 : CCB<=65 SANチェック (1D100<=65) > 5 > 決定的成功/スペシャル
竈門 炭治郎 : 1d3 (1D3) > 3
system : [ 竈門 炭治郎 ] SAN : 60 → 57
冬のしんとした静けさが肌に刺さるようだった。
愈史郎に似た青年が後ろからやって来て並び立つ。
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「願いは成就した。あいつも本望だろう。さっきも言ったがお前はもう帰っていい。俺は先に道に出ている」
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青年はそういうと廊下を進んで玄関から出ていった。
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無言で義勇を見下ろし、ほど近くに膝をついた。畳が冷たい。しんしんと凍りつくようだ。
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そばに寄り添い近づいた炭治郎は気がつくことがある。
冨岡の亡骸の胸の上に手紙が置かれている。
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[info] 【胸の上に置かれた手紙1】
この文を読んでいるであろう炭治郎へ。
まず最初に謝りたい。
食事に睡眠薬を混ぜたのは俺だ。
この夜、俺の寿命は尽きる。
俺の抱えた命が25の齢に失われることはずっと前からわかっていた。
濁して話さなかった神へ願ったことは
死ぬ前に炭治郎ともう一度一日を過ごしたいという願いだったからだ。
神はいびつな形でだったが、叶えてくれたらしい。
今日がその夜だ。
そして、俺はお前に看取られたくなかったから薬を混ぜた。
勝手な真似をしたことはすまなくおもっている。
炭治郎と過ごした一日は楽しかった。
快活で真っ直ぐでこの不可解状況のなかでも明るく太陽のような様はとてもあたたかくうれしい物だった。
庭で雪だるまを作った時もそんなお前に少しでもいいところを見せたいと見栄を張ってしまった。
格好の悪いところをみせた。恥ずかしい。
でもそんな俺を炭治郎はわらって支えてくれた。
陽だまりに様だった。
お前は炭治郎の部屋の箱のことを文箱と教えてくれた。
あれは生前の炭治郎が宝物と言っていたものだった。
そして俺はそれを開けるとができない。
開け方を知らないからだ。
だから文箱が入っているかなど知らなかった。
その時俺は胸がいっぱいになった。
俺の炭治郎しか開けられない箱をお前は開けられたのかと。
初めのほうからお前のことを
「身なりや生きる時代は違えども俺の知っている炭治郎なのではないか」と考えていた。
そうでなくとも
その心、その魂の成り立ちは、俺の大切炭治郎そのものだった。
実際に確かめようなどないのだが。
[info] 【胸の上に置かれた手紙2】
お前がどの世界、どの時間に生きている炭治郎なのかはわからない。
台所の新しいものも古い型というようなことを言っていた。
未来から来たのだろうか。
だがそんな炭治郎の近くに俺の名と姿を持つ男が存在していることを知れた。
もしかするとどんな世界であったとしても俺は炭治郎のそばに居続けられるのかもしれないと思うとうれしくなった。
どんな形でどんな関係だったとしても
それは幸福に違いないのだから。
ならば、俺も怖くない。
この先にも炭治郎がいるかもしれないと思えたのなら
死は恐れるものでも、寂しいものでもない。
最後を看取らせなかったことをすまなく思う。
眠らせなかったらお前は優しい子だから、きっと
最後まで俺の傍にいてくれただろう。
だがそれでは駄目だ。
それをしてしまえばお前は”俺”との別れを2度もしなければないけなくなる。
別れは1度だけでいい。
俺は俺の炭治郎と、既にその日を迎えた。
それにお前にはたくさんの贈り物を貰った。
鮭大根もな。
今世の最後の日をお前と過ごせたことは、奇跡としか言いようのない贈り物だ。
どこかに生きる炭治郎
素敵な贈り物をありがとう。
また逢おう。
冨岡義勇
追伸
手紙を読んだことだし、俺と俺の炭治郎との関係がどういうものだったかは察していることだろう
お前のところの冨岡義勇がどういう心づもりなのかはわからない
だがらこそ出来れば俺達のことは勘定に入れず
お前の近くで生きる冨岡義勇自身と向き合ってくれると嬉しい
どんな形であれ それが望ましい
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「……あの愈史郎さん、自称神様じゃなくて、悪魔の方だったんじゃないですか……?」
手を伸ばして義勇の左手に触れる。夕方まではあんなに温かかったのに、今は硬く冷たい。それが信じられなくて、何度も撫でて確かめてしまった。
「……ぎゆうさん」
何の温度もない身体に、もうここにはいないのだな、と強烈に感じる。ぱちぱちと瞬きをする。目の中の硝子が歪み、ぼろっと滴が落ちた。
「ぎゆうさん」
当然、応えもない。あるはずがない。
顔の布を剥ごうとして、やっぱりやめた。見てしまったら、いけないような気がした。
(お誕生日だったのに)
喉元がつかえ、小さくひくりと音が出た。
(お誕生日の歌も、歌った方がよかったかな)
下手くそだけれども。
ぐい、と目尻を拭う。手は冷たいのに、顔だけが酷く熱かった。
今、この瞬間にわかったことがある。
たった今、自分は恋と失恋を同時に味わった。もとより成就するはずのない想いは、明確になった瞬間、静かに息絶えた。
「炭治郎」が羨ましかった。「義勇」に愛された、「炭治郎」が。過去を共有している「炭治郎」が。それが己であったらどんなによかったか。そんなことは、天地がひっくり返ってもありえないことなのに。
「俺の炭治郎」と、呼ばれてみたかった。
「……帰ろ……」
ここに義勇がいないのならば、自分がいる意味もないはずだ。
すっかり冷えて固まった膝が、がくがくと震える。ゆっくりと立ち上がり、前だけを見る。後ろには、誰もいないのだ。
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炭治郎は庭に出る。月明りに照らされた庭は夜とは思えない程明るく感じた。池のほとりには二人で作った雪だるまが静かにたたずんでいる。
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借り物の羽織は、ここに残して行くべきだと思った。なんとも懐かしさを感じる市松模様を、義勇の背の高さの雪だるまに着せかける。少し、丈が足りない。つんつるてんで、少し笑ってしまった。
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表の道で青年は佇んでいる。
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「もういいのか?」
「いいです。帰ります。もう、義勇さんがいないし」
「心残りはないんだな」
「あったとしても、帰らないとならないでしょう。一日っていったじゃないですか」
「……皮肉を言う元気はあるようだな 僥倖なことだ。ならばそれを返せ。」
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そう言って炭治郎が紙眼を収めていたあたりを指指す
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「……はい」
素直に出して渡す。使い方を聞かなかったら絶対使ってなかった紙である。
「次、人に渡すときは、説明書つけておいた方がいいですよ」
「……まあいい。ゆくぞ」
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そう言って青年は歩きだす。
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一つだけ息を吐き、何も言わず、後をついて行くことにした。
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雪の降り積もる竹道をふたりは進んでいく。
霧は一層深くなり二人の姿を覆い尽くす。
二人の姿が見えなくなった頃。
雪がふりやむ。
誰かが生き、その人生の幕を閉じた、その屋敷には。静けさだけが横たわっていた。
明るい日差しが頬にあたる。
炭治郎はうっすらと瞳を開く。
────朝だ
炭治郎は自分の部屋のベッドの上にいた。
慌ててスマホの日付を確認する────日付は2月8日だ。
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(……定休日だ)
起き上がって自分の服を確かめてみる。
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いつもの寝間着姿の己がそこにいた
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(どうしようかな……)
部屋は暖かいのに、胸の中は雪が詰まったようにずっしり重い。何かするか、誰かに会うか、するのがいいように思える。
(……義勇さん)
なんとなく、生きてる人を確かめたくなった。
朝である。早朝である。義勇が何時に起きているかはよく知らない。知らないけれども、スマートフォンから「おはようございます」とメッセージを送った。
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すると即座に義勇から返信がある。「おはよう」との一言だ。
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(大分朝早いのに、起きてた!)
返信の早さに、ちょっと嬉しくなる。
「今日、お暇ですか? ご迷惑でなければ、会いに行ってもいいですか? なんだかすごく、義勇さんに会いたい気分なんです」
素直な今の気持ちをさくさく打ち込み、迷うことなく送信した。
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再び義勇の返信がとどく。「わかった 店に行く」
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「ありがとうございます! 今日店休日なんで、裏口の方にお願いします。待ってますね」
了承を得られたことに少し元気が出た。さっさと着替えて店舗に降りる。住居のリビングも静かだったから、家族はまだ寝ているようだ。
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「わかった」という義勇からの返信から数分もたたないうちに炭治郎の家のインターホンがなる。画面に映るのは冨岡義勇だ。
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ぱっと立ち上がりドアを開けた。
「おはようございます、義勇さん」
(生きてるなぁ)
妙にほっとした。四丁目の義勇は、元気そうだ。もちろん右腕もある。
「……ああ おはよう」
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少し乱れた息のまま義勇も返す。
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「走ってきたんですか? そんなに急がなくてもよかったんですけど」
冬の外気で、義勇の吐く息が白い。温かい。一瞬、横たわる身体が脳裏をよぎったが、目の前の人の息づかいですぐに霧散した。
「ふふ、嬉しいです」
自然と笑みが浮かぶ。でも同時に、少し泣きそうにもなった。
「あ、そうだ、お誕生日おめでとうございます。あの、今日、義勇さんのお誕生日のお祝い、しませんか? おれ、一日お祝いできます!」
あっちの義勇と一日一緒にいたのだから、こっちの義勇とも一日一緒にいるのもいいだろう。
「……!」
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義勇はその提案に驚いた猫のように目を丸くする。その姿はあの屋敷にいた”義勇さん”と重なる姿だった。
義勇は小さく身じろぎ少しうつむいた後、思い直したかのように姿勢を正しながら真っ直ぐ炭治郎を見つめ返す。
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「祝ってくれてありがとう。俺もできれば今日を炭治郎と過ごしてみたい……構わないだろうか?」
「もちろんです! 今日は一日義勇さんと一緒にいますよ! 何をしましょうか。やりたいこと、何でも言ってくださいね! 全力でお応えしますので!」
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義勇は「なんでも」と告げられた瞬間すこし目に動揺を走らせるもすぐに真顔に戻し少し考えるように眉間を寄せる。少しの間のあと応える。
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「特に考えていなかった……ただ一日共に過ごせたらいいとしか考えていなかった。それで充分に思う」
「そうなんですか? でも一日ありますから、何か思いついたら言ってくださいね。さしあたっては、朝ご飯にしましょう! お散歩しながら、どこかで食べませんか? あと、その……ちょっと変なお願いがあるんですけど……」
「なんだ」
「えっと、ちょっとの間だけでいいので、手をつないでもらえると、嬉しいです……義勇さんの左手を」
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再び義勇は目を丸くする。
暫らくの静止と沈黙のあと、ぎごちない動きで左手を差し出す。指先と耳の先が赤く染まっている。
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パッと目を輝かせ、炭治郎は差し出された手を握った。冬でも温かい体温が右手に伝わってくる。こっちの義勇も、おんなじだ。嬉しくなって、ぎゅっと指を絡ませた。
「……義勇さん、あったかいですね」
「ああ……あったかいな。……正直昨日、誕生日を伝えた後……今日何か祝ってもらえることを期待していた。ずっと”もう一度”祝ってもらえたらと思っていた。あったかいな……」
(……もう一度)
その言葉に、縁側に座る「義勇」の姿が脳裏に浮かんだ。「また逢おう」と残してくれた、恋した人を。
義勇を見上げる。雪の庭で、じっと見つめたときみたいに。相変わらずいいお顔をしている。
「……一度じゃないです。来年からも、毎年お祝いできるんですから。お祝いしていいですよね?」
「そうか。俺は恵まれているな。そうだ、一つだけ希望がある」
「はい、なんでしょう。一つと言わず何個でもどんとこいです!」
「……鮭大根を」
「はい……! お安いご用です! もう、失敗はしませんからね!」
「うん。失敗したとしてもそれも思い出になる。楽しみだ」
「はい。じゃあ朝ご飯の後で、材料買いに行きましょう。あと、それから」
手をつないだまま、そっと身を寄せる。雪の中の屋敷ではできなかった距離に近づく。
「もしかして、おれは、義勇さんの炭治郎に、なれそうですか……?」
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朝の暖かな日差しが二人に降り注ぐ。義勇の返答は目覚め始めた街の騒音にまぎれていく。
今日は2月8日。義勇の誕生日。
どちらにしても、義勇へのプレゼントは届けられたようだ。
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