望月 鏡翠
2026-04-19 01:15:51
952文字
Public 日課
 

#2052 THE MEME! その19

#毎日最低800文字のSSを書く/ダーリンランデヴー!

「偲ぶ」「本物」「だから私は間違える」

「なるほど。よく分かりました」
 ラダがいつもと変わらぬ温度で呟いたところで、インカムが鳴った。犯人確保。CLOUD MINEを襲った異常事態は遠からず収束するだろう。
 手柄は一つもないが、初任務をつつがなく終えられたのだからこれでよしとしよう。ラダの行動が問題がなかったかどうかについては、この際不問としよう。
 イライジャが告げ口をしなければ、バレない程度の問題だ。
「これが新たな世の倣いであり、この世界のルールなのでしょうね。俺たちはそれに淘汰されてしまった。だから、今このようになっているのだ」
 元凶が捕まった以上。もうすぐmeme_@は消えるのだろう。それを手元に止めようとするかのように、彼女は強く抱きしめた。
「この場所にも昔は美しい景色があったんでしょうね」
「そうかもな。俺は悪いけど、そのあたりの歴史は知らないし、思い入れもない」
 生まれ故郷ではない街だ。そして美しい自然に心が動くような情緒も持ち合わせていない。その点で言うと、きっとラダの方が優れた人間なのだろう。
「俺は、許しません。絶対に許さない」
 剣呑な言葉を、ラダははっきりと口にした。
「美しい景色を見ると、胸が震える。恋人と過ごす時間がかけがえない。それは当たり前のことだと思うのです。彼らが俺から奪うのは罪ではなく、俺が彼らから奪うのは大罪だった。理不尽です。方法が間違っていたとして、その怒りを間違いだったとは思わない。だから、だから方法は変えたとしてその怒りを間違いだったとは思わない。俺は方法を変えたとして、捕まらないように工夫を凝らしたとして、俺はきっとまた間違えると思います」
「それはお前の決意か?」
 その腕の中に既に複製体の姿はない。この大騒ぎを企てたものも自分が作ったおもちゃが故人を偲ぶために作られているとは思わなかったんじゃないか?
 あるべきものはあるべき場所に。塵は塵に帰った。ここは地獄の蓋が開いたような場所だが、それでも存在していいものと存在してはいけないものがある。残ったのは本物だけだ。
 彼女は当たり前の感情として、恋人を姿をしたものを愛した。失われるのを惜しいと思った。
 仕方がない。
 彼女はそれを許さなかったのだ。