かなざわ
2026-04-18 19:19:12
1355文字
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もっと見せてよ

よだつかワンライ第3回お題「動物園」で参加&投稿作品。作成時間50min。
アニメ公式のエイプリルフールネタから、教師パロの二人。
よだ→←つかの両片思いです。この世界線の二人、割とすんなりくっつきそう。

……動物園行くの?」
 純が司にそう聞いたのは、彼の机に動物園のパンフレットらしきものが乗っていたからだ。
 純の目線を辿った司は、唐突な質問がどこから来たかをすぐに理解したらしい。少し笑って、純の視線の先にあるパンフレットを手に取ると差し出してきた。
 別に見たいわけじゃないけど、と思いながら、なんとなく受け取ってしまう。園内の地図や諸々の情報が掲載されているそれは、特に目新しさを感じるようなものでもなかった。
「修学旅行の自由行動先で、ここ行きたいって声が複数出たらしくて。資料として配布されたんですよ」
「そう」
「動物園行ったの、小学校の遠足くらいなんですよね。なかなか遊びに行く先には選ばない施設っていうか……あ、夜鷹先生はプライベートで行ったことあります?」
「そもそも、行ったことがない」
「えっ」

 ◆

 そんなこんなで、純は人生で初めて動物園を訪れていた。
 特に行きたいと主張したわけではなく、厳正なるくじ引きの結果、自由行動のチェック場所が動物園になった、というだけの話である。純の横には、同じく動物園担当になった司が立っている。
 動物園を自由行動先に選んだ班の人数を確認し、入園パスを渡していく。
「司先生、ここ終わったらどこ行くの〜?」
「全員チェックしたら俺たちも入るよ。羽目外しすぎてたら注意しなきゃいけないから、ほどほどにね」
「はーい」
 園内に入っていく生徒に手を振る司を横目に、純は名簿に一緒に挟まれている園内地図を眺めていた。正確には、喫煙所を探していたのだが。
「ねえ」
「はい?」
「中入ったら煙草吸いに行っていい?」
「堂々と職務放棄しようとしないでくださいよ……
「僕が顔見せなくても、誰も気にしないよ」
 純は生徒と距離が近いタイプの教師ではない。生徒どころか、何人かの例外以外のあらゆる人間から距離を置いてはいるのだが、それはそれとして。
「園内は広いし、誰にも会えなくても不自然ではないと思うけど」
「そういう問題じゃないです。俺、鴗鳥先生から頼まれてるんですから。くれぐれも夜鷹先生から目を離さないようにって」
……普通、目を光らせておくのは生徒相手だろう」
「俺としてはあの鴗鳥先生にここまで言わせるって、過去に夜鷹先生が何してきたのかが気になりますけど」
「何もしてないよ」
「どちらにしろ、単独行動はダメですよ」
 言いながら、司は純が持っている名簿を覗き込んでくる。あと何組何人くるかを確認しているのだろう。
 間近にある司の顔を見つめる。地毛だと言っていた髪色と同様に、睫毛も明るい色をしていた。
 頬に触れて、眦を指先でなぞったら。彼は、どんな顔をするのだろう。
……一本吸うくらいなら、付き合いますから」
「うん」
「その後は、園内見て回りましょう。初動物園、満喫しましょうね」
「そこは公私混同するんだ」
「羽目を外しすぎなければいいって、さっき生徒に言ってるの見てましたよね?」
 人差し指を唇の前に立て、司がニヤリと笑う。教師の時には見せない、年齢よりもどこか幼げな、悪ガキめいた表情だった。
 こんな顔もするのか。
 驚きはしたが、悪い気はしない。
 もっと、今まで見たことのない顔を見てみたい、そう思った。