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asahito
2026-04-18 18:05:47
4021文字
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Old Fashioned⑤
前作駒草太夫の現パロのお話はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/7583585
一部R18です
続編である今作の第1章(錦上京キャラ中心)はこちら⇒
https://www.pixiv.net/novel/series/14625442
一部R18です
東方キャラが現代にいて、普通に人間として暮らしてたらを書いたお話です。
例大祭の新刊は家に届きました。通販もぼちぼち準備中。
それと向き合うことは肯定であり。それに目を背けるのは拒否でしかない。いくらでも目を背けるのは簡単だ。
だが目を背け続ければ逃れることはできず。足枷のようにいつかは私の行動を縛る。
今までの私の行動を顧みれば。この結果は分かり切ったことじゃないか。それに向き合うべき時はいくらでもあったのに、ユイマンを救うことで頭がいっぱいになってそれを見ないようにしていた。
帰りの電車の中。仕事用の鞄に入った厚紙の重みが。途方もなく行動を鈍くさせる為の錘に感じる。 電車はただ揺れる。時間通りに、駅と駅の間を走り抜けていく。
週末でない平日の夜の電車は、草臥れた表情の人間だらけだが。それでも私が今抱えている重みよりも辛い重さを感じている人間はどれほどいるのか。
向き合え。向き合いたくない。そのせめぎあいが嫌でずっと拒んでいたツケ。それを払う時が来たのならまだよかったが。
それを払う機会すら逃しているのであれば。もう、何もかもが遅いだけだった。
私が悪いのだといつも感じつつも。自分は悪くないのだと、言い訳がましく喚いた醜さは。どす黒く胸の中を満たして胃が逆流しそうだ。
気分を変える為にスマートフォンで博物館の動画を眺めても何も心は晴れず。聞いている解説も耳に入って来ない。鞄の中の重みは時限爆弾の如く私の焦燥を煽り、それが爆発すればこの女の醜さがどれほどであるかを高笑いしながら暴露しそうな。
そんな、心を抱えているなど。この電車に乗っている誰もが知らないのであろう。
―
あなたの家族からこれを渡すように頼まれただけですから。
あの時豊姫は多くは語らず。静かに差し出したものは、四角い封筒だった。普通の郵便の封筒ではなく、質のいい上品なデザインの封筒。
何度か目にしたことがあるそういった体のものは。ある行事にすぐに結びついた。心当たりがあったから、尚更。
「
……
」
鞄の中をちらりと覗き、その出来事は夢ではなかったのだと再確認する。
郵便で送るものではなかったのか宛名には何も書いてない。それでもそれの中身は見ずとも理解できる。
豊姫の前で封を破るように言われ。癪だがその指示に従った。それが家族からの手紙であったのであれば、見るしかない。見たくないと拒否すれば仇に更に弱い部分を見せるからだ。
豊姫がユイマンを助ける為に力を貸したという事実は、本当に気に喰わない。
封を切った中にあったのは結婚式の招待状。その中に書かれていた名前は、妹の名前とネットのニュースで見た企業の夫となるであろう相手の名前。
挙式の日程は既に終えたものであり。私が知らぬ間にその日程は過ぎ去っていった。
つまり私抜きで挙式は終えられ。私は親族として存在しないものだと扱われたわけだ。逃げ回って拒否する姉などいない方が良いだろう。
私だってあんな雰囲気の場所に行きたいなんて思わない。ユイマンの事だって招待しないだろうから。
企業提携が発表されたのは妹とその夫の関係が円満に続いているか。もしくは、企業を纏める為のタイムラグがあったせいか。
いっそ、清々しい気分だ。縁が切れてせいせいすると言ってしまえばいいのに。妹に結局全てを背負わせてしまったという後ろめたさがつき纏う。
いつかは妹の婚約はあると分かっていた。その日が来ることを恐れていた。こんな姉がいたら、妹はまた私が余計な障壁になると嫌味を言うだろうから。なら、いっそ姉なんて最初からいなかったという体でこの先は振る舞って欲しいと願った。
それが私の望み通りになったのに。なのに、実際にそれが実現したらくよくよと家族に拒否されたと嘆くのか。
時間が経ってから私に教えたのは。挙式してすぐに伝えれば何かしら私が言うと思ったのか。それとも、もう取り返しのつかないところまでになってから教えた方が。
逃げた私への当てつけになると、妹が思ったのか。
会社間の提携がその後にあったのであれば猶更私が騒ぐのは邪魔だろう。邪魔する気などさらさらないが。厄介な身内ほど危険なものはない。
私が何かをするつもりはなくとも。ユイマンを伴侶としたことを父の会社を厭う存在に明るみになれば、何かしらの弱みになると思われたのか。
制度が整い始めたとは言っても。偏見や嫌悪はすぐに消えるわけではない。法として認められている結婚ですら、組み合わせを誤れば会社や家を滅ぼしかねない行為なのだから。
この遅れた招待状は。今後、この家に関わるなの意志だろう。足を踏み入れるなという事だろう。拒否に拒否をぶつけられるならお誂え向きだ。
相手同士が名家の存在なら一般人が足を踏み入れられるような式場ではなかろう。会場に指定されていたホテルも、一等地の場所だった。
その式場で純白のドレスや宝石を身に着けた妹は。誰よりも麗しく美しい佳人であっただろうか。私には一生身に纏うこともない衣なら。妹のような存在に着飾らせた方が良い。賛美と驚嘆の声が上がり豪勢な料理が並び、根回しと野心と魂胆が飛び交う場所。
おめでとう、と心の中で言うだけなら妹は許してくれるだろうか。醜いだけの生き物でも美しい言葉を発することはできる。
電車は走る。乗せる人間の気持ちなど気にせずに走り続ける。無機物は、感情はなく、醜さもない。美醜を気にすることもない。
不意に、メッセージアプリから通知が来る。
『今どこ?夕飯もうすぐできるから、早く帰ってきてね』
愛らしい恐竜のスタンプと共にユイマンからの連絡が来て。そのメッセージに私は救われる。
あと一駅で着くよ。そうメッセージを打ち、鹿のスタンプを添えた。
純白のドレス。お姫様みたいなユイマンに着せてあげたいなとふと思ったけど。そういう格好をさせたいと言うと私だけじゃ嫌だから私も着てと言われるだろうか。
それは困るけど。彼女がそう言うのであれば、心が揺れ動くのは分かり切ったことであった。
「
……
そう。妹さんもご結婚されてたのね」
「知らないうちに親族が増えちゃった」
もう私が親族としてカウントされてないかもだけど。
ユイマンの作った鹿肉と野菜の炒め物を箸で摘まみながら、私は静かに答えた。ユイマンは複雑そうに茶碗を持ったまま私を見つめている。
帰宅して、すぐに。私は招待状のことと豊姫の事をユイマンに伝えた。
姉や兄の結婚式に幼いころから参加し。結婚式というものが幸せな儀式であるというイメージで育った彼女にとって。私の家のごたごたの結婚式はさぞかし醜く、みっともなく見えるだろう。
かけたお金も、衣装も、料理も、場所も、来る人間達も。明らかに彼女の実家の結婚式に比べれば立派なものの筈でも。
結局その良さはお互いの関係に左右されるのだ。
「でも、そっちの方が気楽かな。両親にも妹にも小さい頃から私が醜いせいで迷惑をかけちゃったし」
私という存在がないものになった方が。最大の家族孝行かもしれない。このマンションのことは父には感謝してもし足りないけど。
噛み締める野菜は、少し味付けは濃いがご飯が進むと思えば良いだろう。ユイマン、目分量で味付けは危険だって言った筈よ。
「阿梨夜
……
」
私の自虐的な発言は控えるようにいつも言われているけれど。気持ちの整理がしたくて、言葉を連ねてしまう。分かり切っていたことでも。私はあの家で生まれ、拒まれ、それでも今の立場になれるくらいには育てられては来たのだから。
ユイマンの左手の薬指の指輪は安堵の証だった。家族から切られても。私は彼女と繋がっている。
彼女は茶碗を置き、手を伸ばして私の頬に触れた。その目は、真っすぐに私を見据え強気の目だった。
「誰が何と言おうと阿梨夜はちゃんと浅間の家族だからね?」
「
……
うん、ありがとう」
「年末はうちの実家で年越しも、お正月も迎えましょうよ。両親も兄姉達も姪っ子も甥っ子も楽しみにしてるから」
家族って、何が一番正しいのだろう。彼女と私は家族だけど、それは法で守られてはいない。他所から見れば他人でも、繋がりは何よりも強いのに。
シャツの下にある彼女の歯型の跡だって。それを証明しているはずだ。
「あ、あと妹さんのお祝いに前行けなかったお店に行きたい。その後駒草さんのバーでまた新しいお酒教えて貰って
……
」
私の家の事情を分かったうえで私と一緒にいることを選び。私の家のせいで会社で痛めつけられて、追い詰められ。それでも家族というものが自分の家のようなものばかりでない現実に心を痛め。
私が元気になれる様な言葉を伝えてくれる伴侶。昨日まで、喧嘩をしても。今はそれがなかったかのように振る舞ってくれる。
それを否定してしまえば私は悪くなるだけ。醜くなるだけだ。
「そうね。これから寒くなるから、あったまるようなお酒とかも教えてもらいたいね」
「秋限定のデザートも評価が高いんですって。特にお芋を使ったやつ!」
食事中にスマートフォンであのバーの口コミを見せて来るのは、お行儀が悪くても。今は小言は言うまい。
私は家族がいませんと、そう何ともなく話したあの店主は。孤独なのか、自由なのか。気遣いや接客態度は朗らかに見えつつも、煙の様につかみどころがなく本当は誰も寄せ付けない。
私とは違う器用な拒否の仕方で。自分を他人に変えられまいとするような意志が見える。
人があればある分だけ、家族とのあり方がある。他人とのあり方がある。
「
……
あのさユイマン、今夜は一緒にお風呂入ってもいい?」
「いいわよ」
小声でおねだりをすれば彼女は優しく答えてくれる。
家族にうまく甘える事も出来ず。生まれつき甘えるのが壊滅的に下手な私が、彼女には素直に甘えることができるのも。家族だからなのだろう。
続く
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