はらす
2026-04-16 00:06:42
2212文字
Public 忘バ
 

20260416圭圭 要圭誕生日2026

2026/04/15 圭圭の方の要圭誕生日2026
18歳の誕生日ですので、高校3年生です。
圭圭ずっと仲良くしてほしい。

「よし、18歳になったから、エロサイト見るよね」
枕に立てかけたスマホを覗き込みながら、主人はこちらをうかがうように言った。腹ばいのまま肘をつくのは行儀が悪いし、体に変な癖がつくからやめろ、と注意しても、「なんか楽しいから」と言って主人はその姿勢をやめず、足をパタパタと動かしていた。まあ、確かに楽しそうではある。
「15日になるまで、あと5分あるだろ」
「分かってるけどぉ、だいたいで良くない?」
「良くない。どうしたら『良い』って思えるんだ」
「でも、正直なところ、今までも見てるよね」
「ダメだろ。申告はちゃんとしろ」
時刻はまもなく0時だ。ベッドに体を預ける気にもなれず、そのまま端に座り続ける。
「ええっ、智将のいじわる!誕生日にえっちなサイトを見て癒されたいじゃん!」
 主人は枕に顔を押しつけ、ばたばたと激しく脚を揺らした。楽しそうだ。でも、だめだろ。てか、いい加減寝ろよ。
「誕生日じゃなくても見てるってさっき自分で言ってただろ。いいからもう、早く寝ろ」
「ほらあ、智将もエロ動画を見てる」
「受動喫煙だ」
でも、見てるじゃん、と主人は言い切った。言い返せない。見てることは事実だ。
ふふっと主人は笑い、腕を伸ばして枕の位置を直す。そのついでに、わざとらしくこちらの方へ顔を向けた。なんだよ、なにがしたいんだよ。
誕生日なんてただの日付なのに、こうして境目に立つと落ち着かなくなる。寝てしまっていたら、気にならなかったのに。なんでこんなに引き延ばすんだ。
「ねえ、ももなっちのどこが好き?」
「どこも好きじゃない」
「じゃあ、俺のどこが好き?」
思わず脱力した。こういうところが主人だ。一緒にいて恥ずかしい、時もある。
…………自分に自分の好きなところを聞くなよ」
「いいじゃん誕生日なんだし。ほら、お互いに一つずつ言ってこ」
ほら、恥ずかしい。照れる、なんて言葉じゃすまない。
「馬鹿なのか。自分だぞ?」
「えーっとね、じゃあね、智将の好きなところね」
…………ないだろ」
「あるよ!あるある!めっちゃある!優しいところとか」
「はぁ?」
優しい。優しいとはなんだ?
思わず眉をひそめる。主人は腹ばいのまま、頬杖をついてこちらを見ていた。
厳しい、真面目だ、と言われることはあっても、優しいと言われたことはない。せいぜい細かい、という程度だ。現に主人だって文句を言うことの方が多い。それがどこをどう見れば優しいことになるんだ。
「あっ、ヤマちゃんからメッセージきた!」
主人はぴょこんと音がしそうなくらい軽やかに体を起こし、スマホに顔を近づける。
「え?」
「ハッピーバースデーのメッセージ!モテる男は困っちゃうなあ」
画面を覗き込みながら、主人はにやにやと笑う。通知の音はぴこぴこと間をおいてなり続けた。
「葉流火はなんて書いてあったんだ」
「てか、はるちゃん早く送ってきすぎじゃない?今見たら、十時には送ってきてあるじゃん」
「だから、葉流火のはなんて」
「あ!千早から来た!すっご。全然祝ってないじゃんあいつ」
主人はまた腹ばいに戻り、足をばたつかせながら画面をスクロールする。
「なあ、葉流火のはどこやった……
「葵ちゃん、可愛いスタンプくれたのに、すぐにイカツい筋肉おじさんスタンプ送ってくんのやめて」
その後も可愛い着信音がちらほらと鳴っていたから、続けてメッセージをもらっているんだろう。瀧とか陽ノ本らから。土屋さんや鈴木さんたちはもう卒業したから、メッセージは来ないかもしれない。あったら、すごくありがたいけど。
ふと時計を見ると、あれからもう三十分はたっている。
さすがに限界だ。軽く息を吐き、ベッドに手をついて腰を上げる。
「もう、いいから寝ろ」
「だめだよ、俺は起きてるから、智将は寝て」
「いいから寝ろ」
「やだね」
「いいから寝ろって」
三度注意しても、主人は眠そうな目をしながら、それでも頑として起きていた。スマホに抱きついて離れないと言う。子供か。
「だって、俺が寝ちゃったら、明日も俺じゃん!」
「そういうの迷惑だって言ってんだろ」
「やだ!智将も学校でお祝いされてよ!俺は去年、めっちゃ祝われたからいいんだって!」
「今年も祝われればいいだろう」
「ええ……
「何が問題なんだ」
「智将にもあの楽しい気持ちを味わってほしい……
「は?」
「ね?」
こちらを見上げる主人はなんの衒いもなく笑っている。
ほんの少しだけ、言葉に詰まった。
「もういいから」
まだスマホを抱いている主人を押し、仰向けに転がして、そのまま俺も横に並んだ。
大人しく横になった主人が、俺に手を伸ばすから、応じるように腕を掴んだ。ちゃんと、しぶしぶという顔ができていただろうか。緩みそうになる自分をがんばって抑えていたから、渋い顔になっていたはずだけれども。

しばらく経ってから、主人が静かに言った。
「俺たち、お誕生日おめでとう」




返事はしなかった。やがて、ゆっくりとした規則的な寝息が聞こえるようになった。主人が眠りについたなら、今夜の俺の役目は終わりだ。
暗い天井を見上げて、一度だけ息を吐く。

めっちゃある、優しいところとか。

本当に馬鹿なやつだと思う。でも、目を閉じる気にはなれなかった。
耳元の寝息を聞きながら、天井の一点を、ただ見つづけていた。