ニシナ
2026-04-15 21:45:31
1381文字
Public StardewValley
 

「子供用ベッド」

スタバレ週間ライティング(第99回)2026年4月9日発表お題の中から「子供用ベッド」
#StardewValley週間ライティング

――夕食後、ロビンは作業スペースで小さな木にやすりをかけていた。ファーマの家の改築工事の合間を縫って進めている作業は、夫に言わせれば「過度なサービス」であり「余計なお世話」で「配慮が足らない行為」になるらしく、何度か「今すぐにやめるべきだ」と説得に来たものの、最後には「好きにすればいい」と肩をすくめて研究に戻っていった。それでもロビンは今日も、丁寧に木を加工し続ける。
……いつか、必要になる日が来るかもしれないもの」
祈りにも似たような気持ちでそう呟く。数年前にこの谷にやってきたファーマーはバスを降りる瞬間に「大丈夫か」と手を伸ばしたくなるほどやつれ、疲れ切っていた。急な転居に間に合わせの修繕しかできなかった家にも「これで充分です」と微笑み、1年もしないうちに家の改築工事を頼みに来た。「住めればいい」程度の家具しかない小さな家を丁寧に、大切に手入れをして暮らしているのは足を踏み入れた瞬間にすぐにわかる。ロビンはすっかりたくましくなったファーマーに「今すぐに取り掛かるわ」と伝えるとすべての作業を止めて工事に乗り出したものだった。
そして、また季節が一巡りした頃。住人達から噂を聞いていたロビンはファーマーが沢山の材料と共に改築を頼みに来るのを今か今かと待ち望んでいた。
――ファーマーがついに花束を渡したらしいよ。
――水夫から人魚のペンダントを買っていたみたい。でも、まだ渡してないよね?
小さなコミュニティではすぐに耳に入る喜ばしい噂。ロビンはファーマーがドアベルを鳴らす日を思い、そのたび胸が弾むような気がした。
予想通り、季節が代わる少し前にファーマーはすべての材料を自らの手で揃え、控えめにドアベルを鳴らして入ってきた。
「家の改築をお願いしたいんだ」
リビングは広く、部屋を増やして、住む人が増えても困らないように。ロビンはファーマーの希望を聞き取りながらどんどん設計図に書き足していく。
……ここにもう一部屋作れるけど、どうする?」
ロビンが提案するとファーマーはペンで丸く囲ったあたりをじっと眺め、それから少しはにかんで「それはまたの機会でいいかな」と答えた。
「そう? いつでも声をかけてね」
にっこりと微笑みながら、ロビンはその日がそう遠くないことを確信した。
それからずっと、工事の合間や寝る間も惜しんでロビンは硬くて安全な木を組み立てていく。
「最初に小さくて安全なベッドを一つ。それからもう少し大きめのベッドを二つ」
いつか必要になる日が来るかもしれないその日のことを思って丁寧に組み立てていく。小さな手を挟まないように、元気よく飛び跳ねても壊れないように。
……ファーマと愛する人が小さな寝息に幸せを感じるように。大変な事も沢山あるだろうけれど、可愛い寝顔がふたつ並んでいたらとても素敵じゃないかしら)
子供の性別が違うからと小さなベッドをふたつ並べることを良しとしない人もいる。そうすることが正しいのだと、強く言われたこともあった。
それでも――
泣き顔を隠すように眠る子供の頭をそっと撫でた夜も、生まれたばかりの小さな手を握りながら眠った夜も、いまとなってはどれも切ないほどに愛おしい。
ファーマと、いつか家族になる人が幸せな寝息を聞けるように。
ロビンは願いを込めながら小さなベッドを組み上げた。