かずき
2026-04-15 04:14:04
887文字
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泣かせてくれないドラの話

コイツ、こんな時でも邪魔しに来んのかよ。

夕方から降り出した雨が勢い良く地面に叩きつけられる今夜は俺の気持ちもどんよりとしていた。
原稿を進めようにも頭が働かない。外に出て雨に打たれて来たらすっきりするかもしれないなんて馬鹿なことを考えて後先考えず俺は事務所の外に出ていた。
自分のことも何一つまともにできないことを嘆きながら全身で雨を受ける。もう、いっそこの身体が粉々になって流されてしまえばいいのにとすら思う。どっかのクソ砂のように。
「何してるんだ、傘も差さずに」
声がする方へ顔を向けると、赤い傘を差したクソ砂が立っていた。
丁度テメーのこと考えてたんだよ、なんて言える訳もなく、別に。とだけ返した。
「てめーこそ何しに来たんだ?この雨で外に出るとは自殺行為だろ?」
「いや、目が覚めて雨音がするものだからどんなものだろうかと窓を開けたら濡れゴリラが見えたものでね面白そうだから見学に来たのだよ」
「ンだとこのッ!」
いつものように殴ろうとして止める。コイツは本当に洒落にならないんだ。
さっさと戻れよ、この雨の中死なれたら面倒だから」
「気遣いありがとう。そうだ、私はとてもか弱く繊細な生き物だからねぇ
だからさっさと戻れよ。命懸けでわざわざ来るんじゃねぇ、俺のことなんかほっとけよ。そんな事を考えた。
「か弱い私はすぐそこの段差を踏み外して死んでしまうかもしれない。無事に城内まで守ってくれるガードマンが欲しい所だが私のガーディアンはまだぐっすり眠っていて此処には居ないんだよな仕方ない、ここはゴリラで我慢するか。と言う訳だから、戻るぞ!ロナルド君」
「勝手に決めんな!」
「いいからいいから
ドラ公が差していた傘に俺を招き入れるように腕を引っ張った。なんとなく気付いていたけどこれはコイツなりに何か察しての優しさなんだろうなと思うと途端に自分が惨めで泣きそうになる。
「戻ったらすぐシャワーを浴びるんだぞ。その間にホットケーキでも焼いてやる」
うっすら滲んだ視界でクソ砂の背中を睨みつけながら散々邪魔ばかりするコイツは一人で泣かせてもくれないんだな。と頭の中で悪態をついた。