けーだい
2026-04-15 00:40:33
1470文字
Public
 

祭りの後

リンクさんの行動原理の話
尻切れとんぼだけどとりあえず書きたいことだけ書いて満足しちゃったので

夜の帳が下りても広場はまだ宴の気配に満ちていた。さすがに子供達はもう引き上げたけれど、とっくに酒の回った大人達は今も各々好きな場所で陽気に語り、歌い、踊っている。昼間の式が終わってからずっとこの騒ぎだったけれど、この様子だと朝まで終わらないかもしれない。
こんな風に沢山の人に祝われると思っていなかったから、なんだか不思議な感覚だった。そもそも結婚を決めたのだって数日前のことだから、現実味を感じていないといった方が正しいのかもしれない。それは多分俺だけではなくて、もう一人の主役だったゼルダもそうなのだろう。ふたつ隣のテーブルで随分久しぶりに揃ったシーカー族の姉妹と語り合う彼女を眺めながら、なんとなくそう思った。
「聞いたぞ」
ぼんやりと酒を煽る俺に、向かいに座るルージュが話を振る。何を、と視線で問えば彼女はにまりと笑って身を乗り出してきた。赤い髪の間で秘石の耳飾りが揺れてきらきらと光っている。彼女によく似合うそれは実年齢以上に彼女を大人びて見せたけれど、緑の瞳には子供のような好奇心がある。
「此度の婚姻、其方からの申し出だったらしいな」
ルージュはひどく楽しそうにそう言った。一方俺はまたその話か、と思いながらグラスを置く。
これで聞かれたのは三度目だった。最初は一番に報告したプルアに。次は知らせを受けて飛んできたインパに。皆つくづく俺が彼女に求婚したのが意外だったらしい。まぁね、と返す俺のグラスに勝手に酒をつぎ足しながら、隣に座ったシドは感慨深そうに「本当だったのか」と漏らした。
……そんなに?」
訝しむ俺に二人は揃って首を縦に振る。何がそんなに不思議なのかと俺には全く分からなかったけれど、二人の方は全く同じ見解らしい。だってなぁ、と互いを見合わせたかと思うと、シドは少し真面目そうな顔をして口を開いた。
「きみは今までずっと『ゼルダが幸せならそれでいい』と言って、先に進もうとはしなかっただろう。それがどうして今になって、いきなりプロポーズになるんだ」
その言葉にルージュも頷いている。確かに周りから見たらいきなりだったのかもしれない、とは思う。事実俺は今までさんざん周りに突かれても、囃されても、彼女が望まない以上彼女とどうこうなろうなんて考えていなかったのだから。
でも、それももう随分前の話だ。
「どうして、ねぇ」
どう話そうかな、と考えながら視線を彷徨わせる。けれどこの目は勝手に見慣れた姿を探し出して、そこから動かなくなってしまった。
本人にもそんなことは言わなかったな、と思いながら、もう一度今まで自分が感じてきたことを思い返す。
落ちていく手を取れなかったこと。
秘石を飲む瞬間の記憶を見たこと。
白い龍の額で剣を抜いたこと。
それから、彼女が帰ってきたときのこと。
「ゼルダはさ。大事なものの為なら、自分の幸せだって諦めちゃうでしょ?」
一つ一つの感触を確かめながら、言葉にする。いつもよりよほどするする出てくるそれは、多分あの旅の中でとっくに形になっていたんだろう。改めて問われてようやく吐き出したそれは、思ったよりはよっぽど軽かったと思う。
けれど、二人にはどう聞こえているかわからなかった。心配そうな気配に視線を向ければ、じっと様子を伺うように俺を見つめている。
「だから……なくしてほしくないものは、全部俺が持ってようと思って」
それには家族の方が都合がよかったから、と二人に笑って見せると、ルージュは「ふぅむ」と息を吐いた。そうしてどこか呆れたように、
「其方らしい」
と笑った。