みんなはあまり知らないが、実は高坂さんは甘いものが好き。クレープやパフェはぺろりと食べてしまうし、ドーナツやケーキも箱いっぱいに買ったあかつきには一人で黙々と食べている。
人並みくらいに甘いものが好きな私は、高坂さんが甘いものを食べている姿を見るだけで胸焼けしそうになる。それくらい、高坂さんは甘い食べ物が好きだった。
「店内、女性客ばっかりですね」
パステルカラーに統一されている店内。カトラリーセットひとつにしても華奢なデザインでターゲット層の女性が好みそうなもの。店内を飛び交う声もきゃらきゃらと可愛らしい高い声ばかり。ほとんどが女性客グループで、カップル客もいるもののそれはごく一部。男二人組でテーブルを囲っているのは自分たちだけで居心地が悪く感じる。
「尊奈門、キョロキョロするな。みっともない」
「すみません」
店の雰囲気にそぐわない、鋭い声に条件反射で姿勢を正して前をまっすぐ向いた。
視線の先では今し方きたばかりの紅茶に、砂糖をドボドボ入れている高坂さんが私の方をじっとりと睨んでいた。ふたつ、みっつ、いつつ。角砂糖を落とし終えるとミルクまで入れて紅茶をかき混ぜ始めた。それはもうミルクティーじゃなくて砂糖だろ。
「よくそんなもの、飲めますね」
「紅茶は甘けりゃ甘いほうがいいだろ」
ふざけた事を真顔で言い切った高坂さんはそのままミルクティーを飲み始めた。その光景だけで自分の口の中も甘くなるきかして慌ててブラックコーヒーを一口飲んだ。意外だと驚かれるが私は紅茶もコーヒーもストレート派だ。
高坂さんは甘いものが好き。
昔はコンビニスイーツやドーナツとかテイクアウトして食べれるもので満足していたけど、最近はスイーツ巡りに熱心だ。テレビやSNSで気になる店を見つけては休日や仕事帰りに足を運んでいる。その時は必ず私が連行されている。
一人で行かない理由は多分店内。基本的に女性客が多い店に一人で行くのは嫌なのだろう。かと言って私は高坂さんほど甘いものが好きじゃ無いし、一緒に楽しめる人を連れて行ったほうがいいんじゃないかとも言ったが却下された。(すごい眉間に皺がよって不機嫌になってしまったから、それ以来誘われたら大人しく着いていくようにしている。)
ちなみに今日は都内でも有名なパンケーキの店に連行されている。
「お待たせしました」
鈴を転がしたような可愛い声でメニュー名を唱えながら、店員さんが三段重ねのふわふわパンケーキ(生クリーム添え)を私の前に置いた。毎度毎度、どうしてみんな確認せずに甘いものを私の前に置くんだろう。先ほどのコーヒーだって一回高坂さんの方に置かれたし。訂正するのも面倒くさくて店員さんが席を離れてから皿を高坂さんの方に置き直した。
高坂さんはすでにナイフとフォークを構えていた。先ほどまで死ぬほどつまらなそうにしていた顔は、パンケーキに釘付けで面白くない。
「本当に好きですね。甘いもの」
不機嫌な気持ちが声に出てしまったが、高坂さんは全く気に留めてない。せっせと(だけど美しい所作で)パンケーキを切り取り、丁寧にクリームを乗せている。
「ほら、不機嫌そうな顔をするな。食べてみろ」
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